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銀河フェニックス物語 <ハイスクール編> 第一話(8) 転校生は将軍家?!
・銀河フェニックス物語【出会い編】スタート版
・ハイスクール編:第一話 (1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)
・ハイスクール編 マガジン
「サッカーか。いいぜ、暇つぶしにもってこいだよな」
「暇つぶしだとぉ、言ってくれるじゃないか」
と文句を付けてみたが、格好悪いことに、その日、部員はレイター入れて十人しか集まらなかった。ゆるゆるなチームなのだ。
「五対五で試合しようぜ」
レイターが提案した。
オレたちはすぐにその案に乗った。
うちのクラブは「楽しくやろうぜ」がモットーだ。オレとレイターは別のチームになった。
そして、驚いた。
レイターの奴、むちゃくちゃ上手い。
ドリブルして走るあいつに、オレが追いつけない。足の速さだけが取り柄のこのオレが・・・。
「ほれ、ゴールだ」
きれいにキーパーの裏をかく。こいつ絶対にサッカー経験者だ。どうしてこれまで内緒にしてたんだ。
「お前、どこでサッカーやってたんだ」
「んぱ」
はぐらかされた。
「おい、ロッキー」
運動場の外からオレを呼ぶ声がした。
身長二メートルのハマナだ。地元のサッカークラブのゴールキーパー。ガキの頃は、オレと同じサッカーチームにいた。
プロを目指しているあいつは『鉄壁』って呼ばれている。
「どうした?」
「彼と対戦させてくれないか」
と、ハマナはレイターを指さした。ハマナがオレに頼みごとをしたことなんてこれまでにない。
ちょっと気分がいい。
「いいぜ」
とオレは了承したが、レイターはぶすっと不機嫌そうな顔をした。
「嫌なのか? 頼むよ。オレの顔を立てると思って」
「俺は背の高い奴が嫌いなんだ。金払う、っつうなら気持ちよくやってやるが」
「もう、ゲーセンで金貸さないぞ」
「やります」
「じゃあ、始めよう」
オレとハマナは同じチームだ。で、レイターが攻めてくるのを防ぐ。
レイターの奴、ニヤリと不敵な笑みを見せた。
ちょっとむかつく。今度こそ止めてやる。
レイターがドリブルをスタートさせた。今度は追いついた。
違う、こいつわざとゆっくりドリブルしてる。
ボールを奪い取ろうとするが、どういうことだろう、まるで触ることができない。足裁きがうますぎる。手品みたいだ。
「ほれほれ」
笑いながら三人がかりのオレたちの防御をかわしやがる。
キーパーのハマナが構える。
レイターがシュートを打った。
コースはよくない。ハマナの真正面だ。
ハマナが腰を落としてキャッチ。したと思ったら、えっ、?
ボールが転がった。
ハマナの手をはじいて、ボールはするするとゴールの中に落ちた。
「イェーイ!」
レイターは宙返りをして喜んだ。
オレたちはあっけにとられている。
『鉄壁』のハマナが、あんな真正面のボールをミスするなんて。弘法も筆の誤りって奴だ。
オレはハマナに声をかけた。
「お前でもミスすることあるんだな」
「ミ、ミスじゃない」
ハマナの声が震えている。
ま、自分から勝負を申し出て負ける、ってのは格好悪いが、こういうついて無い時ってあるもんだ。
ハマナはレイターに駆け寄った。
「た、頼む。もう一度、今のシュートを打ってくれ。君のシュート、ボールが回転してなかった。僕の手元で急にぶれたんだ」
「無回転シュートか?」
オレは驚いた。何でそんなの、レイターの奴が打てるんだ? (9)へ続く
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