連続短編小説「阿知波」

第二回 「食卓」

 私の家庭では、朝は必ずヨーグルトを食べる。毎日だ。おそらく一日も欠かさずにヨーグルトを食べている。

 腸内環境を整えることも大切だが、いくら何でも毎日は苦痛だ。あんな偏った食事になぜ私の両親は満足しているのだろうか。下手すると脳髄までもがヨーグルトに汚染されているのかもしれない。

 ヨーグルトにも色々ある。正直、朝食のパンにさえ合えば何でも良いと思っているが。個人的には王道を征くイチゴ味が最も好きだ。母はブルーベリー味が好きだというが、私には到底理解することができない。

 父が定年退職で会社に出勤しなくなってから、今月で丁度十年が経つ。私が10代の頃は食卓で父の姿を見ることは無かった。父は毎朝5時には出勤し、帰宅するのは23時を回っていた。それだけ勤勉に働いてくれたからこそ、今の年金生活がある。それに対しては素直に有難く思っている。しかしながら、それでも私はどうしても父に対して感謝の念を抱くことができなかった。なぜなら、あの男からは私に対する愛情を感じることができないからである。あの傲慢極まりない老人が私は視界に入るだけでも嫌なのだ。

 ちなみに、私は基本的に夕食を深夜に、一人静かに食べるタイプの人間だ。その方が落ち着くし、リラックスできる。ただ、清々しい朝にだけは絶対に母と一緒に食事を取ると決めている。これだけは譲れない。つまり、朝の朝食の時間は私にとって、一日の中で母と接することのできる唯一の貴重な時間なのだ。それをあの無職の老人は、私のこの神聖なる時間を木端微塵に破壊したのである。なんて下劣な奴、最低だ。

先日、あの男は私に向かってこんなことを言ってきた。

「お前なぁ、いつ就職すんだァ?」

「まさか、このままここにいるつもりじゃあねぇよなぁ?」

「なんも使えねぇドブスが... 俺はお前のその眼つきが気に食わねぇ!」

完全なる罵りだ。ありえない。この男は何を言っているんだ。

イカれたのか? コイツは本当にイカれちまったのか?

私は母に向かって救いを目で訴えたが、無視された。


全てが憎い❕❕

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