谷川俊太郎『彼女を代弁すると』では「・・・私 人間やめたい 石ころになって誰かにぶん投げてもらいたい でなきゃ泥水になって海に溶けたい」と彼女が言っている。そのあと「無表情に梅割りをすすっている彼女の Tシャツの下の二つのふくらみは コトバをもっていないからココロを裏切って 堂々といのちを主張している」と詩は続く。
 私は湧水の真っ赤な沢蟹がハサミを挙げて歩くのを見て沢蟹になってなんにも考えず思わないようになりたいと思った。サワガニは怒るかもしれない。石ころや泥水までは及ばずまだ生き物であろうとした。私たちの身体を細分化していけば量子学で研究されているクオークまで至る。クオークの間には距離があってそこには何もないと言う。この何もない空間の方が圧倒的に大きいと言うから、仏教で言う「空」はこれのこと?なのに何故人になるとこんなになるのか?
 しかし、私の場合彼女のTシャツの下の二つふく膨らみにココロを奪われるほどその悩みはたやすいのだった。

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