アートを誰が作って、誰が買うか。
先日、あるアートの業界の方から「お客さんが作り手に回っている」という話を聞いた。
数年前まで作品を買っていたお客さんたちが、自分たちで作品を作る側にまわったのだ。
作品を売って生計を立てたいアーティストや、ギャラリスト、キュレーターたちにとってはかなり由々しき問題だ。
ただでさえ、1回の個展で大成功と言える収益を納めたとして、年間で、また一生、安心して生計を立てるのは一流のアーティストですら困難な事だ。
なのに、お客さんがいなくなって、みんな作品を作る側に回ったというのは、かなり不合理な状態に陥っている。
しかしこう言っている間にも、アーティストやクリエイターは増え続け、刻一刻とインスタグラムに作品がアップされていく。
フォロワーは増え続けるが、フォロワー=お客さんではない。
フォロワーのいいねや、コメントをもらうだけで十分な人にとってはそれでいいが、作品を作って生計を立たいアーティストやクリエイターは、なんとかフォロワーをお客さんにしなければ思い通りにはいかない。
ではどうやって、新たにお客さんを増やすか。提案としては以下の二つがある。
①アートに興味がない人に興味をもってもらう
②アートに興味がある人にお客さんになってもらう
まず、①アートに興味がない人に興味をもってもらうに関して具体的な例として、街中のショップやカフェ、雑貨店などで、いわゆるアート好きな人が集まる場所ではないところで、作品をアピール、販売する場を設定するということ。
これは僕が運営している461spaceでも、雑貨店やカフェの一角をお借りして展示販売をするという企画を行っており、一定の収益が取れている。また収益以上に、新しいお客さんを増やせるという、アーティストやクリエイターにとってはかなり重要なメリットがある。
デメリットとしては、ギャラリーやミュージアムのような洗練された空間ではないという事。作品が良く見えるために最善を尽くされた場所ではない。そういう意味で、お店の世界観と、作品の世界観がマッチしてこそ成功するモデルと言える。
【その他の展示企画の様子はこちらから】
もう一方の②アートに興味がある人にお客さんになってもらう具体的な提案として、アーティスト・クリエイターとしてのスキルアップやサポートにお金を使ってもらうという提案だ。
アートに興味のある人を大きく3つに分けると、
①アーティスト・クリエイター
②作品作りに興味がある人
③作品を買いたい人
となるが、この①と②の人に対してどうアプローチするかが新しい切り口になると考える。
つまり、作り手もしくは作り手になりそうな人がお金を出してでも買いたくなるようなものを開発しなくてはならない。
例えば、ワークショップや、制作プランの設計、ポートフォリオの運営などが考えられる。
この、①アートに興味がない人に興味をもってもらうことで新たなアートへ興味を持つ人を開拓しながら、②アートに興味がある人にお客さんになってもらう流れを作っていくことが、今の461spaceの課題だ。
そしてこの流れを定着させ、アーティスト、ギャラリスト、キュレーターなどの新たな生き方として提案したいと思っている。