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サンタクロースはカヌーに乗って:アンドルーズ・シスターズの「クリスマス島でクリスマスを過ごしましょ」
先月、久しぶりにアンドルーズ・シスターズのボックスを再聴した。
そのせいで、コーヒーを淹れている時に、Cristmas Islandが口をついて出てきたのだが、どうもピッチがわからなくなる。How'd you like to spend Christmasまではふつうに唄えるのに、そのあとのon Christmas Islandの音程がとれないのだ。
お前、唄が下手なんだよ、と苦笑しながら、何度も繰り返しやってみたのだが、どうやっても外れる。いくらなんでもこれはないよな、と、もう一度、アンドルーズ盤を流してシンガロングしてみた。
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アンドルーズ・シスターズのもともとのレーベルはデッカで、のちにキャピトルなどに移籍し、そちらでも代表作の再録音をしている。では、デッカ盤なら大丈夫かというと左にあらず、オリジナル録音は40年代だからか、デッカ時代にも再録音をしていて、デッカのベスト盤には、その再録音ヴァージョンが入っていて、割ってやろうかというくらい激怒した。ジャズミンという会社は好きではないのだが、この四枚組はデッカ盤のようにひどいものではなく、やっと探索を終了できた。
外す原因はわかった。アンドルーズは三人姉妹なので、ハーモニーも3パートだ。で、それを唄おうとしたわたしはひとり、記憶したのはハイ・パートで、onのところで上がってしまい、そのまま上のハーモニー・ラインを唄おうとして、高すぎて声が追いつかず、下にショートして外していたらしい。
わたしの耳には下のハーモニー・ラインに思えたパートが、じつはメロディー・ラインらしいので、そこを聞き取り、覚えて、あとで唄ってみた。onで下げるように気をつけさえすれば、ちゃんと外さずに唄えるとわかり、無事解決。
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このアルバムにはChristmas Islandは収録されていないので要注意! たぶん、大昔の10インチLPのストレート・リイシューなのだと思う。『LAコンフィデンシャル』の酒屋のシーンで流れた、ビング・クロスビーと共演のハワイアン・クリスマス・ソング Mele Kalikimakaも入っていない。
◎ココナツの木にストッキングをぶら下げて
クリスマス・ソングというのは本来、聖歌なのだが、アメリカ的商業主義文化の中で、それが変形していき、多くのポップ・ソング、かなり俗であったり、なかには瀆神的と云えるようなクリスマス・ポップ・ソングも生まれた(エルモ&パツィーの「おばあちゃんがトナカイの橇に轢かれた」!)
わたしはキリスト教徒ではないので、聖歌はあまり好まず、ポップ系の、ちょっとユーモラスなクリスマス・ソングのほうが好きだ。
たとえば、ビーチボーイズのLittle Saint Nick(サンタはホットロッドに乗っている)、4シーズンズのJungle Bells(ジャングルなので、サンタの乗物は象)、ボビー・ヘルムズのCaptain Santa Claus(橇が壊れたためにサンタは宇宙船を調達する!)といったあたりが代表的だ。
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いや、クリスマス・ノヴェルティー・ソングの代表は、いまでもよく耳にするチップマンクス(デイヴィッド・セヴィル)のThe Chipmunk Song (Christmas Don't Be Late)に違いない。ビルボード・チャート・トッパーになった唯一のクリスマス・ソングではないだろうか(後日の補足:いや、ビングのWhite Christmasもチャート・トッパーだったと思う)。ロング・セラーでもあって、毎年、盤が出ていたし。
日本にも、トニー谷の「サンタクロース・アイ・アム・橇」という、いまや古典となったクリスマス・ノヴェルティーがあるのを書き落とすわけにはいかない(「ノオ・マネー、サンザン・苦労ス」「アイム・ハンサム・サンタクロース、サンザン・クリシミマス」)。
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大瀧詠一編集によるトニー谷のベスト盤
Christmas Islandもこの系譜に属し、サンタはカヌーで島々を巡るし、靴下はココナツの木にぶら下げる。ま、そのあたりはかつてブログのクリスマス・ソング特集に書いたので、歌詞などを知りたければ、その記事をご参照あれ。
クリスマス島というのは実在の島で、サンタの靴のような形をしている、なんてことも、そちらに書いたので、ここでは繰り返さない。「中部太平洋、キリバス共和国のライン諸島中の環礁」、珊瑚礁の島である。
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◎ボブ・エイチャー&ディニング・シスターズ、その他のヴァージョンズ
EverythingでHDDを検索し、うちにあるすべてのChristmas Islandをリストアップしたら、アンドルーズのほかに、スパイク・ジョーンズ、ジャッキー・グリースン、そして、ボブ・エイチャー&ディニング・シスターズのヴァージョンがあることがわかった。
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ボブ・エイチャー&ディニング・シスターズのChristmas Islandを収録。キャピトルのアーカイヴから発掘したラウンジ・ミュージック集大成シリーズの別巻としてリリースされたクリスマス・ソング集の第二巻。本体もすぐれた編集だったが、別巻も楽しい曲が満載されている。
このボブ・エイチャーのChristmas Islandを聴いて、なあんだ、こっちをコピーすれば間違えなかったのに、と拍子抜けした。アンドルーズのハーモニーをよく聴いて抜き出したラインを、エイチャーは唄っていたのだ。ソロだから、簡単に聴き取れる。
スパイク・ジョーンズ盤はWouldn't It Be Fun To Be Santa Claus's Sonとのメドレーで、歌詞のおかしみを生かすためか、サウンドとしては、どちらもストレートにやっている。スパイク・ジョーンズらしいおふざけサウンドはなし。
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作者のライル・モレインの本業は俳優。脇役だったらしい。ソングライターとしては、同じ俳優のバール・アイヴスとの共作がいくつあるとか。アイヴスのアルバムに収録されているのだろう。
ジャッキー・グリースン盤Christmas Islandは、いつものグリースン・スタイルで、ゆったりとした静かなストリングスの、メロディーを生かしたアレンジで、原曲の持つユーモラスな味は消されている。まあ、こういう風にやると、案外、綺麗なメロディーなんだな、と思うところが得点か。
というわけで、取り急ぎメリー・クリスマス、でござる。