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侵略者 第六章

"Owner of a Lonely Heart"

 ある日、高田馬場の片隅にある映画館「シネマ・オアシス」の支配人、阿知波は、いつものように夕方になって閉館作業をしていた。

 しかし、その日は何かが違っていた。阿知波は、煙や炎の匂いが漂ってくるのを感じた。駆け寄って見ると、映画館の裏にあるゴミ置き場が燃えていた。阿知波は慌てて消火器を手に取り、駆けつけたが、すでに火は映画館の建物にも燃え広がっていた。
 聖夜に突然、銃撃戦が始まった。とある外人男がマシンガンを持って新宿の映画館へやってきたのだ。彼らは映画館を犯罪行為の舞台にしていた。阿知波は、彼らが目的を達成する前に、どうにかして彼らを止めなければいけないと、何かの義務感に駆られた。

 阿知波は、すぐに映画館の中へと向かい、避難を呼びかけた。映画館の客たちは、パニックに陥りながらも、慌てて席を立ち、出口に向かって走り出した。阿知波は、客たちを落ち着かせるために、必死で声を出した。

「落ち着いて、一列になって歩いて出口に向かって走ってください!」


 しかし、その外人男は、阿知波の言葉を無視して、映画館内を撃ちまくっていた。やがて、外人男は映画館の中にも火を放った。まただ。阿知波は、映画館を燃やした外人男に向かって、「だから洋画は売れない!」と言い放った。それは、自分の信念を貫いた、彼なりの正義だった。阿知波は、客たちを守るために、自分自身も隠し持っていた銃を手に取った。以前、歌舞伎町のヤクザから映画館を建てるときに譲り受けたものだ。

 彼は、敵の位置を強烈な感覚神経を持ってして探し出し、正確な射撃で敵を二階から一階へと撃ち落とした。
 男は頭を破裂させ、絶命した。

 そして、銃撃戦は終わった。

 映画館は、壊れた椅子や破れたスクリーン、そして銃弾の跡で荒れ果てていた。阿知波は、自分が生き残ったことに驚き、また、恐怖に打ちのめされた。しかし、彼は、客たちを守るために必死に戦ったことに、少し誇りを感じていた。

 生きることの気持ちよさ、その快楽に溺れていた。

 しかしながら、そんな殺人を味わってしまった自分自身を、阿知波は心の底から軽蔑したのだった。


「全てが憎い!!!!」



おわり

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