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#06-紡ぎ出すということ。神無月。

十月になった。漆黒のピリオドが克明にそして丁寧に打たれたあの日があった九月が、長かったようで、あっという間に過ぎ去ったような九月が終わり、月があらたまった。神無月。その最初の夜、いままで夜になると、眠りにつこうとすると、こころに頭の中に降りてきていた過去の嫌な残像やイメージが、もやもやが、なんかこれまでほど降りてこなくて、その日の夜に申し込んだ絵画教室楽しみだなぁ、どんなものを描こうかなぁ、とかちょっとワクワクしたり、翌日申込む予定の陶芸教室、なに作ろうかな、やっぱり一輪挿しと箸置きかなぁ、とか考えたり。ほんの少しだけ先の未来をわくわく、ほんとにささやかだけどワクワクしたものが湧いてきて、それまで数日間、なかなか寝付けない日が続いていたけど、そしてその日もすんなりとはいかなかったけれども、気が付いたら、眠れていたようだ。朝、なんとなく目が覚めて、「あぁ、眠れたんだ」って思って、同時に「あぁ、苦しい今年の九月はもう終わったってことなんだな、やっぱり」と、改めて月が新しくなったことに感謝した。こういう何気ない区切り、人間が定めた区切りだけれども、大事なんだな、って。もう、つらい過去は振り返らない。振り返らなくても、糧にすべきものは自分の血となり肉となって無意識のうちにもう取り込まれた。そういう時期は終わったんだ。もう、楽しい思い出と、前だけ向いて歩いていこう。気持ちよく、大腕を振って、胸を張って、好きな曲でも口ずさんで、さっそうと歩いていこう。

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