体操の隊形に開け!ヤー!!!

我々夫婦は関西の出身である。夫は主に阪神間で育ち、私は大阪市内で生まれ育った。
子どもたちは南国に移るまでの間、夫の出身である阪神間で育ち、南国から帰国してからは関東に住んでいる。なので長男・次男は阪神間の小学校で数年間日本の小学校生活を体験しているのだ。

昨年、こちらの小学校に移り、初めて関東の運動会を経験した。
6年生だった長男はこんなタイミングで前庭神経炎という病気を発症し、急遽入院することになったので残念ながら小学校生活最後の運動会に参加することはできなかった。

次男と三男が参加した運動会の開会式が終わり、準備運動をするという先生の「体操の隊形に!開けー!!!」という掛け声で、よく練習された小学生たちは一斉に体操のできる隊形に拡がった。

すると隣にいた夫が「あれ?今、"ヤー!!!" 言うた?」と聞いてきた。

彼は噂に聞きし「体操の隊形に開け!ヤー!!!」のことを言っているのだ。

彼の育った阪神間では当たり前に、先生のかける「体操の隊形に開け!」の号令に続いて児童が「ヤー!!!」と掛け声をかけるらしい。
私の記憶には残っていないので、恐らく大阪市内では採用されていないシステムなのだと思う。

どうやら人間は幼少のころにすり込まれた習慣というものには反射的に反応してしまうらしい。
これ以前にも「ヤー!!!」について夫と話をしたことはあったのだが、こんなにも敏感に反応するとは思ってもいなかった。

もちろん、関東のシュッとした子どもたちは「ヤー!!!」などとは言わない。「体操の隊形に開け!」と言われた子どもたちは知らぬ間にスーっと体操の隊形に開いていた。

夫は納得がいかない様子で帰宅した息子たちに「お前ら、ヤー!!!は言わんのか?」と聞いていた。
阪神間の小学生経験のある次男は「最初言うてもーた。誰も言わんかったから恥ずかしかった」と言い、後日めまいで起き上がれない入院中の長男にも聞いてみたが、彼も「こっちでは言わん。言いそうになったけど我慢した」と言っていた。三人の「ヤー!!!」に共通する認識は「言わんかったら気持ち悪い・拡がるタイミングがわからへん」であった。

繰り返すが、大阪出身の私には「ヤー!!!」の経験がない。
一体、どこで「ヤー!!!」は止まってしまったのだろう。武庫川が堰き止めた?いや、淀川か?

こういう時に昭和生まれの関西人の頭に浮かぶのは「探偵ナイトスクープに依頼をかける」という方法なのだが、かつての「アホ・バカ分布図」のように調査してくれるのだろうか。

運動会のシーズンが到来し、私は懲りずにまた今年も「ヤー!!!分布図」の妄想を始めたのだった。

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