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同い年のASPENが来た。
アコースティックギターが欲しくなった。最近よく聞く吹奏楽の影響なのか。生音もそうだし、楽しそうにやっている皆んなを見て、心にずっと残っていたともし火を感じるようになった。
予算は2万以下と決めた。エントリーモデルしか買えないが、ネットで探してみると中古品という選択肢もあることも分かった。
そして途方もない物量にさ迷う。
中古品には70年代80年代の物が多い。いわゆるフォークブームでたくさん売れて、オーナーさんが(年齢的にも)手放したものだろうと思う。
程度も良いものから良くないものまで。それが予算内でゴロゴロある。気持ちを入れすぎて、つい高額のものに手を出さないよう、そこだけ気をつける。
また、明らかに業者さんだったり、細かい説明のない品物には手を出さないようにする。現品の認識にギャップが生じないよう、ギター工房の職人さんのような方から購入したい。顔が見えないから余計に慎重になる。
とはいえ少し欲が出て、買うなら、同い年のものにしようと決めた。幸運なことに、探したらポンと出てきた。それがASPENだった。
販売サイトの説明文を読んて、出品者の思いを推し量る。中古品というより、本当に楽器を売っている、とてもエモーショナルな方だと思った。
予算はちょっと、オーバーした(笑)
ASPENは東海楽器(浜松市)の製品、国内ではCAT'S EYEという製品名で1975年より展開。(東海楽器は、小学校の時に使ったピアニカ、そのメーカーさん)
そしてCAT'S EYEの輸出版がASPENと名付けられる。ポプラの仲間でヤマナラシという木が日本にはある。風が吹くと葉どうしが擦れ合って、風が強いと大きな音を立てる。まるで山が鳴るような。
海外で認知度の高いポプラの木と、生産国日本のポプラであるヤマナラシを重ね合わせたのかな。わずかな風でもパタパタと鳴って、強く吹けば大きな音を響かせるヤマナラシ。
ASPENの名前の背景には、マーティンの単なるコピーではない、『作り手の想い』を強く感じる。
私の手元にあるASPENは、AD29-0と表示がある。
AはASPEN、Dはドレッドノート(ギターの形状)、その後の数字はマーティン社のギターの番号と同一であると思っていたが、D-29というモデルが無い、いや見つけられなかった。
D-18に対してD-19があるように、D-28が近縁なのかなと推測。末尾の0は何だろ。
海外のフォーラムで、同じ型式で問い合わせをするポストを見つけたが、アーカイブされていて全文までは確認できなかった。
ASPENに関しては情報が乏しく、謎めいている。まず、出自をまさぐるよりも、今目の前にあるコイツを弾いてみよう。
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きちっと手入れされていた。スタジオ臭は皆無。またこの方から買いたい。
自分と同い年のこのギターが、一旦輸出されてまた日本に戻ってきた時間の中で、どんな人の手に触れ、どんな曲を弾かれて来たのか。
自分と重ね合わせると似たことろがあって、勝手に親近感を抱いている。
チューニングを合わせる。ペグが新品のようにスムーズで軽い。グリスのスムーズさを感じる。分解してメンテされたのだろう。
テンションを掛けられていく弦がボディに響いて、もういい音。
早く弾きたい気持ちを抑えて、六弦ともチューニングをあわせる。新品の弦なので、もう1ターン確認して、ローコードでGを鳴らす。余韻に浸る。5や7フレットあたりをバレーコートで鳴らす。余韻に浸る。エッジが柔らかい、丸みを帯びた共鳴。マーティンの系譜なんだろうけれど、ヤマナラシのような優しい爽やかさだ。
覚えているコードでストロークしたり、アルペジオしたり。20年経っても、指が覚えていた。
ローコードからハイコードまで、音が豊かで柔らかい。ネックが細く押さえやすい。
私の原点はクラシックギターで、高校の頃は下宿生活ながらバイト代でスクールに通ったりした。
そこからグレコのレスポール(Slashやザック・ワイルドに憧れて。先輩より頂いた。)、アイバニーズのフライングV(メガデスの影響。たしか兄に貰った)、ワッシュバーン(ヌーノモデル、これは頑張ってバイトして買った)と変遷。
でも最後に残ったのは、原点のクラシックギター。高校の時に同じ下宿生のN君から3000円で買ったもの。良い音をしていた。
これも、引っ越しの際に譲ってしまって、しばらくギターのない生活だった。
ジャガジャガ鳴らすよりも、アルペジオや軽いストロークで弾くのが好きだ。
楽譜欲しいと思ったが、時代が変わったと思う。YouTubeに先生がたくさんいる。
日本語が流暢なベトナムの方に会うとよく、日本語はYouTubeで覚えました、なんて方が少なくない。しかも、アニメで覚えたと。YouTube偉大なりよ。
当面の目標は、何か一曲、弾いて歌えるようになること。
こういう風に思えることをありがたく思う。