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自然を録る行為は、自然を否定せずに受け入れるところから始まります
音を録るということは、すなわち「耳を澄ます」ということ。
山の中で音を録っていると、「こんなところまで車の音は届くのだな」とか「案外頻繁に飛行機が行き来しているな」などと気がつきます。見た目には山奥なのに、音の境界はものすごくあいまいです。
さて、録音の大敵とされるのが【風】です。風を除ける技術もあるのですが、私はできるだけ風の穏やかな場所を見つけるようにしています。地形をよく観察して、凪の状態になっているところにマイクロフォンを置くのです。自然に抗わないで録れると、その場と一体になれた心持ちで幸せを感じます。自分の “内なる自然” が見えてくる気がするのです。
風は大敵というけれど、「木々のざわめき」は風がもたらしてくれる音風景です。自然を録る行為は、自然を否定せずに受け入れるところから始まります。
私は「フィールド・レコーディング」については、「芸術作品」と思っていないかも知れません。自然との対話の結果、みたいな感覚でしょうか。