"本"が出来るまで 2
鴨さんと二回目に会ったのは、株式会社ピースオブケイク(名前可愛すぎん?すき。)主催による、著書刊行記念イベントだった。
外苑前で下車。久しぶりに来たおしゃれな街並みに、少し背筋が伸びる。
エレベーターに乗ったときから、目的地が同じ気配のする人たちがちらほら。
案の定みんなで同じ方面に向かった先には、超絶イマドキなオフィスが広がっていた。
このさ、時々引き出し(?)、時々透け透けってのがいいよね。アンバランスなのがさ、尚良しよね。
BALMUDAのレンジ、今一番欲しいよ…レンジが壊れてもう一年近く経つよ…。
鴨さんの本発見!
あ、ごめんなさい、オフィス見学ツアーみたいになってたわ…。
受付をして、空いてる席にとりあえず座った。
会話はほとんどない。
みんなが鴨さんの本とノート、ペンを持っている。
数日前に、鴨さんからこのイベントをやるという話を聞いて、行ってみたーい!と飛び込んだものの、こういう所に来たことがなかったもので、なんだか不思議な空間だった。
こうしたイベントは、どんな人が来るんだろう?
スーツの人、私服の人。男性、女性。バラバラ。年齢は30代〜50代くらいが多いか。
向かいの女性が携帯を取り出していじり出す。
カバーには大きく「ひろのぶ党」。
え?なに?政党?え?
即ググってしまった。
「だから僕は、ググらない」という刊行イベントに着席して5分、私もうググってた。ググってたよ。
ひー。恐るべし、習慣。
ちなみにひろのぶ党は、バスタオルに柔軟剤をかけず、クーラーは22度とし、クリーニング屋でもらったハンガーは処分をする奇才による集いとひとまず解釈した。違うなら教えてほしい。
発想するための実践的なフレームワークを、ワークショップも織り交ぜながら学んでいった。
詳細は鴨さんの本を読んで欲しいけど(アフィリエイトじゃないのでお気軽にどうぞ)
文才あるなしだけじゃなく、学ぶことで上達することはあるんだなあと知った。
終わった後、沢山の人が「自分はこういう立場なんだけど、どうしたらもっとうまく書けるか」といったようなことを質問していた。
そして終了後には、サインを求める人で行列が出来ていた。
正直不思議だった。鴨さんはキラキラアイドルボーイではないのに。
ここで初めて、「文章を愛する人」「文章に本気で向き合っている人」のことを考えるようになった。
こんな風に、文章を、本を愛する人にとって、作家さんってすごい存在なんだなって。
同人誌ってワードからオタクおじさんを連想してしまうなんて、ここにいる人たちに知られたら抹消されるかも。
私は書くことについて真剣に考えたこと、あったかなあ。ぼんやりと考えながら、静かに部屋を出た。
まだ肌寒い帰り道。東京らしいビル群の灯りが美しい。
文を愛する人たち、きちんと勉強をしている人たちを目の当たりにして、ど素人の私になにが書けるんだろう。
そしてふと通っていた大学が近いことに気がついて、少し遠回りをした。
だんだんと見慣れた景色が近づいて、ちょっと感傷的になった。
ふと、見慣れないものに気づいた。
足を止めて、隙間からよく覗いてみたら、香取慎吾さんの作品だった。
一度は心がポキッと折れたかもしれない人が、こうして再起している。
特別ファンだったわけでもないけど、なんだかグッときて見入ってしまった。
才能も何もかも違うけど、私も今のこの環境で、今の私で、気取らず気負わず、とりあえず踏み出せばいいんじゃない?そう楽になれた。
足取りが軽くなって、人の少ない青山通りを鼻歌を歌いながら歩いた。
その帰りの電車の中で私は、小説を書き始めた。