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Road to 音大⑪音楽学校体験4日目~出会い

前回のあらすじ
音楽学校3日目を終えて青色吐息

4日目は土曜日。

新装備

この日からぼくは装備を変えてみた。

1つはベースのケース。
片方の肩で担ぐんじゃなくて、リュックのように両肩で担ぐタイプで負担を軽減を試みた。

2つ目はベース本体。
4弦の方が得意なんだけど、200g軽い5弦ベースに変更した。

3つ目は服装。
この学校ではけっこう好きなバンドのTシャツを着てる学生が多い。
ぼくがたくさん持っているバンドTシャツ、ライブ以外の出番が遂に来た!と思った。

この日は去年のベストライブだったフィッシュマンズTシャツを着ていった。誰か気づいてくれるかなー

こんなタイプ

作詞の授業

翌日は日曜で授業が少ないためぼくもお休み。
全6日の中でこの日から後半戦。

朝10時〜20時までで休憩1時間半。
①作詞
②作曲編曲
③ドラム入門
④レコーディング実習
⑤ポップス&ロックセッション
相変わらずコマを入れまくり。

しかし、①作詞はそもそも朝10時からの授業のせいか生徒の集まりがすこぶる悪い。
遅れて到着してずっと突っ伏して寝てる学生も。

①作詞は2時間の間に、最初に講義、そしてその後に各自が作っている詞を現役のプロ作詞家でもある講師に見てもらってアドバイスを受ける、という実践的な授業だった。

「この時間内に書いてもいいし、もし前に書いた詞とかあれば見るよ」
そんな風に言ってくれたので、昔書いた詞を発掘して見てもらうことにした。

報われなくても、気づかれなくても好きな相手の幸せをただひたすら願い続け、相手の願いを叶えるたびにどんどんこの世から存在がなくなっていく、そんなテーマの詞を。

先生に詞を見てもらおうとしたら
「これって曲もあるの?」
「あります」と言うと
「じゃあ音源も一緒に聞かせてよ。その方がイメージできるし」

突然ぼくが30年くらい前に作った曲を先生に聴いてもらうことになった。
うわっ音大で聴いてもらった時と同様ドキドキする!
だってこの前は音大の先生だけだったけど、この日は他の生徒もいる!

詞に関しては「ちょっと『ぼく』とか『きみ』とか主語が多いよね。音符の数が限られてるから他の単語に使った方がいいよ」
と指摘をもらいつつ、概ね褒めてくれた。

そりゃわざわざ見てもらう詞だからわりと自信作だもんね。

意外だったのは曲について。

何度も「めっちゃシティポップじゃん!」と言って褒めてくれた。

ぼくの時代の日本独自のおしゃれなポップスは、今では「シティポップ」として一定の市民権を得ている。何なら海外でも。

まだ時間が余ったので、気を良くしたぼくは古い、とても気に入っている曲に詞をつけてみることにした。

この曲に詞がついてないのがずっと気がかりだったから、もあるけれど、せっかくの機会だからこの曲を先生に聴いてもらいたかった。他の生徒にも聴かれちゃうけど!

さっきの指摘を踏まえてその場で作った詞については、
「すごく良い」ととても褒めてくれた。

そして曲についてはそれ以上に褒めてくれた。
「このクオリティなんなの?」
「どんなアーティストが好きなの?」
「今まで何やってたの?」

興味を持ってもらえたのか、ていろいろ質問された。
他の生徒がいる中で答えるのがちょっと自意識過剰で照れくさかった。

作曲・編曲

次の②作曲・編曲も同じ先生の授業だった。

そして体験中、後にも先にもそんなことは一度も無かったのだけど、体験で来ているぼく以外の生徒は誰一人来ず、ぼくと先生の2人きりの時間になった。

書き出されたコードに対してぼくのベースと先生のギターでセッションしながら、いろいろなことを話していく。

「昔専門学校で作曲や編曲を学んでいて〜」
「え?どこの学校だったの?」
「もうなくなっちゃったんですけど〜」と学校名を伝えると
「俺もそこ行ってたよ!作曲やってたよ!」

なんとぼくが大学に行きながらダブルスクールで通っていた専門学校の先輩だった!

「〜先生とか知ってる?懐かしいなぁ」
「作曲のコンペに何度も参加してさ。曲はダメだったんだけど、歌詞の方でたまたま仕事をもらえるようになって、何とか今までやってくれてるよ」
「他の曲も聞かせてよ」

誰もいないので遠慮せずに自信作を聴いてもらう。

「何これ、これはすごい展開だな」
「ギター自分で弾いてんの?上手すぎない?」
「藤井風みたいじゃん」
そんな風に言ってもらえた。

ぼくに言わせれば藤井風がぼくっぽいんだけど!なんてね。
他人の空似ってやつか。きっとそんなに似てない気もする。
少しは時代がぼくに追いついてきたのかもしれない。

「このくらいのレベルの曲、いくつくらいあるの?」
うーん、ある程度満足いくのは10曲くらい?
仕上げれば良くなりそうなのは20曲くらい?
ちょっと数は多めに伝えたかもしれない。

先生は少し神妙な表情をして話し始めた。
「ぼくが今作詞で仕事をしていて、あなたが作曲で仕事をしていないのは…」
「立ち回りの差だけ、って言ったらアレだけど」
「誰と出会って、そこで何を話したか、とかそのくらいの差しかなくて」
「クオリティ的には世に出てても全くおかしくない」

プロの人にそんな風に言われて、ぼくは何だか報われた気がした。

29歳で音楽をやめるときのぼくに、報われる日が来るよ、と伝えてあげたかった。

(後半につづく)

https://note.com/46k/n/nb7afb64ee8d6

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