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【芸術とは何か?と聞かれたら「金」だと答えます】

芸大で何回か講師を担当した時に大学生に「芸術とは何ですか?」という質問をすると、「自己表現」とか「創造的な活動」「感性」、、、そんな感じです。ちなみに「爆発」という人はいませんでした。

つぎに、「みんなが知っている芸術家は誰ですか?」と質問をします。

すると、「ダビンチ、ピカソ、ゴッホ、セザンヌ、草間彌生、、」そうなります。「作品持ってる人いますか?」と聞くと当然誰も持っていません。なぜでしょう?高いからです。

みんなが知っている芸術家の作品は一生買えないほど高額で、多くの人が認める芸術作品に共通するのが高額であるということです。つまり、芸術の基準は「金」です。

なので、芸術は爆発かもしれないけど、一般的な価値観では芸術は「金」です。

これを裏付ける芸術家が村上隆さんです。隆さんの作品はとても象徴的に芸術は金であることを表現しています。

ルイ・ヴィトンとコラボした村上隆《お花の親子》

ルイ・ヴィトンのトランクの上に金色のお花の親子が立っています。西洋のトップブランドを踏み台にする金のキャラクターはまさに芸術は金である象徴の様に私は感じました。

個人的な基準ですが、私たちが芸術と呼ぶ概念の基礎はルネサンス以降に生まれたものです。ルネサンス以前は個人の創作の自由度は限られており、多くの作品がキリスト教の教義や儀式を支援するために制作されていました。美術は神のためにあるもので、当然、一般大衆が購買するためのものでありませんでした。ルネサンス以前の芸術は宗教的な目的と依頼主の制約があり、これは現代の芸術とはかけ離れた意味と目的なので、今の芸術と一緒にするのはどうかと思います。

チマブーエ『サンタ・トリニタの聖母』

ルネサンス期に入ると、王侯や貴族、富裕層が芸術家の重要なパトロンとなりました。例えば、メディチ家はフィレンツェで多くの芸術家を支援し、レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロなどの巨匠がその恩恵を受けました。これにより、芸術は宗教的なテーマだけでなく、世俗的なテーマや王侯の権力の象徴としても機能するようになりました。ルネサンス期以降、芸術は徐々に宗教的な制約から離れ、個人の創作の自由度が高まりました。

同時に、富裕層は自らの地位と富を示すために高価な芸術作品を購入し、収集しました。この動きから、芸術作品が経済的な価値を持つものとして認識される基盤を形成しました。

また、銀行家であったメディチ家が提供した金融サービスや貿易ネットワークの拡大によって、芸術作品の取引が活発化する環境を整えました。

この様な背景から現代のオークションで売買いされる高額な芸術作品の原理が生まれたのではないかと推測されます。つまり、芸術の背景は資本主義が後押ししたもので「金」がなければダビンチはただの妄想家だったかもしれません。

ということで、村上隆さんに話を戻すと、成り金ぽくてどこがいいのか全くわからなかった隆さんの作品は、まさに「芸術は金」だ!を象徴するものだからこそ、世界から「金」を巻き上げられる数少ない日本の芸術家なのだと感心しております。作品が好き嫌いで言えば全然好きではないですが、まさに現代アート作品であるということです。


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