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"本"が出来るまで 4

時間を巻き戻せたら…この術を欲したのは人生で七度目だった。えっと、大体ね。
というのも、鴨さんに書いたものを送り、「受け取りましたよー」ときてから、音沙汰なかったからだ。
鴨さんから同人誌のお誘いを受けた時、「面白くなかったらどうするんですかー」と冗談で言った。
「もちろん読んで判断しますよ」
鴨さんのその答えは冗談か本気か分からなくて、ちょっと…なんというか、ぞくぞくした
でも、いざ何も言われないとなると、私の貯金全て使ってゴーストライターに頼んだらよかったかも、なんて馬鹿なことを考えるくらいにはそわそわしていた。
私の記憶ではそのまま3、4日待ったと思っていたが、今見返したら送った次の日に会ってお話ししてもらってた。
ビビりすぎて記憶が差し替えられている。
危うく虚偽の報告をするところだった。いや、実はTwitterで昨日してしまった。鴨さんごめんなさい。
最初は軽い気持ちで送ったのに、反応がないと、次第に気になって気になって気になって…
あれやな、鴨さんは突然ふわっと引いて気を持たせるタイプのモテ男子やな。私には分かるで。

感想を聞けぬまま、鴨さんを喫茶店で待つ私は、いつもより幼気だったはず。
待ち合わせ場所はルノアール。知的な人と会う時に選定する店。(イメージです)
ヤンデル先生のイベントにご一緒させていただく予定だったが中止になったため、15時から18時ほどの約束だった。

期待外れだったかな…。鴨さんが技術としての面白みを話してくれた、川端康成の作品すらまともに知らない私だ。
トンネルを抜けたら雪国があって、名前も決まってない猫が出てくるんだっけ?
勝手に夏目漱石とコラボさせてしまうほど残念なレベルだ。しょうがないよ。
なんて考えてたら鴨さんがやってきた。

「読みました。よかったです!小説初めて書いたんだよね?あれをスマホで打ったの?すごいなぁ…」
そう言ってくれて、大きな安堵感に包まれた。
いつの間にか私は、認められたいと思っていたのだった。
やさしーいやさしーい鴨先生は、大筋を一切否定することなく、アドバイスしてくれた。
思い返せば、それは鴨さんがワークショップで言っていたことだった。
鴨さんのググらない本を読み返しては、色や匂い、音、風景など描写を付け加えた。
やはり学びが足りないだけあって、思うがままに書いた私の文章には、そうした表現が少なかった。

修正をした文章をメールで送ると、こう返信が届いた。
「いただいたお原稿、すごくよいと思います。
描写が加わったことで、より世界が想像できます」
その後に、こう文章が続き、添付があった。
「表現や書き方で、少し気になったところに
エンピツを入れました。(校閲校正がギモン点や気になったところを指摘することをエンピツを入れる、と言います)
ただ、あくまでもこれは僕がそう思ったというだけでこうしましょうということではありません。
最終的な決定権は著者にあるので、エンピツを
受け入れるもよし、違う表現を考えるもよし、
今のままでいくもよし、です。」

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えーーーー!
こここここれ校閲ガールのやつやーん!石原さとみやーーん!
もう大大興奮。
私の書いた文章を読んで、他人様がわざわざ「トル」とか書き加えてくれてるんだよ!!なにこれ!ドアマチュアなのにプロ気分…
昇天しそうだった
文章を直してもらうなんて子供の時以来で、すごく嬉しかった。しかもそれをプロにしてもらう贅沢。
それと同時に、その指摘がごもっとも過ぎて、私ってこんな読みづらい文章書いてるんだと悲しくなった。
直すに決まってる!
助詞を変えてみたり、なにか省いてみたり加えてみたり、入れ替えてみたり。
私は大筋を書くことよりも、この小さな修正の方が悩み苦しんだ。
声に出しても読んでみたし、部屋で読んだり外で読んだりと場所も変えてみたし、テンションの高い時に読んだり低い時に読んだりもしてみた。
矛盾や嘘のないように、生き物や植物のことを調べた。博識じゃないと長編や設定の複雑なものは出来ないなと新たなことに気がついたりもした。
百回は読んだ。
心から納得したものが出来たかというと、もっと良く出来た気がする。
だけど、こんな今、鴨さんの言ってくれた言葉を思い出す。
「アーティストも、最初のアルバムがなんだかんだ一番よかったりするからね」

ずっと蓄積してきた私のすべてが、意図せずとも詰まった作品。
あの時の私が作れたものは、あれですべてだ。
まだまだ不勉強で、こうすればいいってことは沢山あるんだろうけど、その未完成さも当時の私らしいということで!(スーパーポジティブ)

何度も細かな変更に付き合ってくれた鴨さんに感謝。
日本語の難しさと美しさを、初めて実感した時間でした。(あ、ダジャレ!鴨さん見て見て!これはまたスルーされるレベルやな。笑)

この頃、著者が確定し、一覧が送られてきた。
こうして話は、プロフィールやデザイン、付録についてへと移っていく。




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野口 桃花
人生第二章を歩むための、なにか"きっかけ"を与えていただけたら嬉しいです!あなたの仕事や好きなことを教えてください。使い道は報告させていただきます。(超絶ぽんこつなので遅くなっても許してください)