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患者さんの為になることをやると自分の首が締まっていくジレンマ【薬剤師】

薬剤師免許を取って、薬剤師として働いていました。
現在は失業中ですが、次の転職先もありがたいことに決まっています。
薬剤師として働くことについて、心のうちを書いてみようと思います。


1.気軽に健康の相談ができる場所

国の偉い人たちから”かかりつけ薬局”、”地域の健康の中心となる場所へ”など調剤以外での薬局の役割を持つよう言われています。
私もそれ自体はいいことだと思います。
なにか気になったときに気軽に相談できる場所があること自体は聞く方にもメリットだし、聞かれることによってより一層知識が増えていくためこちらとしてもメリットです。なにより人のためになるってことは心の支えですから。

ただ、”相談ばかりこなしていたらどうなるか”という問題が出ます。

生きていけません。無償労働です。
現時点の制度では気軽に健康相談されても物販にかかわらない限りお金になりません。
社会福祉の奉仕活動なんだから、お金など請求するなと言われるかもしれません。
ですが、私は薬剤師である以前に”ひとりの労働者”なんですよね。


2.他人の体調不良に依存する仕事

薬学部を卒業して、どんな薬剤師として働こうか考えたときに私の中で一番ネックになったのがこの部分です。

現時点の調剤報酬制度では、処方箋をもらわないと利益になりません。

処方箋をもらうということ、つまり”誰かの体調不良”を待っていること。

小さな体調不良から、大きな体調不良まで、程度は様々ですが”健康を支える医療従事者”としての顔の反面で”誰かの体調不良がないと生きていけない”わけです。
とらえ方によっては”体調不良の改善を手伝う仕事”として考えられます。
しかし、今後もし医療が発達した終着点としてみんなが健康になってしまったら。私の存在価値はなくなってしまいます。



3.患者さんのために仕事をすると経営者と対立する

実際に働いて感じたことはこれです。
患者さんの気持ちも経営者の気持ちもわかる立場なので板挟みの状況です。
すごくつらい。

上述もしましたが、患者さんからの不安や悩みを受け止めて少しでも助けになるように努力しているつもりです。実際に電話を受けたり来局対応をしてきました。しかし薬局全体でみると、その対応が20分かかったとしたらその時間で2~3枚は処方箋を捌けたわけです。
これが積もりに積もったらどうでしょう。

ケースバイケースなのは重々承知していますが混んでいる店舗だとなおさら回転率が落ちます。その時点で、”対応した患者から得られる信頼関係”と”その時間で捌けたはずの利益”を天秤にかけることになります。

また、私は”人間はミスをする生き物”だと思っています。
これは薬剤師も同じで、誰もが多かれ少なかれミスをしてきたと思います。
しかし命にかかわる仕事上、ミスは許されません。
そのために各店舗でミスが起きないような仕組みを導入しているかと思います。
実際に多いミスの一つとして、”一包化の薬剤ミス”があるかと思います。
私が勤務していた店舗では、調剤者と監査者で人物を分けてダブルチェックをしていました。しかし、タイムリミットがあるときや作業が中断したとき、薬が不足して手が止まった時、錠数が多く外観も類似しているときなど、いくらダブルチェックをしていてもミスを誘発しやすい環境があります。
そこで一包化の刻印を見分ける機械の導入を経営者に相談してみました。

経営者からの回答は「考えておく」

導入する気ゼロです。

機械の目を通すことによってミスを限りなく減らせますし患者さんにも薬局にとってもメリットなのは明白です。
それなのに導入しない理由がわかりません。
当時の私は導入資金がないからだと思っていました。
しかしその数か月後に新店オープンが決まった時、”ああ、この人は利益しかかんがえていないんだな”と完全に冷めたのを覚えています。

薬局にとってはミスを減らすことも大事ですがそれより利益を増やすことも大事です。人件費を削減して、処方箋の枚数を増やして、回転数を上げて。

”自分はいったい何のために薬剤師になったんだろう”とジレンマを感じた瞬間でした。

奨学金を返すためにも、私はこれからも薬剤師として働いていくかと思います。
自分が本当にやりたい仕事はなんだったんだろうと考えながら。
そして”健康”と”利益”の板挟みになりながら。

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