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銀河フェニックス物語 <ハイスクール編>最終話 花は咲き、花は散る(2)

銀河フェニックス物語 総目次
<ハイスクール編>マガジン
・「花は咲き、花は散る」(1)

* *

 ロッキーが結婚の話をレイターから聞いたのは式の三ヶ月前だった。

「俺、フローラと結婚することにした」
 俺は特段驚きもしなかった。
 二人はほんと仲が良かったし、すでに一緒に暮らしてるし、結婚するって言われても何の疑問もなかった。だけど、
「フローラの今度の誕生日に結婚式を挙げる」
 と聞いた時にはびっくりした。
「冗談だろ。お前、まだ十七じゃん」

ロッキー

「あん? 冗談じゃねぇよ。俺が十八になったら正式な届けを出すことにしたんだ。ジャックもそれで準備を進めてる」
 将軍が準備してるってことは本気なんだ。

「でも、やっぱ早すぎないか? ハイスクール卒業してからでいいんじゃないか? 先のこと決まってないし、結婚って一生の一大事だろ。何だか簡単に考えてないか。大丈夫か?」

 レイターは幸せそうな笑顔で答えた。
「俺、早くフローラと家族になりてぇんだ」
 俺にはうるさい両親と優秀な兄貴がいて、家族がいないレイターを自由でうらやましく思うこともある。
 それでもやっぱり家族が誰もいないよりは、いた方がいいか。

 それ以上俺は何も言わなかった。
 でも、どこか唐突すぎる違和感みたいなものは感じてた。


 いつも遊びに来ているお屋敷が、結婚式のきょうは随分とあでやかに見えた。フローラとレイターが花を育てている中庭の庭園が会場だ。

 フローラは光輝いていて、本物のお姫さまのようだった。レイターもフローラが見立てたという一張羅を着て一応主役という顔をしている。

フローラ結婚写真

 披露宴にはレイターとアーサーの船仲間という軍人さんが何人かと、俺たちレイターのダチが招待されていた。ずっと自宅で療養していたフローラの交友関係は限られたものだったようだ。フローラの友だちってのはいなくて、ま、俺たちがフローラの友人みたいなもんだった。

 だから遠慮なくはやし立てた。
「おいレイター、フローラとキスしろよ」
「あん?」
「俺たちの前で誓いのキスをしろっ」
「そうだそうだ! キッス、キッス」
 俺たちの攻勢にレイターは仕方ない、という顔をしてフローラを軽々と抱き上げた。

フローラお姫様抱っこ結婚式

「そら、シャッターチャンスだぞ」
「みんなカメラ用意しろ」
「そーれっ!」
 かけ声に合わせてレイターはフローラの頬に軽くキスをした。

「ブッブー、もっとちゃんとやれぇ!」
 俺たちはブーイングをとなえた。
「ば~か。おまえらに誓いのキスなんて見せてやらねぇよー」
 レイターが笑いながら舌を出した。

 あいつ、今更、何を照れてやがる。
 ナンパで声かけた女にその場でキスできる奴だってこと、みんな知ってるぞ。

 その時だった。
 フローラがそっと両手でレイターの頬を包み、レイターの唇に自分の唇を重ねた。

結婚式髪まとめ

 レイターが驚いたように目を見開いた。

 一瞬の出来事だった。
 フローラは真っ赤な顔をしてうつむいて言った。
「きょうは特別だから・・・」
「ヤッター!」
 俺たちは大はしゃぎだ。

「レイター、お前フローラの尻に敷かれるんじゃねぇの」
「うるせぇ!」
 俺のカメラにはレイターがびっくりした間抜け面で、美しいフローラと誓いのキスをしている様子が写っていた。

 それにしても俺も驚いた。
 だって、普段のフローラは内気で人前じゃほとんどしゃべらない。こんな大胆なフローラを見たのは初めてだ。

 いつもとキャラが違うっていうか、フローラの必死の覚悟みたいなものが伝わってきた。    (3)へ続く

第一話からの連載をまとめたマガジン 
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48ノ月(ヨハノツキ)
ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」