慈悲への抗戦
時間が解決すると知っているなら何故それに逆らおうとするのか
この傷が本当は治っていってほしくないのか
特定の「誰かが」とか「何かが」とかではなく、世界が俺に与えた傷だから
これは俺の傷で、俺と世界との闘争においての負傷であるという矜持
「この話にハッピーエンドはありません」ハッピーエンドはない
忘れないというのが唯一の抗い
不親切で器量の良くない世界に対して俺ができるすべて
優しげな顔で忘却の魔法をかけようとする時間への徹底抗戦
克明に正確に包み隠さず記しておくことだ
時の魔女に対抗するにはそれでも不十分かもしれないが
記すことで紙に刻むんじゃない
自分の肉体に刻み込むんだ血が滲むくらい強く
あり得ないハッピーエンドを妄想しよう
その妄想と現実の乖離を傷として刻み込もう
世界を憎むことをやめてはいけない
時間に抗うことをやめてはいけない
続けなければならない肝要なのはそこだ
痛みが軽くなるとしたら別の形でそれを留めないといけない
アクリルに閉じ込められた薔薇のように美しい瞬間として
日々、刻み続けるんだ。俺にはまだ言葉がある。
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