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Chapter 3 「夢魔」 後編
車の中は清潔そうだった。少なくとも、目で見る分には。
男は、私を家まで送り返してくれると言ったが、車は私の家とは逆の方向へとドンドン進んでいった。
嫌な予感がしたが、私にもう、そこまで色々考える気力は無かった。
それどころか、あわよくば男の家で一晩寝てみてもいい...
とまで思っていた。
馬鹿だった。
いつの間にか、車は高速道路の中へと入り、看板には "静岡" の文字が見えた。
流石に不審に思った私は、男にこう尋ねた。
「すみません、一体どこに向かってるんですか?」
「 … 」
「貴方、私を家に返すって言いましたよね?そう、言ったよね!」
男は、何も喋らない。
オイッ!! と言って、私は男の顔を叩いた。
すると、男は口を開き、こう言った。
「いやぁ~、これはあの時のビンタを思い出しますヨ~♪」
この、耳障りで汚らしい奇声に、私は思わず鳥肌を立てた。
やっと、私は、この男の正体に、今更ながら気が付いた。
むふふふふ、と 不気味な笑みを浮かべ、男は自分の顔に手を当てた。
すると、男の顔は歪み、皮膚には亀裂が走り、ベロンと剥がれ落ちた。
さっきまでそこにいた美男は消え去り、そこに現れたのは、
あのアチワであった。そう、あの奴だ。
男の顔は、アチワの精巧な変装マスクだったのだ。
私は、さっきまでこの醜きドブスに見惚れてしまっていたのか...
いやややややややややややああああああああ
そう思うと、自分で自分のことが嫌いになった。
もう、ドブスのことよりも、自分自身のことが恐ろしくなった。
なんで、こんな男に、こんなところまで付いてしまったのだろう。
圧倒的な絶望感、そして、敗北感。
そうしている内に、アチワは静かに私の口元にハンカチを当て、
私は、バタッと気を失った...
*
気が付くと、私は小屋の中にいた。
服は脱がされ、両手両足は縄で縛られていた。
「むふふぅん、やっと御目覚めかなぁ…」
私の目の前には、よだれを垂らしたアチワの姿があった。
「うううッ」
吐き気を感じ、私はその場で吐いた。
「んもぉ、ダメでしょ!こんなん出して。」
う、ヴぉエ... そんなん知るか。
「なら、ワタシが綺麗にしてあげますヨ~♪」
そういって、アチワは私の飛び散った体液を、口で啜った。
「あとぉ、ユミタンの体の方も綺麗にしますネ~♪」
そういって、奴は私の中へと入ってきた。
もうそのあとの事は、正直未だに思い出したくない。
奴は、私に注ぎ込んできただけでなく、私の全身に鞭を打ち付けてきた。
奴は、あのドブスは、私の悲鳴を聴くなり、笑っていた。
不気味な、ドス黒い笑い声を高らかに上げ、高揚していた。
許せない。
あのカス野郎の事は絶対に許せない。絶対にだ。
何が何でも、奴に仕返ししてやる。
この屈辱を、奴にも味合わせてやる!!
奴の、あのドブスの、あの野郎の、
「全てが憎い!」
こう叫ぶと、ふとベットの下から、声がした。
小さな囁き声だったからか、よく聴こえなかったが、確かに声がした。
確かに、誰かの声がした。
ここは病室なはず、そう簡単には誰も入れないはずなのに...
するとまた、声が聞こえた。
おはにょ~す
アチワは、ベッドの下にいた。私が担ぎこまれたときから、ずっと...
つづく→