後ろ盾のない探偵稼業はしない方がいい【Shadows of Doubt】
謎の電話に指定されたアパートの一室に向かい、ノックに反応がないため部屋に侵入したところ、あなたは死体を発見してしまう。周囲の情報から死体が何者かをを特定、情報を求めて被害者の職場に潜入したところ、不審なメールの履歴を発見する。
聞き込みのため 被害者に忠告を促すメールの送り主の家に向かうが、そこでは第二の殺人が……。
【どんなゲームか?】
とあるSF犯罪都市を舞台とした、一人称視点の探偵シミュレーション。
冒頭のようなシナリオを、サンドボックスを舞台に延々と楽しめるすごいゲームだ。
複雑な暗号や犯行動機等はなく、謎解きを主軸に置いたミステリ作品には及ばないが、「あなたのせいで死体が増える殺人事件」を自動生成してくれる。
そのため、ロールプレイが得意なプレイヤーであれば世界に入り込んで緊迫感のある探偵ライフを楽しめる。ひとりひとりが生きているこの犯罪都市で すべての住民に話しかけられるし、すべてのパソコンを調べられるし、すべてのゴミ箱を漁ることができる。ふとニュースに目を向けると事件の情報が飛び込んで来るときもある。
ふと読んだレビューがちょっとした短編推理小説のようだったことが購入のきっかけだ。こんな記事読むよりもSteamのレビューを読んだほうがいい。
【捜査権のない探偵人生】
探偵家業は気楽ではない。プレイヤーが操作しているキャラクターは探偵だと思われるのだが、特に捜査権限を持っていないため、捜査には常に違法行為のリスクが伴う。
特に不法侵入はデフォルトなので、鍵開けをし、退路を確保し、カメラに気を配り、時に物音を抑えながら情報を集める必要がある。時にステルスゲームと紹介されているが、実際その側面が強い。
パッケージに描かれたのはネオン街輝く夜の通りを歩くトレンチコートの男…ビジュアルは究極のハードボイルド探偵※なのだが、ここは犯罪都市であり 残念ながら住人から見た主人公は不審者でしかない。違法行為が見つかった際は容赦なく銃弾が浴びせられる。銃社会の厳しさみたいなのはあるんだろうが、実際不法侵入程度で銃撃たれるものなの?
追ってきた人たちが他の警備員に撃たれたのか階段で勝手に転んだのか血まみれで倒れた画像、これこそ事件だろ。
また主人公は不法侵入をしていなくても不審者であり、聞き込みは基本的に奮わない。ここは犯罪都市、殺人鬼が闊歩し簡単に命が奪われる世界…無料で自己紹介をしてくれる人はまずおらず、老若男女冷たい反応を返してくる。
最近やった探偵ゲームの主人公がホームズやポアロだったので、住民の冷たさには面食らうが、実績のない探偵に信用などあるはずもなく これが探偵のリアルなのかもしれない。
まあトレンチコートの知らない不審者にこんなことされたら冷たくなるのも道理だろう。
探偵とは常に命と隣り合わせのシビアな職業だ。法を犯す覚悟・撃たれる覚悟・聞き込みを無視され続ける覚悟をもつ者は犯罪都市に挑め。
【この箱庭で生きていく】
犯罪都市としきりに言っているが、このようなぼかした表現をすることには理由がある。なんと事件が自動生成されるだけではなく、舞台となる街も自動生成なのだ。それどころか多少のカスタマイズが出来る。
カスタマイズは街の名称から、大きさや人口規模を決める大雑把なものから、通りの名前を決めたり、施設の配置を変更したりすることができる。
「*時に**通りに行け」という指令があるため通りの名前を自分で付けると楽になる。
つまりどういうことか?やろうと思えば市役所が4~5軒並ぶ公務員だらけの街をつくることも出来る(ぜんぶ市役所にするとさすがに怒られる)。これをやると写真をヒントに進める捜査の難易度が上がる。
正直作れる街のパターンは多くは無いのだが、このゲームはアップデートに積極的であり、今後の拡張性が期待できる。細かいところでは状態異常のオンオフが任意で行えたりもする。
そしてこのゲームの街並みはハッキリ言って最高だ。
探偵稼業に身を窶さずとも この街で生活できる、という一点だけでも価値のある作品だと思う。
薄暗い空に溶ける遠景がすばらしい
ふと見上げると雪が降っていたり
雨が降ると地面が濡れ、住人もきちんと傘をさす。ネオンが多いのだが光の処理も美しい。
そんな感じ。
非常に面白いし ある人にとっては「こんなゲームが欲しかった、永遠に楽しめる世界最高のゲーム」だと思う。世界最高のゲームの風格を感じた人はぜひ遊んでみてほしい。