『メリリー・ウィー・ロール・アロング』を初見で楽しむためのポイント
※ ネタバレを含みます※
ネタバレなしで観劇したい方は、
1.これだけ覚えておいてほしいこと!
のみ読んでください。
2.シーンごとの繋がり
は個人的に面白いな~と思った戯曲の分解です。
『1.これだけは覚えてほしいこと!』
① ”逆”再生という構造でできている。
:”逆”再生=主人公:フランク・シェパードの人生を、
現在からいったん過去へ戻り物語を進める、
ではなく、文字通り、
現在→過去①→過去②→過去③……と1場面ごと過去に戻していきます。
:この構造が普通の物語と全く異なり、頭を混乱させてしまい、ハマる人・寝てしまう人を作る最大のポイント。
でも、ここがこの作品の面白いところで、唯一無二の戯曲である部分です。
:1場面ごと、必ず『次の場(過去)』のヒントになるフレーズが隠されています。
フランクは”どこでボタンを掛け違えてしまったのか”考えながら見ると、より面白いと思います。
② 一幕がひたすらキツい!
:物語は普通『起・承・転・結』の流れでできていますが、
”逆”再生という戯曲の構造上『結!・転!・転!・承・起・(結)』の流れになります。
:一幕は『結・転・転・転』がぶつ切りで表現され、各登場人物の関係性・感情、すべてがチグハグで繋がらず(前の場(つまり過去)を思い返すと繋がるのですが)、???となってしまいます。
:できれば、パンフレットを買って『シーンと年代・時代背景』ページの各場ごとのフランクの状況は頭に入れて、”逆”再生を楽しんでください。
③ ここもできれば……
:YouTubeにmerrily we roll along'94 と
merrily we roll along2012の各公演がなんと全曲アップされているので、
聞いてから見ると面白いかもしれません。
:印象的なメロディが繰り返され、この場のこことここは繋がっていた!?
と気づけるかもしれません。
以上、3つの点は、できれば頭の片隅において”逆”再生を楽しんでもらえたら、とっても嬉しいです。
普通の物語のように、
『この先もしかしたら、良いことが起こるのかも。』
そう思うこともできず(だって客席の我々はフランクの人生にこれから起こることをすべて知っているのですから。)ミュージカルでありながら、現実の人生に限りなく近く、本当に学びの多い作品です。
ラストの『♪Our Time』とても素敵なシーンですので、ぜひ、ぜひ、楽しんでください。
『2.シーンごとの繋がり』
ここからは各場の年代ごと、戯曲を分解・注目してほしい台詞・人物を分解して紹介していきます。
■ プロローグ
【ポイント!】
・フランクの胸に抱かれた『赤いノート』
=物語に一貫して登場するノート。『左向け、左』の公演台本。
■ 1場:1976年:
ハリウッドの映画プロデューサーとして成功を収めたフランク・シェパード。新作の公開を記念し、彼の家で開かれたパーティーのシーン
【台詞】
(いい作品を書くにはどうしたら良いか聞かれ)
「ここ(頭)じゃなくて、ここ(心)で感じたものを書くんだ」
「ニューヨークに行ったら、『チャーリー・クリンガス』の芝居を見ろよ!」
「あなた知らないの。あの『インタビュー』以来……」
【ポイント!】
・新作映画の『タイトル』
・『♪That Frank』中の歌詞『僕らの時代だ』
■ 2場:1973年:
フランクとチャーリーが作ったミュージカル「ブロードウェイの恋人」の映画版でヒットした曲が冒頭で流れる。
2人は作者として招かれ『インタビュー』を受ける。
【台詞】
「彼があの忌々しい『クルーズ船』に乗るように勧めたのは誰?」
「おふたりは「ブロードウェイの恋人」の作者であり、「愛の悲しみ」の作者でもあります」
【ポイント!】
・フランクの妻・ガッシーに手渡された『脚本のタイトル』
=1場で公開された新作のタイトル
・チャーリーが歌う『♪Flanklin Shepard,Inc』導入の『メロディ』
・二人が作る(はずだった)次回作のタイトル『左向け、左(Take a Left)』
■ 3場:1968年:
8カ月のクルーズ旅行から帰宅したフランク。このクルーズ旅行の間に、
ブロードウェイ女優・ガッシーと更に親しい仲になる。
【台詞】
「『ブロードウェイの恋人』の映画化の契約書だよ。ちょっとした小遣い稼ぎさ」
=チャーリーは断りますが、結局、2場で映画化されヒットしたことがわかる。
【ポイント!】
・『♪Gowing Up』導入の『メロディ』
=2場の♪Flanklin Shepard,incの導入のメロディと同じ
・お土産の箱から無造作に出された『赤いノート』
(ここは私の解釈ですが、きっとクルーズ船での旅行の中で、フランクは『左向け、左』を業界人に売り込みましたが、受け入れられず、そのような扱いになってしまったのでは、、と思います)
■ 4場:1967年:
フランクとチャーリーが作ったミュージカル「ブロードウェイの恋人」で主演を務めたガッシーと不倫したフランク。
妻・ベスと離婚裁判の真っ只中。
【台詞】
「俺、『クルーザー』買ったんだ!旅行に行こう」
=3場のクルーズ旅行のきっかけ
「リッチな人・生活で全部見返してやれ!」
=2場「あの忌々しいクルーズ船に~」の台詞の意味が分かるシーン。
【ポイント!】
・チャーリーからフランクに手渡される赤いノート
・妻・ベスがフランクに向かって歌う『♪Not a Day Goes by』
ー第二幕ー
■ 1場:1964年:
『ブロードウェイの恋人』初日のバックステージ。
フランク、チャーリー、そして、その作品をプロデュースしたジョーは、大ヒットを一緒に喜ぶ
【台詞】
「いつだったか、あなたに言ったでしょ。『出会ったのは運命』って!」
「僕、ジョーのためにもう一作ミュージカルを書くよ!1つだけ!」
=一幕2場のインタビューで紹介されたもう一作が「愛の悲しみ」
こちらもヒットしたんですね…。
■ 2場:1962年:
ブロードウェイの大物プロデューサー・ジョーの妻・ガッシーのパーティーに招待されたフランクとチャーリー。
ショービジネスの世界に足を踏み入れる。
【台詞】
「あなたと出会ったのは運命」
=”人質交換”というゲームの中でこの台詞が登場します。
1場でガッシーが言った台詞と繋がる。
「『左向け、左』に興味を持ってくれたのかと…」
「あなたの曲だけを使わせてほしいの!」
【ポイント】
・フランクとチャーリーが歌う『♪ Good Thing Going』メロディ
=一幕2場のオープニングに流れるメロディと同じ
≒映画版『ブロードウェイの恋人』でヒットした、ということは、本当は『左向け、左』で使うはずだった曲を、『ブロードウェイの恋人』で使用した。
「あなたの曲だけ」というのはこの曲。
■ 3場:1960年:
ダウンタウンクラブでのフランク・チャーリー・ベスの『ステージ』
ステージの後、ベスとフランクは結婚式を挙げる。
【ポイント!】
・『♪Not a Day Goes By(Reprise)』
=一幕3場でベスが深い悲しみの中に歌う曲と同じ曲が
二人の幸せの絶頂の時に歌われます。
■ 4場:1959~1957年:
作曲家・フランク、劇作家・チャーリー、作家・メアリー、それぞれの夢に向かい、働きながらそれぞれの創作活動に打ち込む3人
【台詞】
「クラブでキャンセルが出た。土曜に公演だ!」
=3場で演じられるショーもここがきっかけ
【ポイント!】
・フランクとチャーリーが受けたジョーのオーディションで歌う『曲』
≒オーディションは落とされますが、その後もダウンタウンクラブでふたりのショーを見たり、、きっとこの曲のメロディをこの時から気に入っていたのかな~?と思います。
■ 5場:1957年→(1976年):
退役したフランクは、チャーリーと共同生活を始める。
作曲家・劇作家を目指す2人は、アパートの屋上でそれぞれの夢を語る。
【台詞】
「”おしゃれな政治”タイトルを変えて、ミュージカルにしよう。
『左向け、左』とても意味のあるタイトルだと思うんだ」
「君は、ここ(頭)じゃなくて、ここ(心)で感じたものを書けるんだ」
=一幕1場、フランクがしたアドバイスと同じ。
フランクはチャーリーに言われたことをずっと大切にしていたんだと思います。
【ポイント!】
・『♪Our Time(僕らの時代)』
=一幕1場フランクは過去の友達を失くして、手に入れた成功に対しても
同じく『僕らの時代だ』と歌う。
ー終幕ー
(探せばもっとあるかも…??)