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教材「銀色のシャープペンシル」を使った新しいタイプの道徳授業!

道徳教材「銀色のシャープペンシル」の新しいタイプの授業を紹介します。主人公の心の弱さを浮き彫りにして、生き方を考えていきます。


 この教材は、自分勝手な理屈を考える、人のせいにする、正当化するなど、誰にでもある「心の弱さ」が詰まった話です。主人公は、今までの自分を内省し、自分を改めよう決心とします。内容項目は「よりよく生きる喜び」です。

 

 本稿で紹介するのは、「内容の抽出」「内容の考察」「全体の俯瞰」の3つの活動がある展開方法です。


 具体的には、教材文から主人公が自分を正当化する様子を見つけ、それを批判的に考察し、全体を俯瞰して主人公の「決心」を考える展開です。

「俯瞰の力で学びを深める」新しいタイプの授業を ぜひ 体験してみてください。


 まず、主人公が行ったずるい行動を確認し、その時に考えていたことを取り出します。
 
 三つの場面ごとに、「この場面で、主人公はどんな考えをしたり、どんな行動をしたりしましたか?」と問いかけて、ずるい行動やずるい考えを取り出します。 

 シャープペンシルをポケットに入れた場面では、「まだ新しい」「自分はなくしたところ」「ちょうどいい」と考えます。

 理科室で盗んだことを指摘された場面では、「前に自分で買った」と嘘をつき、気付いた相手をうらみ、「心が狭い」と自分勝手に考えます。

 シャープペンシルをロッカーにつっこんだ場面では、「ちゃんと返した」「文句はないだろう」と考えます。

 こうした内容を教材文の前半から、全て抜き出します。主人公の行動と考えを抜き出して確認することによって、主人公の行動や考え方には問題があることが浮かび上がってきます。
 

 次に、主人公の行動や考えを批判的に考察します。

 三つの場面の内容を確認した上で、「主人公の考えや行動をどう思いますか?」と問いかけて、意見を発表させます。 

 例えば、シャープペンシルをポケットに入れた場面の「ちょうどいいや」という考えに対しては「都合よく考えすぎだ」「誰に物かきくべきだ」「完全に盗みだ」「持ち主のことを考えない」など、たくさんの意見が出ることでしょう。このような活動を、3つの場面それぞれの行動と考えに対して行います。

 この活動によって、主人公の行動や考えにある問題点が鮮明になってきます。主人公は、人のせいにし、自分勝手に解釈し、自分を正当化して生きているのです。学級生徒の全員が、主人公は「自分を変える必要がある」と考えるようになります。

 その後、教材文の後半を読みます。この教材の後半部分は、主人公の内省の様子が詳しく描かれています。
 シャープペンシルの持ち主から「自分が勘違いをしていた」と謝罪の電話があったこと、主人公はこれまでの自分を内省したこと、電話相手の家に向かって歩き出したことを確認します。

 そして、主人公が電話相手の家に向かった理由を想像して話し合います。

 「主人公は、なぜ、卓也の家に向かったのだと思いますか?」と問いかけます。

 生徒からは、はじめは、「謝るため」「本当のことを話すため」など、相手の家で行うことが「理由」として述べられることでしょう。確かに、真実を話し、謝罪するために向かいます。しかし、そこには主人公の決心があるはずです。

 そこで、「黙っていれば誰にも知られず、謝らずに済むのに、なぜ家にまで出向いて話をしようとしたのか?」問いかけて、理由を深掘りします。

 ここでも、はじめは「相手に心を込めて謝罪したいから」など、謝り方に関する意見が出されます。

 しかし、話し合いが進むと、「今までの自分にいやになった」「これをきっかけに自分を変えようと思った」など、心の中の深い部分にある決心を理由とする意見が出てきます。
 教師は、そう考えた理由を問うなどして、さらに深く考えさせます。主人公は、電話相手の「誠実さ」と自分の「ずるさ」を比べ、合唱コンクールの時の自分の様子を内省し、決断したのです。

 展開後段では、自分の「心の弱さ」や「ずるさ」を思い浮かべ、それを克服する方法をそれぞれに考える活動を行います。

 このような展開によって、「よりよく生きる喜び」の価値について深く考えることができます。


この授業では、次のような流れで学習が進みました。


1.教材に描かれた主人公の様子と考えを確認して抽出する。

 はじめに、主人公の行動を確認し、その時の主人公の考えを教材文から見つけました。

2.抽出した「行動」や「考え」考察する。

 次に、主人公の自分勝手な「行動」や「考え」を批判しました。

3.全体を俯瞰して、主人公が自分を改めようと「決心」したことを考えました。

 「主人公が電話相手の家に向かったこと」を主人公の決心を想像するための「きっかけ」として利用し、行動の理由を深く考えることで、主人公が自分を改めようと「決心」したことを考えました。

 この授業には、「内容の抽出」「内容の考察」「全体の俯瞰」の3つの活動があります。こうした展開方法を、「考察探究型の道徳授業」と呼んでいます。
 この授業は、考察探究型の授業類型の一つである「批判して考える展開」と呼ぶ展開パターンを利用した展開です。考察探究型の授業には、教材の特徴に合わせた17の授業類型があります。

 

いかかでしょうか? 
みなさんは、「銀色のシャープペンシル」でどんな授業を行いますか



この授業は、次の授業案集に掲載しています。

「銀色のシャープペンシル」の授業案(B5版2頁)を購入したい方は、有料でPDFファイルをダウンロードできます。    
                 *設定可能な最低価格にしています。
(主要指示、発問、板書案、教材作成の意図などを掲載しています)

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