連載3

今日は嫌な夢を見た。パソコンがボコボコに壊れてしまう夢。私にとってこれはただの道具ではなくて、自分の言葉を可視化して、心を落ち着けてくれたり自分が何者なのかを認識させてくれる、そういう安定をくれるものである。

仕事用に購入したパソコンに指をのせ、今日も文章を打ち込んでゆく。今日はもっぱら自分の脳内整理のための作業で、タスク管理や脳みそにひらひらしたアイデア、ふと思い出したメールの送信、そういった類のことをした。私はこれといって世界に興味がないのかもしれないと思ったりもするが、実際は気になることばかりで、それを行動に移したり時間をかけて調べ上げ形にすることに怠惰になっているだけなのだ。指紋がベタベタついた画面なんて気にしないところが、その特性を少し映し出している。流行りの隣国の少女の歌を掛け流しにしながら、キーをぱちぱちと鳴らし、小指で小さくエンターキーを打ち、あらかたのことを済ませたところでこれまでのタブを一気に閉じた。画面が薄い緑だけになる。右端に並べたファイルボックスも無視して、まっさらなタブを再び表示した。検索エンジンに文字列を打ち込む。三番目にヒットしたサイトにカーソルを合わせ、一呼吸もおかず、全くラグのない指先でそこを2回クリックした。白い画面に、黒のゴシック体で文字が連なるそのサイトは、私が密かに心を寄せるエッセイストのブログである。なぜ検索の三番目にこのサイトが表示されるかというと、その上には彼のSNSが並んでいるから、というだけである。

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