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Chapter 4 「イタブリ」

そこは、一面霧の中から突如現れた不気味な廃屋敷。

辺り一面ツタで囲まれ、窓からは不穏な青白い光が漏れていた。

ユウキは、内心恐る恐る、しかし表面上では堂々と、屋敷のインターホンを押した。

返事は無い。

玄関のドアノブに手を伸ばしてみると、そこに鍵は掛かっていなかった。

静かに、音を立てずに、ゆっくりとドアを開ける。

すると、玄関先には、見慣れない小柄な男が立っていた。

小男はスーツを着ていて、髪はスキンヘッド、年齢は50半ばに見えた。

穏やかそうな眼つきでこちらを出迎え、物言いはとても柔らかだった。

「ようこそ、ユウキ様。我々は貴方が来るのを、本当に、本当に。」

ㇺㇷ..

「今か、今かと、待ち望んでおりましたよ…」


ダ、誰だ… 

アチワではないな。

奴はこんな声じゃない。それに背丈も違う。

「アッ、申し遅れました〜。あの、ワタクシ、ェー、あの、アチワ様のね、アチワ様の代理人を努めさせてもらっています。フフッフ、んふ、タチバナと~、申します。ハイッ。」

アチワはどこだ?」

「ン~、今は留守でございます。」

「じゃあ、どこ?」

「それはァ、貴方様には言えませぬ。」

「それじゃ仕方ない。フゥ、力ずくでも吐いてもらうぞ…」

そう言って、ユウキは懐から拳銃を取り出し、小男の顔に突きつけた。

「んふふ、ユウキ様。それは我々の台詞ですよ。」

そう言って、小男は微笑んだ。

「ぁあん?お前、何言っt…」

そこまで言うと、ユウキは背後から突然、また別の男に、腕を掴まれた。

身動きが取れない。銃も、奪われてしまった。

背後の男は、筋骨隆々の大男で、その顔はまるで、大魔神のようだった。

「ふ~、こんな物騒なもの。持ち歩いてもらっては困りますヨ~♪ ユウキ様。」

「おぉおい、離せっ、離せったら。離せって言ってんだろ、このハゲ!!」

ユウキは、必死で抵抗しようとしたが、まるでダメだった。

「んもォ、そんなに興奮しないでください。」

「なんで、なんで、なんで俺がこんな目に合わなきゃならねんだよ。勘弁してくれよ、ほぉんとによぉ、はぁ、頼むからさ、離してくれ。な?」

「ダメです。」

なんて、無慈悲な。

「でもね、ユウキ様。今からワタクシが尋ねることを、一つ。その一つの質問をね、ちゃぁんと答えてくだされば、きちんと正しい答えを答えられれば、開放してもあげてもいいんですヨ~♪」

小男は、なんだか興奮気味で、頬は ほんのり赤くなっていた。

「ほぉん、じゃあ、答えてやってもいいぜ。ここで死ぬより、それの方がよっぽどマシだ。俺だって、来たくてこんなところまで来たわけじゃねぇ...」

「ふッ、そうですか。それならいいんですよ。」

「お前さんだってよォ、正直アチワに言われただけで、内心嫌なんだろ?」

小男は、少しカチンと来た様子で、こう言った。

「ㇵッ、なにをおっしゃる!ワタクシめは、アチワ様に忠誠を誓った、忠実なるキモ人間!アチワ様との契約は絶対です!!!」

「なんだ、その契約ってのは?」

「フッ、そのことは、あなた様が良く覚えていることでしょう。ほら、ド・ブーズの誓いですよ。お忘れですか?」

「あぁ、そんなもんもあったな。ははぁ、だがよ、そんなもん誰も気にしちゃいなかったし、今はもう誰も覚えちゃあいねぇもんだよ。」

「はあ、そうですか、そうなんですか。」

小男はがっかりそうな顔をして、ポケットに手を突っ込んだ。

すると次の瞬間、

小男はユウキの鼻目掛けてナイフを突きつけた。

その冷えた刃先からは、なんだか血の香りがした。



スゥぅぅぅぅぅぅ。。。


これでも、思い出せないというのかァアアアアア!!!

小男は、突然、激高し始め、その眼つきは、それまでの穏やかなものから、焦点の合わない殺意めいたものへと変わっていた。

「おいおいおい、おちついてくれ。頼むから、おちつけ!」

「そんなことで、落ち着いていられるかぁああああああ!! 貴様とあの車の男は、我々キモ人間にとっての害、しいては人類に対する害そのものだ!! それを、我々が見逃すわけにはイカンんん!!! アチワ様を汚すもの、貶すものは誰であろうと絶対許さん!!!!そんな者は即刻死刑、死刑ヨォおおおおお!!!」

「ゥ、うああああああああああ!!!」


「さぁ、吐けェええええええええ!! なんだ、貴様がアチワ様と交わした契約の内容は何だ??? お前が守ると誓いながらも、破ったあの誓いは何だ!!! さぁ答えろ!!!! 裏切り者の反逆者よ、神を悪魔に売った裏切り者よ!! 思い出してきたか、さぁ答えてみろッ!!!!」

「そ、そんなこと、今思い出せるわけないだろぉおおおおおおお!!!!」


「フッ... 馬鹿な奴め。自分のその命よりも、プライドの方を優先するとワァね。」

「はぁぁぁ、ほんと一体何のことだか、オレニハ ワカラネェ...」

「まぁ、いい。所詮は自業自得よォ。」



キィィェェェェェエエ!!

すべてのキモ人間共に幸あれェえええええ!!!!


そう叫んだ小男は、ユウキの鼻を躊躇も無しに削ぎ落した。



つづく→

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