0830
八月の青い空を、お前はもうすぐ涼しい風を運んでくるのかと、疑り深い目で流し見ながら、透明なグラスで反射した麦茶を喉に流し込んで、扇風機の風を直に浴びつつ、時間をぼうっと過ごしている。
東京とは違ってこの町は、夜風の涼しさで眠ることができる。冷房なんかなくても、自然に部屋中を駆け抜けていく風だけで十分だった。虫がないている。もうすぐで秋が来るよと告げるような声がする。そんな夜は素敵だ。
久々にあった祖父母の腕は、数ヶ月前に見た時よりも幾分か細くなっていて、なんだか寂しくて、切なかった。私の腕は、数日前の野外フェスのおかげで少し焦げた、健康的な色になった気がする。
夢の中で見たあの顔が忘れられない。君の声が忘れられない。君の手が忘れられない。もう一度やり直せたらって毎日思うけれど、もう一度やり直したら、ダメだった理由を再確認するだけだったよって、誰かが言っていたので、何も望まないことにした。
りんご飴も食べていないし、焼きそばも食べていないし、綿菓子も、ラムネも、かき氷も食べていないけど、十分に夏らしい。そんな季節。
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