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"本"が出来るまで

作家である浅生鴨さんにお誘いいただき、一冊の本に参加した。
タイトルは「雨は五分後にやんで」

作家の方からしたら本が出来上がる"過程"は特別ではないかもしれない。
ただ、私は全く別の業界で働くふつうのOLで、そうした中でも文章を書くような場所でも役割でもない。文学系の部活動や学部に所属していたこともない。
正直なところ、子供の時以降本を読んだことも数えるくらいしかない。書くことも読むことも、交換日記、mixi、facebook程度だった。
私には、何もかもがびっくりの経験。
私の人生の特別な出来事のひとつとして、過程とその時々の心情を、記念に残しておこうと思う。

始まりはnoteだった。
大体書き始めて1ヶ月半くらいのことだっただろうか。
チョコレートの愛を叫んだら、note編集部さんのお気に入りというものに選んでいただいた。
その記事は古賀史健さんと浅生鴨さんという、著名な作家さんの間でドデカく主張していた。

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私はただ自分の心の中を吐き出す、雑記のようなつもりでnoteをやっていた。
「誰かに読んでもらいたい」「ピックアップされたい」「有名になりたい」そんな気持ちは微塵もなかった。
だけど、こうして編集部のどなたかが、何かしらの感情を抱いてくれたんだということは、嬉しかった。

「読みました。面白かったです」
鴨さんが突然そう言ってくれた。
岸田奈美さんが浅生鴨さんに突撃取材していたのを思い出した。
あの超面白い奈美さんが、先生として一番に会いに行く人なんだから、面白い人に違いない。そう思って、いつかお会いしたいので鴨さんらしき人探し歩きますーと軽い気持ちで言った。
そしたらあっさりと探さなくても会いますよと返事が来た。
「noteぜんぶ読みました。なんだかかわいくて素直な文章を書く方だなと思って気になりました。」
DMでの最初の言葉がこれだった。
今読み返すと、なんだか涙が出るくらい嬉しい。
だけど、当時の想いは
「ぜぜぜぜぜぜぜぜぜんぶ?!なぜ?!!ぎゃーーいやーーー!」って感じだった。
"誰かに読んでもらう"という目線で書いていなかったから、「私何書いた?!」と青ざめながら自分の書いた文章を読み返した。
恥ずかしさで生まれて初めてモグラになりたいと思った。

2月某日。
私は鴨さんと待ち合わせをした。

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10分ほど前に付近に着いた私は、スタバの前でキョロキョロした。まだコロナが流行る前で行き交う人も多く、スタバに出入りする人も多かった。鴨さんらしき人は見当たらない。
どなたかのツイートで、「サングラスにパーカーの男がいたら鴨さんだ」と見かけたのを思い出した。
サングラス…パーカー…サングラス…パーカー…
私が立っている真後ろにパーカーらしさのある男性がいた。

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鴨さんはダジャレが好きとも書いてあった。
渾身のダジャレをぶつけた。

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既読にならん。

意を決して中に入り顔を覗くと、サングラスをかけていた。
パーカー!サングラス!
一通り挨拶を終え、言った。
「DMしたんですよー渾身のギャグぶつけたんですよー!笑」

「ああほんとだー」
カラオケの採点だったら何の加点もない抑揚0の声だ。
生まれて初めてギャグスキルを身につけてこなかった人生を悔いた。

近くのカフェで、私たちはお話をした。
「ももさんがよかったら、小説を書いてみない?今同人誌を作っていて、それに参加しないかなと思って」
序盤でそんな話が出てきた。
びっくりした。
それと同時に、これまでこんな拙い私の文章を読んで本を出さないかと声をかけてくださった方のことを思い出した。
どこまで本気だったか分からないし、冷やかしだったかもしれないけど、私は断っていた。責任を負えないと思ったから。
私がぜんぶ買い取って、親族に記念に配るくらいの部数もしくは財力があればいいけど、他人様に買ってもらえるようなものを書いてないし、編集者や出版社の方を巻き添えにしてご迷惑をかけたくなかった。

だけど。同人誌って、同人誌だよね?
よく知らないけど、高校の文化祭で文芸部の人がホッチキス止めした文集みたいなの売ってた気がする。ちょっとエロい萌え萌え系のイメージだったけどふつうの文章もあるのか?(偏った知識)
よく分からなかったけど、これなら責任感じなくても楽しい気持ちで参加させてもらえそう!何事も経験!
そう思って、はい、と返事をした。

この時、鴨さんはご自身の著書をたくさん持ってきてくれて、渡してくれた。
私は鴨さんのことを、色眼鏡を掛けて見たくなかったから、ほぼ一切下調べをしないで会いに行った。
仕事のこと、家族のこと、これまでの人生のいろんなこと、鴨さんの事故のこと、私の病気のこと、命や人生に対する価値観。
話を一通り聞いたけど、またその質問かってことも多かったと思う。
後から見たら、大抵著書やインタビューで書いてあって、やっぱり読んでから会うべきだったなと反省した。
だけど、生の肉声で、言葉を交わして、鴨さんのことを聞けたのは、やっぱりよかった。
本って、その人そのものなんだなと実感した。

長居しまくった私たちは、気付いたら閉店の時間だった。ベローチェで蛍の光が流れるなんて知らなかったよ。

昨日初めて現物を手にした。
出来上がったのは 本 だった。
あれはあたいの知ってる同人誌じゃねえ。
だけど、すんんんんごく嬉しかった。
親もびっくりだよ、きっと。
noteやTwitterにはナイーブなことも書いてるから知られたくないと思っていたけど、こんな素敵な本なら知ってほしい、見てほしいと思っちゃったよ。

この後私は、生まれて初めて小説を書くことに。
(正確にいうと、小学校低学年の時に一度だけ、勇者の女の子が洞窟に住む魔女を退治しに行く話を書いたから二度目?)

また明日。

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野口 桃花
人生第二章を歩むための、なにか"きっかけ"を与えていただけたら嬉しいです!あなたの仕事や好きなことを教えてください。使い道は報告させていただきます。(超絶ぽんこつなので遅くなっても許してください)