"本"が出来るまで 6
「みなさんさえよければ、全著者のサインをそれぞれハンコにして初回本に押すってのもありかなーとぼんやり考えています。」
錚々たるメンツなのだ。皆さん自分の"サイン"を既に獲得していて当然である。
しかし、私はただのOL。サインなどあるはずもない。
サイン…サイン…
どうしよう…
書いてみるよね。
かたいよね…
書くの(作るの)楽そう…
犬バージョンどうかな…?
って、何やってるんや私。
数日後。
「サインハンコをつくるのも押すのもたいへんだし、ということで無し!にします。」
ほっとした。
しかし、このメールには続きがあった。
「それぞれでメモ用紙なりなんなりに好きなことを書いて(サインだけでも、絵を入れてもなんでもありで)Jリーグカードみたいに、誰のカードが入っているかは届いてからのお楽しみ、みたいにしたらどう?というめっちゃ楽しいご提案をいただきましたので、即採用しました!20枚ほど、本と一緒に送れそうなサイズの紙
(色紙だと厚すぎるかも)に、何か書いていただけないでしょうか?」
意識を失いそうになった。
Jリーグカードの世代じゃないけど、なんとなく想像はつく。
皆さまのサインやなにかが届く…そんなの嬉しすぎるやん。
でも、私のは喜ばれん方の部類やん!
これはむしろ入ってない方がいいのでは…とスルーを検討し、しばらく沈黙することにした。
皆さんから「私は〇〇にします!」と着々と準備をしている報告メールが届く。
次第に、喜ばれる喜ばれないうんぬんではなく、これは私もどうにかせねば…と思うようになった。
めちゃくちゃ悩んだ結果、写真に手紙を添えることにした。
旅好きな私がこれまでに見つけた素敵な景色。今回の主人公ならぬ主犬公のぷーちゃんも数枚。ぜんぶで20枚20種。
そして裏には、それぞれの写真に合ったお手紙を書いた。
シールやステッカーのようなグッズなんて当然ないし、サインで喜ばれるような器でもなく、プロの写真家に比べたらなんでもない写真。
出来ることは想うことくらいだけど…。
誰宛か分からない手紙を書くのはもちろん初めてだった。
でもきっと、ご縁のある方が読んでくれるのだと思うと、まるで元からの友達に書いているような気持ちになった。
久しぶりに沢山文字を書いたから、手も疲れて途中でナナメに泳ぎ始めたり、へろへろな文字になってしまった。ごめんなさい。
だけど楽しかったし、なんだか嬉しかった。
一枚は机に置いていたのを、トイレに行った隙にぷーちゃんに取られてボロボロにされていたけど…。
(怒られているところ)
受け取ってくれる人ががっかりしないかすごく不安だったけど、喜んでくれた投稿を見たら胸が締め付けられた。ありがとうございます…。
「悪口というか、あまりよくないコメントをされた時、どう思いますか?」
と鴨さんに聞いたことを思い出した。
「あまり気にしないかな。一生懸命やったことのある人は、それがどんなに大変なことか知っているから。」
今私は、モノクロだった頃には想像もつかない世界で生きていて、きっとあの頃よりも、強さと優しさを知っている。
おまけといえば、全部入りの投稿を見てびっくりした。
飲み込んだ言葉は、河野さんがはっきり書いていた。
「おまけにスプーンつけた著者、誰だよ!ズルいぞ!」
笑った。
私もスプーン欲しいです。ください。
次でラストにするー!