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オールマン・ブラザーズのBlue Sky、その他の青空

青空に引っ越すことにした。

ツイッターのシステム変化はひどかった。サード・パーティーのアプリケーションが排除されたために、ひどく使いにくくなったし、その副作用で、あの「トレンド」とかいう不快きわまりないものが非表示にできなくなり、人間の醜悪な心性と恥知らずな物見高さを、毎日毎日、これでもかこれでもかというほど見せられ、ほとほと嫌気がさした。

タイムラインは時間軸に沿って並べられず、「タイム」ラインではなくなった。複数並行表示ができなくなったため、結局、リストを表示するだけになってしまった。使う気が失せた。

◎オールマン・ブラザーズのBlue Sky

ということで、重い腰を持ち上げ、ブルー・スカイに引っ越した。

tenko11.bsky.social

Blue Skyという曲はいくつか持っているが、なんといっても目立つのはオールマン・ブラザーズ・バンド(昔の台湾盤LPに「全人類兄弟樂団」と書かれていたのは忘れられない!)のEat a Peachに収録されたBlue Skyだ。


The Allman Brothers Band - Eat A Peach, 1972


スライド・ギターというのはそれほど好まないし、グレグ・オールマンの声と粘っこいシンギング・スタイルも苦手で、昔、オールマンズを聴いたのは、In Memory of Elizabeth ReedやWhipping PostやJessicaといったインストと、大ヒットRamblin' Manに代表される、ディッキー・ベッツが唄ったカントリー・フレイヴァーの曲だった。

Blue Skyは、そのディッキー・ベッツ作&唄なので、昔、好んで聴き、シンガロングした。Blue Sky登録記念で(!)久しぶりに聴いたが、やはり、タイトル通り、明るくて軽いノリは気持がいいし、オールマンとベッツのギター・アンサンブルはなんとも楽しい(ドゥエイン没後のリリースだが、録音時は存命だった、と記憶している)。

シングル・カットされはしたものの、Blue SkyはMelissaのB面にすぎなかったため、ヒットはしなかった。A面にしてもいいくらいの出来だと思うが、ドゥエイン・オールマンが没した直後で、ベッツはまだイニシアティヴをとれていなかったのかもしれない。

そもそもこの時点のオールマンズは、グレイトフル・デッドに似て、シングルがヒットするようなバンドではなく、あくまでもアルバムとライヴ・パフォーマンスで有名だった。

王死してのちの臣下の権力闘争にベッツが勝ったのだろう、つぎのアルバム、Brothers and Sistersからは、ベッツ作&唄のRamblin' ManがA面としてシングル・カットされ、彼らにとって最大のヒットになった。


The Allman Brothers Band - Brothers and Sisters, 1973


当時、Ramblin' ManはBlue Skyの続篇のように感じたが、いま聴き直しても、やはり同工異曲、同じようにカントリー・フレイヴァーのある、明るいムードが心地よい。Ramblin' Manが大ヒットしたとき、フォロウ・アップとして、Blue SkyをA面にしてシングルを再発すれば、ヒットしたに違いない。

You're my blue sky, you're my sunny day, lord you know it makes me high when you turn your love my way, turn your love my wayというコーラス・パートはよくシンガロングしたので、いまでも聴けば、口をついて出る。

なんとも懐かしい、いい歌だ。いや、I really mean it、じっさい、when you turn your love my wayだったのだ。あの時を思うと、なんともせつない。

◎ジョーン・バエズ

ジョーン・バエズが大きく方向転換した1975年のアルバム、Diamonds & RustにもBlue Skyが収録されている。オールマンズのBlue Skyのカヴァーである。


Joan Baez - Diamonds & Rust, 1975


ドラムズはわが愛するジム・ゴードンなのだが、たぶん、長年使ってきたキャムコのセットをやめて、よそのメーカーに替え、チューニングも変え、さらにミュートするようになったのだと思う。どうにも違和感のあるドラム・サウンドで、あまり楽しくない。

フロア・タムまで流すと、おお、ジミーじゃないか、と嬉しくなるのだが、彼の特徴だったタムタムのサウンドはぜんぜん違うものになっているし、スネアも、ワイアを響かせないサウンドになっていて、残念無念。

◎「ピッキン・オン」シリーズ

いまだにバンド名がわからず、タグのアーティスト名欄には、しかたなく、「Pickin' On」というシリーズ名を入れているグループ、のようなものがある。

ビートルズのカヴァー・アルバムからスタートし、CS&Nやグレイトフル・デッドなどのカヴァー・アルバムを出した(ビートルズ以外はファイルのみだと思う)。そのピッキン・オンにオールマン・ブラザーズのカヴァー・アルバムもあり、Blue Skyも収録されている。


Pickin' On The Allman Brothers: A Bluegrass Tribute


ピッキン・オンはブルーグラス・インストなので、Blue Skyも唄なし。最初のヴァースとコーラスはフィドル、そのあとはギター、フラット・マンドリン、そしてドブロないしはリゾネイター・ギターによるジャムに突入する。

みな上手いのだが、ピッキン・オンのお楽しみは、なんといってもリゾネイター・ギター。Blue Skyでも気持のいいソロをやっている。

◎その他の青空1 ペトゥラ・クラークの「晴れわたった空からだしぬけに」

Downtownがヒットして、アメリカでスターになるはるか以前から、ペット・クラークは英国ローカルの、そして結婚後はフランス・ローカルのスターだった。

そのペットのキャリアごく初期、子供だった時のシングルにOut of a Clear Blue Skyという、タイトルだけで嬉しくなるような曲がある。

Out of a clear blue sky I knew that I was falling in love with you「真っ青に晴れた空のようにいきなりわかったの、わたし、あなたと恋におちそう」というラインではじまる、これまたタイトル通り、明るく、軽快で、曇りのない楽しい曲だ。


Petula Clark - The Polygon Years 1950-1952


いまでもしばしば見る、out of the blue=「ふいに、だしぬけに、突然、いきなり」という成句を変形させ、雲ひとつない晴れわたった空に結びつけたのだと想像する。

ペットの唄は、英国版美空ひばりというあたりで、天才子供シンガーだったのだろうな、と納得させられるが、それよりも、途中から入ってくる混成コーラスが、とくに女性たちが、キング・シスターズのように気持よく、文句なしのすばらしさだ。

うちには、Out of a Clear Blue Skyという曲はほかになく、ちょっと調べたところ、DDos攻撃によるダウンからよみがえったInternet Archiveに、ドナルド・ピアーズという人のヴァージョンがあった。リリースはペット・クラーク盤と同じ1950年らしい。


ドナルド・ピアーズ


ルース・ロバーツ作曲、ジーン・ピラー作詞の、このOut of a Clear Blue Skyという曲自体の発表が1950年だそうで、つまりピアーズまたはクラークのどちらかのヴァージョンがオリジナルということになる。あるいは、昔はときおりあった、ある曲を同時に複数のアーティストがリリースする「競作」だったのかもしれない。

以前から持っていたが、ペットの最初の15年間はあまり好まず、気づかずにいたOut of a Clear Blue Skyの良さがわかって、ひとつ得をした。

◎その他の青空2 シャドウズの「ブルーな空、ブルーな海、ブルーなわたし」

「モダーン・クラシカル・ギターの世界:Deep PurpleおよびI Only Have Eyes for Youのカヴァー」でもふれたが、シャドウズのアルバムでいちばん好きなのは1965年のThe Sound Of The Shadowsで、そのA面にBlue Sky, Blue Sea, Blue Meという曲がある。


The Sound Of The Shadows, 1965


インストなので、歌詞でタイトルの意味が説明されたり、強調されたりはしないが、読んで字の如し、いくぶんメランコリックな味のあるバラッドで、このLPのほかの曲同様、これも昔、コピーを試み、ハンク・マーヴィンのギターに合わせてプレイアロングしたことがある。

The Sound Of The Shadowsの他の曲同様、このBlue Sky, Blue Sea, Blue Meでも、バーンズ・ギターの中音域のサウンドをたっぷり楽しめる。バーンズの5、4弦の鳴りはほんとうにすごい。

◎その他の青空3 マイケル・マーフィーのBlue Sky Riding Song

すっかり忘れていたのだが、マイケル・マーフィーの世にも悲しい歌、ひどい吹雪で馬が遭難してしまう(むろん、乗っていた女性もだが!)Wild Fireが収録されたアルバムは、Blue Sky - Night Thunderというタイトルだった。


Michael Murphey - Blue Sky Night Thunder, 1975


そして、このLPにはBlue Sky Riding Songという曲が入っていた。大ヒット曲、Wild Fireとは正反対の、タイトル通り、軽快で明るく楽しいサウンドで、いかにも晴天の遠乗り気分になる。

プロデュースはボブ・ジョンストンなので、NY録音かと思ったが、エンジニアのジェフ・グェルシーオはビーチボーイズもやったことがあるハリウッドの人、ジェフ・ハナ、ジム・イボットソン、ジョン・マキューエンといったNGDBのメンバーもプレイしているので、どうやらハリウッド録音らしい。

ドラムはハリー・ウィルキンソンという知らない人で、調べたら、ラリー・コリエルの70年代のアルバムがぞろぞろ並んだ。4ビートのドラマーというわけではないにしても、「そっちの人」らしい。
https://www.discogs.com/ja/artist/648531-Harry-Wilkinson

◎その他の青空4 スパイク・ジョーンズの「遥か彼方に青い空あり」

なんだか「山のあなたの空遠く」を思わせる、スパイク・ジョーンズのThere's A Blue Sky Way Out Yonderも、なかなかいいタイトルだし、その名を裏切らず、やはり軽快で明るい歌だ。



これは、スパイク・ジョーンズのアルバムでもっているわけではなく、Flamin' Guitarsという、スピーディー・ウェストとジミー・ブライアントのボックスで手に入れた。つまり、スパイク・ジョーンズのシングルで、二人がプレイしたということだ。

スピーディー・ウェストというくらいで、この人のスティール・ギターは滅法速い。その相方だから、ジミー・ブライアントのギターも速い。このThere's A Blue Sky Way Out Yonderも当然、速い。そういう軽快な曲で、なかなか好ましい仕上がりである。


Speedy West & Jimmy Bryant


なお、スパイク・ジョーンズについては、「スパイク・ジョーンズとフランキー堺:米日コミック音楽のこと その1」「その2」に詳述した。

◎その他の青空5 チンマヤ・ダンスターの青空の瞑想

だしぬけに、明後日の方向にジャンプするが、チンマヤ・ダンスターという、サロッド・プレイヤーというか、環境音楽の作曲家、アーティストというか、そういう人のGaia's Gardenという、いかにもなタイトルのアルバムに、Blue Sky Meditation=晴れた空のもとでの瞑想という、これもなかなかいいタイトルの曲がある。


Chinmaya Dunster - Gaia's Garden, 2011


「瞑想」だからして、スパイク・ジョーンズの青空のような高速ではなく、ゆったりとした、いかにも想念を空に遊ばせるような曲だ。これまでにふれたポップ、ロック系の曲の対極にあるが、これはこれで好ましい。

ダンスターはサロッドを看板にしているらしいが、この曲ではサロッドらしき音は聞こえず、アコースティックのスライドを弾いたのではないだろうか。


サロッドを弾くチンマヤ・ダンスター
しかし、ここはどこ? ひょっとしたらアンコール・ワットとか?


◎夜のBlue Sky

忘れていた。頭に置いた写真は、中平康監督、佐藤勝音楽監督、武満徹作曲の日活映画『狂った果実』のキャプチャーである。石原裕次郎や岡田真澄らの連中が、葉山から横浜に繰り出して遊ぶ場面だ。


中平康『狂った果実』より


横浜にはかつて、Blue Skyというクラブが実在した。おそらく、このショットはそのナイタリーでのロケだろう。山下町の海岸沿いにあったというが、わたしが幼児のころのことなので、まったく記憶にない。

また、Blue Skyでは、一夜、神戸のギャングと地元のギャングが某大歌手をなかにして、はげしくやり合い、後日、勝負を決しようと、西のほうから「兵隊」がたくさんやってきて、映画のような東西大抗争事件が起きそうになり、県警の警官隊が出動したとか。いやはや、神話の時代ですな。


〝Blue Sky〟で踊る白いタキシードの岡田真澄と石原裕次郎。彼の視線の先には二階で踊る北原三枝がいる。Blue Sky店内のショットも一部はロケかもしれない。『狂った果実』より。


◎XスXを外して青空の下を歩む

ツイッターという名前もべつに好きだったわけではないが、Xという名称は、はじめはただの悪い冗談だと思ったほどで、とてつもなく馬鹿馬鹿しいものに感じた。

冗談半分にBlue Skyという言葉がタイトルに含まれる曲を並べてみたら、ふうん、いいねえ、いいねえ、愉快だねえ、というのが並び、やっぱり月とスッポン、こうなる運命だったんだな、と深くうなずいたのだった。

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