わたしには父が居ない。とは言っても10年以上前に病死したので、いがみ合う事はなく最期まで家族関係は良好だった。両親は見ているこっちが恥ずかしくなるほど仲が良かったし、2人でいつもお風呂に入ったり、ソファーに座っている父が母を引き寄せて膝の上に乗せる、なんて事も日常的だった。決まり文句は「うちの母ちゃん、可愛いかろ」だったのだが、清々しいくらい両親は青春を謳歌していた。 父も母も、買い物に行くときでさえ1人では行けなかった。単に寂しがりだった事もあって、いつも「一緒に行こ
生まれ育ったのは見渡す限り田んぼに囲まれた、お世辞にも栄えているとは言えないほど田舎の一軒家。学生の溜まり場は廃れたショッピングセンターだし、朝はコンビニにたむろするヤンキーや農作業するじじばばを横目に登校して、外車を見掛けたらラッキーだと心を躍らせるほどの、本当に何も無いド田舎。 学力は可もなく不可もなく、毎日友人と昨夜観たTV番組や下世話な他人の恋話に花を咲かせる日々。都会に憧れを抱くものの、飛び出す勇気もなく「私は鳥籠の中の鳥だわ。。」なんて、黒歴史さながらのポエ