銀河フェニックス物語 <ハイスクール編> 第一話(最終回) 転校生は将軍家?!
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どうしよう。
マフィアに連れていかれたのか? 殺されちゃうんじゃないのか?
誰に相談すればいいんだ。警察か?
オレがあわてていると、不良どもが、こわごわ聞いてきた。
「あいつ、一体何者なんだ?」
「何者?」
「先輩を一撃で、のしたんだ」
「え?」
レイターの奴、あのマフィアをやっつけちまったのか。
すごいけどそれって、余計にやばい話じゃないのか。
こいつらによると、レイターは先輩ってマフィアを一発で倒すと、気を失ってるそいつを白豹会の事務所まで運ばせて、そのまま事務所に入っていったという。
おいおい、それじゃあ殴り込みだよ。
怖いが、ここまで来たら乗りかかった船だ。
「なあ、白豹会の事務所まで案内してくれ」
いざとなったら警察に通報しよう。
オレは通信機を握りしめた。
*
マフィアの事務所は一本路地を奥に入ったところにあった。
恐る恐る近づく。と、
「じゃあな」
手を振りながらレイターが出てきた。
「レ、レイター。大丈夫か?」
オレは駆け寄った。
「あん? ロッキーどうしたんだよ。ちゃんとレディーを送っていったのか?」
女共なんてどうでもいい。
「お、お前無事だったか」
「ああ、別に。けがした兄さん届けて、ちょっと挨拶してきただけだ」
いつものレイターだった。怪我したようすはない。
「挨拶?」
「ゲーセンの中で闇両替や賭事やってんだから、白豹会に仁義切らなくちゃ、と思ってたところさ。ちょうど会長のアドナス親父がいたから、話付けてきた」
「会長ってマフィアのか?」
「ああ。上納金払えってうるせぇから、ゲーセンの脱税を通報するぞ、って言ったら、お互い仲良くやろうって話になってさ」
マフィアと交渉してきた、ってことか。交渉というより脅しだ。
オレは驚いて言った。
「お前って、本物のマフィアみたいだな」
「えっ」
オレの言葉にあいつがギクッと動揺したのがわかった。
「どうかしたのか?」
「な、何でもねぇ」
珍しく青い顔をしている。自分がやったことの大きさにようやく気づいたんだろうか。
オレは謝った。
「レイター、ごめん」
「あん?」
「お前残して逃げたりして」
「逃げた? レディーを送ってくれたんだろ」
「いや、オレは逃げたんだ」
レイターは怪訝そうな顔でオレを見た。
「じゃあ、何でここにいんの?」
「そりゃあ、心配で戻ってきたんだ」
「逃げてねぇじゃん」
「いや、そうじゃなくて」
「わっかんねぇなあ」
レイターは首を傾げて不思議そうな顔をしている。
オレはどうしてわかんないのかがわかんない。説明するのが面倒くさくなってきた。
こいつ敏感なのか鈍感なのか、度胸がいいのか単なるバカなのか、まったく訳がわかんない。
だけど、何でだろう、こいつと一緒にいると楽しい。
退屈しない、ってこともあるが、それだけじゃない。
多分、こういうのを気が合う、って言うんだろうな。
何となく、長いつきあいになりそうな予感がした。 (おしまい) <ハイスクール編> 第二話「花咲く理論武装」へ続く
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