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ハガキが伝える『人となり』

2010年に結婚して、新婚旅行は花巻から奄美大島へ旅行に行きました。

奄美を選んだ理由は、私の中にあったマレーシア時代の(日本人学校の)恩師の背中を追いたかったのと、南国をもう一度味わってみたかったのと、なかなか行けないところへ行ってみたかったのと、理由はたくさんありました。

行くまでが大変で、飛行機を3回も乗るんです。しかも、台風来てる中で。

1回目:花巻→伊丹、
2回目:伊丹→鹿児島、
3回目:鹿児島→奄美大島

3回目なんかは機内アナウンスで、
『積乱雲を避けながら飛行します』と流れて、ゆ〜らゆらと右に左に蛇行しながらガタガタと揺れる中で『引き返す可能性もあります』って追い討ちを掛けられて、メンタル相当やられました。手汗すごい。

それでも無事に?奄美大島に着いた頃には、旅の期待感に押されて、気持ちは晴れ晴れとしていました。

レンタカーを借りてあちこち走り回って、行き当たりばったりで楽しかった。ラジオでカサリンチュのデビュー曲が流れる中で、笠利町を走っていたっけ。

5日間の旅はほとんど雨でしたが、南国の雰囲気や人々のあったかさに触れて良い思い出をつくれました。

最終日、飛行機に乗る前に、恩師が学芸員を務めていた(私たちが訪れるつい最近まで)田中一村美術館を訪れてみました。

ゆったりとした展示でしたが、当時は絵を鑑賞することの楽しみをよく分からずにいたので、流して見て終わりました。

世界観に浸れなかったのは、旅も終わる寂しさもあったのかあ。

日差しが出てきました。

とくに買うつもりも無かったのですが、何か思い出になるものは無いかと、売店に寄ってみました。

一村の絵を縮尺して飾りやすくしたような、大小様々なレプリカに目が止まりました。

先生のお気に入りの絵を教えてください、と聞いてみるとガラスケースの向こうの女性の方が、前村先生がお好きな絵はこれですよ、とすぐに示してくれたのが『不喰芋と蘇鐵(くわずいもとそてつ)』の絵でした。

先生は相変わらず、人を巻き込んでその気にさせるのが上手い。

1点購入させて頂いて帰ろうとしましたが、どうしても引っかかるので、その方にもう一度話しかけてみました。

あの、実は私は中学校で先生にお世話になった者で、、と話すや、カウンターのお二人が顔を合わせて、
『あれ、今日来られてる日だよね』

今なんと?
鹿児島に帰任したのでは?

『少々お待ちくださ……あ!』

『今通りましたよ』

!???

小さい男の子と、大人の男性と、テレビクルーがすぐ横を通って別の部屋に入って行いきました。

あれはまさしく、前村先生だ?本物だ!?

現実を理解できないままに、更に女性スタッフさんが
『お会いできるか聞いてみますね』

うわ話がトントン過ぎて、、

『大丈夫みたいですー』

こんなこと有る?

普段は鹿児島市内にいるのですが、今日は取材でたまたま来ていたと。

こんなこと有る?

先生はあの頃と変わらずに、どーんと構えて熱く迎えてくれました。私は身長少し伸びましたかね。よく、覚えてくれています。嬉しかった。19年ぶりですね。

私は、先生がマレーシアで我々の担任になった年齢になってました。これも偶然。

中学校を卒業して帰国してからはもっぱら年賀状のやり取りだけでしたが、『会う』って偉大だなと思いました。

何にも増して目の前には真実があるのが、『会う』なんだと。

この目、表情、声、振る舞い。変わらない。中学校時代に帰ったような気持ちの高揚。

中学2年生の初日、前村先生は挨拶もそこそこに黒板にでっかく『一期一会』と書きました。あのチョークの響く音はまだ覚えています。この人はヤバい人か?なんて本気でそう思ってました。

そして一期一会の意味を説いて、生徒の心をガッチリ掴んだと思います。

そんな先生とは、私が社会人になってからも年賀状でやりとりをさせてもらっていました。

その後の前村先生の活躍はもう本当に凄まじくて、あの一期一会を書いた日からまったく衰えていないように思えます。むしろ精力増してるような。

そして今日(2024/11/01)、そんな先生からお葉書をいただきました。

メールやSNS全盛の時代に、こうして手紙で連絡する行為。楽をしないというか、真面目すぎるというか、こういうところが行動の節々に現れて人々を魅了します。


さらに宛名面。

手書き!きっとたくさん居るであろう方々に、手書き?気が遠くなる。。。

そして22円切手1枚で済むところを、なぜ使わなかったのか!?そして貼り方もきっちりしてます先生!

こういうのって、『人となり』が現れるもので、先生のこのハガキは本当に心が掴まれる。

手書きは温かい。

お、先生をテレビで見られるのか。なぜか私が恥ずかしい気もするが、日曜日に見てみよう☺

後記

NHKプラスでネットで閲覧することができました。先生は番組のクライマックスで登場して、『不喰芋と蘇鐵』について語ります。

『くわずいもの中に、ぜんぶの過程が入っていることに気がついた』鳥肌が立ちました。

田中一村の小宇宙、改めて玄関のこの絵を見てみようと思いました。

そして、もっと大きな本物のこの絵に、国立美術館で対峙してみたい。


タイトル画像は奄美大島で咲いていたハイビスカス。

マレー語でブンガラヤ。マレーシアの国花です。

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