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【37日目①】地獄の国境越えに挑む8人のシクリスタ ※国境越えチリ側
【アウストラル街道単発自転車旅日記㊲】
※表題については私が参考にさせて頂いた先人チャリダーのブログ(わたりどりたまにとぶ)を勝手に真似させて頂きました。なんも読んだ国境越えの低橋さんの記事と同じく偶然8人のシクリスタ集まり、「こ、これはと思った次第です…」ではどうぞ。
2024年11月14日 走行日→20日(オイギンス→アルゼンチン国境越え※チリ側)
天気→午前晴れ 午後雨 気温最低2℃ 最高11℃
■アウストラル街道真のゴールである過酷で美しい国境越え
チリイミグレ→アルゼンチンイミグレ 計20km (チリ側15km アルゼンチン側5km)
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アルゼンチン側の5kmは完全に山の道でGoogleマップでは表示されない
遂にこの日がやってきました。アウストラル街道の集大成です。
これを持ってアウストラル街道のゴールとなると思うと前日は久しぶりにソワソワして眠れませんでした。試合前って感じです。
過酷な国境越えってなんぞや
最初に少しだけこの国境越えの説明しておきます。
この国境が過酷と言われる理由は、「チリ側15キロ」「アルゼンチン側5キロ」計20キロの山道を越える必要があるためです。
特にアルゼンチン側の5キロは「川あり」「沼あり」「岩あり」「獣道あり」の完全なトレッキングコースとなっています。
(あ、「沢山のう◯ちあり」と書くのを忘れていました。)
とにかく、この道は車やバイクでは走行が不可なため、トレッカーかチャリダーのみが通ることが出来る辺鄙かつ自然が残された美しい国境なのです。
僕もここへの挑戦権を得るべくをここまで走ってきたと言っては過言ではありません。
長い前置きとなりいささか申し訳無いですが、要するに「多くの酔狂な自転車乗り達の恐れと好奇心が渦巻く国境」ということ。
かくいう僕もこの国境越えで焦燥に不安に怒りに安堵にと様々な感情にくすぐられてしまいました。
ちょっといろいろあったので国境越えに関しては「チリ側」と「アルゼンチン側」に分けて2記事で書いていこうと思いますので、暇な方はぜひとも読んでケロ。
始まりの朝。静かな宿
朝は5時40分ごろに起床して、ゆっくりコーヒーを飲んでスタートです。
この宿には今日国境越えをするチャリダー4人とトレッカーが4人が泊まっていて全員が朝7時半出発のフェリーに乗る予定…のはずですが
僕がコモンスペースに行きコーヒーを飲んでいる6時頃は全く誰も起きていませんでした。
トレッカーはともかく、チャリダー勢は7キロ先の港まで未舗装路を通って行く必要があるため大体6時半には出たいところのはずなのですが、さすが欧米ガチチャリダー達。
僕の試合前の緊張感はよそに、ゆっくりと準備をしているようです。
(めちゃくちゃ静かな朝だ。こんな静かな宿も特別でいい気持だなぁ)
なんて、呑気なことを思いのんびりしていたら続々と別部屋からヘルメットを被ってチャリダー達が出てくるではありませんか。
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50歳を越えてこんな大荷物持って山を登ると思うと本当に元気だと尊敬する
結局一番早く起きて準備していたはずの僕が一番最後に出発することになってしまいました。(ま、ほぼ一緒にスタート)
前日から荷物は括っていたためすぐにスタート出来たので良かったですが…
ちなみに6時50分の出発です。
昨晩、「未舗装で7キロあるから」と念の為に6時過ぎには出ようと思っていた自分が馬鹿みたいでした。
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ま、そんなことは置いておいて、久しぶりに「なにか大事なことがある日の朝の空気」みたいな匂いを嗅ぎながら漕ぐ自転車は、この旅の中でも特別感があって心地良かったです。
終わり。そして始まり。
冒頭でも少し触れましたが、チリのイミグレーションに行くためにはまず7時半出発のフェリーに乗る必要があります。
僕ら4人は宿を6時50分ごろ出発して40分くらいで辿り着きました。
道は未舗装で多少のアップダウンもありますが、これまでのアウストラル街道と比べると全部フラットのようなものなので余裕のよっ◯ゃんという感じ。
むしろ、清々しい朝を走って試合会場に向かってる感じでワクワさえしました
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そんな感じで、時折立ち止まりながら景色の写真を撮っていたのですが、勢いよく再出発時しようとしたらお尻がサドルの前に出てしまし、股間をトップチューブ(ハンドルとサドルを繋ぐフレーム)に強打してしまいました。
「ぐふっ…」と倒れ込みます。
男性諸君なら分かってくれるでしょう。強く上下で挟まれるように急な圧を掛けられた僕の左◯◯から強烈な不快感が下腹部から徐々に上がってきました。
(う…これはやばい…)と2分くらいうずくまってしまいました。ただ、時間もあるので完全回復を待たずに必死に漕ぎ始めました。
それでも、登り坂は全部漕げたのでこんな僕もアウストラル街道で「ちったー強くなったなーおい!!」というのを少し感じました。
余談はこの辺にして、あっけなくゴールです。
先に到着していた3人と握手を交わします。
そう、ここが【国境越えの始まり】であり【アウストラル街道終わり】でもある記念すべき場所なのです。
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一応湖によって7号線が途切れるこの港が1247kmのアウストラル街道最終地点
ここに集結したチャリダーは「ベルギー人若カップル2人」「スペイン人おっちゃん1人」「ブラジル人老夫婦2人」「何人か分からない中年夫婦2人」「そしてバックパックを背負った僕」の8人です。
ここに国境越えに挑む8人のシクリスタが集結しました。
いざいかん。向こう岸へ。
トレッカー達はツアー会社のバスでやってきて、全員揃ったところで船に乗り込みます。
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チャリンコは先に荷物を全て外します。そして荷物を乗せたあと最後にチャリンコを乗せます。
船は大体2時間くらいでコーヒーにWi-Fiと中々いい船でした。(狭いけどね)
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ベルギー人カップルの隣に座ってて話してたんですが、コロンビアから10ヶ月くらい掛けて走ってきたとのこと。
オイギンスでベルギー人には既に8人くらい会っていて、ベルギーではパタゴニアがめちゃ人気みたいです。
彼女の方はチャリンコが壊れかけていて、不安のようでした。
なんだか、彼女の気持ちが分かる気がして少し切なくなった船内です…
ここからはじまる大勝負
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ベルギー人とここから走ってきたんだよなこの道と少し感傷に浸り合ってた
この自転車旅で「音楽を聴く」ということはほとんどしなかったのですが、向こう岸に向かっている時に、なんだか急に音楽が聴きたくなって船内ではスマホを耳に当てて音楽を聴いてました。(イヤホンがカバンの中に合って取らなかったのです)
少し緊張してるのでしょうか。HYのトゥータンがやけに胸に響きました。(中学生振りに何故か聴きたくなったのです)
というか、トゥータンがやたら目の前に広がるターコイフ色の湖とアンデスにマッチしていて「いよいよだ!」という気になったのです。
「トゥータン最高!あと10回は聴ける!いえい!」と高鳴る胸で何回かリピートしたところで到着してしまいました。
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ターコイズの湖の綺麗さと勝負前の景色が相まって印象的。
この景色はこの先忘れることはないかもしれない。
それぞれ出発していくシクリスタ
ここから勝負が始まります。チャリンコのセットが終わった順に出発していきます。
本当はこの国境越へは時に協力プレイが必要になることもあるらしく、誰かと走ったほうが良いらしいです。でも、僕は一人で挑みました。(というより、僕自身が遅いから友達でもない人に合わせてもらうのが無性に申し訳なくて…)
実は昨日スペイン人のおっちゃんから「一緒に行かないか?」的なことをさり気なく言われていたのですが、遅いからという理由で断ったのです。(僕とおっちゃん以外は全員カップルだから、組むならこの二人しかいないのだけど…)
徐々に出発していくみんなを見ながら、「遅れないように俺も行くか!!」…とはならず、まずは腹ごしらえをしておきます。
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ま、急いでも仕方ないので。
(船で食べると船酔いで吐きそうだったからさ)
ちなみにこの時10時過ぎです。アルゼンチン側のフェリーが17時発です。これを逃すと次の日の11時まで次のフェリーを待たなければいけません。
晴れていればキャンプ出来るのでいいですが、今日は午後から雨予報なので是が非でも17時のフェリーに乗りたいのです。
要するにタイムアタック的な感じで「時間に余裕があるわけではない」のです。しかもただでさえ遅い僕は。
しかしこのとき、(まー、大体この道は4,5時間有れば越えられらしいし)と楽観的になっていました。おにぎりも美味しかったし。
多分、晴れ渡る景色が僕をいつも以上に呑気にさせていただのでしょう。絶対そうでしょう。この天気のせいだおい。(後に天気に苦しめられるのですが)
おにぎりを食べ終わった頃にはほとんどの人がいなくなり最後尾での出発です。
と、思いきや少し行くと先に出発したベルギー人カップルの彼女の方のチャリンコが壊れたようで彼氏が懸命に修理していました。
チリイミグレ到着
「大丈夫?」
「OK大丈夫!」
ベルギー人カップルに問いかけたところ大丈夫そうだったので、とりあえず先に進みます。(助けてと言われても僕に出来ることはまぁないのですが)
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チリ側のイミグレへは1km弱で到着したのですが、この道がなかなかハードでした。
チリ側は漕げると聞いてたので、僕の実力不足の可能性も多いにあるかもですが…
「おい、砂利深すぎ。石デカすぎ。おい。」という感じで後輪がザクザク空回りします。
と、言っても確かに僕にしては乗って漕げてたところも多かったっちゃ多かったとおもいます。(ま、2kmもないしね)
ここからはじまる「Be Strong」
チリのイミグレではまたチャリダーが再集結しました。そして、出国が終わった順にまた再出発していきます。
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「風が強いわねー」なんてみんなで談笑。
簡単なイミグレですぐに終わると思いきや、僕の前の3組くらいが事前にネットでする手続きをしていなかったようで1時間くらいここで待たされてしまいました。
(急がないといけないのに…と思いましたがおにぎりを食べてた僕がいけないと思い直しました。というより、ここでもおにぎりをもう一つ食べようかめちゃくちゃ迷って我慢しました。)
そして、11時40分いよいよ再出発です。ここからが本当の国境越え【RUTA X-915】という道が始まります。
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僕がチャリンコ置き場に戻るとなぜか、先にイミグレを終えてたはずのスペイン人のおっちゃんは出発せずチャリ置き場でテレビ電話をしてました。
さすが、ガチチャリダーです。余裕が違います。しかもおっちゃんが着ている蛍光色のウェアがめちゃくちゃ輝いていて「スペインの黄色い閃光…」と感嘆する思いでした。
とりあえず自転車に跨って「先に行くよ」と輝くおっちゃんに声を掛けると、一言こう言われました。
「Be strong」
親指を立てて僕にそう伝えるスペイン人おっちゃんに答えるよう、ペダルを力いっぱい漕ぎ始めました。
ユーアーストロング
チリのイミグレを出発して1時間ちょい。
後輪が取られまくるし、急勾配でくねくねと曲がる峠を「ハァハァとゼェゼェ」と押しながら歩いていました。おっちゃんから貰った「Be Strongパワー」も切れ始めた頃、振り返った先に黄色く輝く何かがこっちに向かってきているのが見えました。
やばい、黄色い閃光(スペイン人のおっちゃん)やと思い僕も「Be Strong精神」を振るい立たせ登り坂の途中から自転車に跨がります。
「ズサッズサッ…」しかし、少し進むと後輪がどうしても取られてしまいギブアップで足を着いてしまいました。
そんな僕を、「黄色い閃光」は座り漕ぎのまま追い越していきます。追い越し際で僕にアイコンタクトをしてきたおっちゃんの眼は「Be Strong」と僕に訴えかけていました。(非難するような眼ではない。)
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そんなスペイン人のおっちゃんを「なんちゅうBe Strongおっちゃんや…」と立ち尽くしながら見ているとある事に気づいたのです。
(もしかして、立ち漕ぎで力強く漕ぐからタイヤが滑るんじゃ?座ってゆっくり漕げば地面を噛みながら行くんちゃうんか?)
と、先を行くおっちゃんを真似してゆっくり座り漕ぎで漕ぐと。あらま…
漕げるではないですか。漕げる漕げる。うん漕げるぅぅぅう!!
この感動を噛みめながら、僕はゆっくりゆっくりおっちゃんの後を着いていく事にしました。
(1kmが限界で徐々に見えなくなってしもたけど…)
フィッツロイ現る
そんなこんなで、進んでいるといきなり目の前の道の向こうに「かっちょいい切り立った山」が薄っすら見えてきたのです。
「おーフィッツロイじゃねぇか!!ラスボス感満載やな!!」とテンションが上がります。
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実はこのとき「チリ側5キロ、アルゼンチン側15キロ」と勘違いしていてあまりに長いチリ側にドギマギしていたのです。
(え、まだ終わんないの..もしかして、道間違ってないか..)みたいな。
※道中にはRUTA X-915(〇〇km)という看板が定期的にでている。
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しかも、チリ側後半は勾配もゆるくなり自転車も割と漕げる感じで「もしかして、全部普通の道に補正されちゃった?」と意味のわからない余裕までぶっこきはじめる始末です。
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この時から徐々に天気と僕の運が傾き始めていた
が…こんな僕の余裕を打ち砕くようにアルゼンチン側の後半戦が突如はじまるのです。
※アルゼンチン側は次の記事で書きます
プチ情報まとめ
◆オイギンスの街から港まで
7キロだが普通のペースで漕げば30分で着く。一応未舗装。
◆フェリーについて
乗船時間は2時間くらい。7時半出港予定が8時出港に。いつものことらしい。
乗客はマックス20人くらいの狭い船。
他の船に乗った人の情報だと6時出港で6時間掛かったという人もいたので、船や波の調子によってスピードが違うのかも。
僕が乗ったこの会社が一番しっかりとしていると思う。
◆チリ側の道
イミグレ以降は割とクネクネとした急勾配の山道を走らされる。振り返ると景色は最高。
未舗装のレベルはこれまでで一番石が大きく後輪が取られる。漕げないことはないかも。
後半12キロ以降?くらいは漕げる道になる。途中、飛行場みたいなところのゲードがあるがそちら側から行くとその先にある川を渡る橋を通れる?
僕は、ゲートの向こうを確認しにいったが明らかに滑走路っぽかったので折り返して道を戻った。そしたら、大きな流れの速い川にぶち当たってチリ側でびしょ濡れになってしまった。
※どっちが正しい道かわからないけど参考までに。