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Chapter 8 「正彦からの視点B」

モトヤくんは、もうとっくに動かなくなって、水槽の底へと沈んでいた。

もはや人ではなく、ただの肉片と化した彼の姿は何とも哀れなものだった。

結局、誰一人としてド・ブーズの誓いを思い出せた奴は居なかった。

悲しい。これはとても哀しいことだよ。これほどまでに僕やナガヤマくんの存在が彼らとってはどうでもよい記憶であったという現実に、もう僕は失望した。あれだけ、あれだけ僕は彼らに尽くし、頭を垂れたのにも関わらず奴らは、あの奴らはまるで僕とは無関係な素振りをしやがって、もう。

あぁ、あのクソカス共の...   

全てが憎い。

この二年間、僕にヤマネくん殺しの罪を着せ、ナガヤマくんを口封じに殺し、僕を監獄にまで追いやった奴らへの復讐を胸に僕は生きてきた。自分の中にある正しさを信じて、ここまでやって来た。この瞬間のために、僕は何人ものヒトを殺め、洗脳してきたか、自分でも把握できない程だ。それほどまで、我が身を削ってまでしても、僕はこの瞬間を待ち望んでいたんだよ。

だがどうだろう、自分の人生そのものを棒に振ってまでして考えたこの計画も、いざやってみればなんとも味気の無いものである。なんと空虚なものであろうか。僕がこの一年間必死で真相を追いかけ、そして成し遂げたこの報いは、高校生だった頃の僕にとってして見れば、きっとそれを偉業として捉えることができただろう。しかし、何故だろう。今の僕には達成感をまるで味わうことができないんだ。僕ァ、不感症にでもなってしまったのだろうか。結局、僕は何をしたかったのだろう。もう、自分でも自分のことがよく分からない。もう、僕は何を追いかけて生きていけばよいのか、まるで分からなくなってしまったんだ。

ねぇ、誰か教えてくれよ。僕の進むべき道を。

ねぇ、ナガヤマくん。天国で僕のことを見ているのならば、何か言っておくれよ。

ねぇ、僕は正しかったよね? ドブスとしての責務を全うしただけだよね。

僕は何も悪くない。ルールを守ることのできなかった、悪いのは奴らの方なんだ。奴らがナガヤマくんのことを殺ったのが、全ての元凶だ。

人を殺めておいて、のうのうと生き伸びるなどありえない話でしょう。

そんな奴らは、消えて当然。僕は自分のやるべきことをやったまでだよ。

それの何が悪いというのだろうか…


*

ガタン、と物陰から何かの音がして、そこから人の気配を感じた。


誰だ?  いや、これは…

フハハハッ。これはもしかして、もしかすると。

ねぇ、さっきからずっとこっちを見ていたんだろう。チラチラ見ていたんだろう?

見てるなら何か言ったらどうだね? 

ね、ユミちゃん?



さぁ、出ておいでよ。

僕はずっと君と話がしたかったんだ…




つづく→

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