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写真を撮る"だけ"のゲームをやろう【ウムランギジェネレーション】
はじめに
まず このゲームは、万人に自信を持って勧められるゲームではない。実際 筆者は一度積んでいたものを最近クリアした。しかしそれが衝撃的な体験だったので、こうして筆をとっている。
このゲームとの出会いは Switch版の発売時、トレーラーを見てその雰囲気とサウンドとローポリに骨抜きにされ購入した。
トレーラーを見たか?これだけで グラフィックとサウンドのセンスの良さが窺える。
この記事はネタバレを含むが、ストーリーは言葉では語られず プレイヤーの感性の中にしか存在しない。記事に書かれていることは間違っているかもしれないし、参考にならない。そのため 未プレイで記事を読んでしまったとしても、気になったらぜひウムランギジェネレーションを手に取ってほしい。
写真を撮る「だけ」のゲーム?
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このゲームは、終末が目前に迫る世界で 若者が写真を撮るゲームだ。FPSで銃を撃つような感覚で、カメラを構え、シャッターを切る。
写真を撮る動機として、箱庭のステージにはいくつかのお題が与えられる。「4本のスプレー缶を撮れ」とか「望遠レンズで犬を撮れ」とか、そんなお題だ。そして撮影した写真にはいくらかの価値が与えられる。
お題を全て撮影して、デリバリーポイントに届ける事でゴールとなるが、別にお題以外の写真も好きなように撮っていい。
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その他のゲーム性としては、フィルムを収集したり、撮影してはいけないオブジェクトがあったり、目標タイムがある。レンズや加工の種類はステージクリアに応じて増えていく。それでも できることは 写真を撮る「だけ」だ。
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目標タイムを超過しても、落下したり禁止エリアに立ち入っても、スタート地点に戻されるだけでペナルティはない。
筆者は「いろいろできるゲーム」を当然好んでいるが、「これしかできないゲーム」のこともかなり好きだ。これはそういう、写真を撮ることを極めたゲームである。
そのジャンルの王座に君臨するのが 夢の世界を歩く"だけ"のゲームである「LSD」だ。
初めに遊んだ時は、マップを記録し フィルムの位置や撮影スポットをメモしながらひとつのステージを完全クリアしようとして、それが負担でやめた。そのため今回は肩の力を抜いて遊んでいる。
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写真を撮る「だけ」のゲーム!
このゲームの真髄に触れたのは、既にクリアしたステージの2回目が始まったとき。以前撮影をした勝手知ったるステージが戦場に変貌した姿を見たときだった。
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いくつかの足場は崩壊し、敵が迫っている。友人は怪我を負った兵士の介助をしている。意識があるようには見えず、もしかしたら兵士は死ぬのかもしれない。そんな中でプレイヤーができることは 変わらず 写真を撮る「だけ」だ。
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果たして主人公は どんな気持ちで写真を撮り続けているのだろうか。使命感か?それとも諦念か?はたまた生活のためだろうか?舞台を見れば見るほどそんな考えが駆け巡る。
冒頭で述べた「撮影してはいけないオブジェクト」とは、カツオノエボシというクラゲなのだが、チュートリアルで「なぜカツオノエボシを撮影してはいけないかは 遊べば分かる」と言われる。
はじめ このゲームにはテキストがほとんどないため「どうせ説明されないだろう」と思っていた。しかし これも遊んでいけば何となく分かっていく。
ファインダー越しに世界を見た
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さて このゲーム最大の問題は、攻略情報が整備されてないところだ。ターゲットが大雑把な場合は ざっくり撮影していると引っかかることもある※のだが、限定的なオブジェクトは雑な探索では発見できない。
※例えば「カラーコーン4本」を指定されたら3本しか見つからなくともざっくりその範囲を撮影すると遠景にひっかかっていたりする
言葉でのみ説明されるため お題が分かりにくかったりもする。グラスがグラスに見えず(番号札かと思った)、かなりの時間を費やしたりもした。
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そうは言いながらも まあ絶望的な詰まりを感じることなく順調にステージを進めていた筆者を30分足止めしたのが「ブロークンハートのペンダント」だった。
ステージにいる人全員の胸元は見た、ポスターやパソコンの中に描画されている人もチェックした、しかしペンダントが見つからない。
一縷の望みを込め「Umurangi Generation Heart Pendant」で検索したところ、Tumblrの記事がヒットした。(なので詰まったら英語で検索してみると何とかなるかも、あと筆者はクリアしてるのでここで聞いてくれ)
どうも死体袋の側に落ちている金のペンダントらしい。ペンダントを探すのに床を見る発想は無かったので見逃している可能性も高い。鉄製の床も見覚えがある。このTumblr記事は筆者にとっての救世主だ…!
………
……
…
結果から言うと床を頼りにした探索では死体袋は見つからなかった。
ただ、途方に暮れて「違う床の場所も見るか…」とベッドが並ぶ部屋に入ったところ、視界に金色のペンダントが飛び込んできた。
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泣いている?女性?が腰掛けているベッドに吊るされたペンダントの片割れ。頭に「死体袋の傍にあるペンダント」が刷り込まれていたため、つい「ペンダントはこの人のもので、恋人が亡くなって悲しいんでいるんだろうな…」という背景が浮かんで来た。
これはすごい体験だ。
ミッションをサクッとクリアしても、攻略通りに死体袋を見つけても、攻略を一切見ずに粘って自力でペンダントを発見しても、この感情を味わうことはできなかっただろう。
お題で詰まって、攻略情報を探して、その上で違う場所にあるペンダントを見つけたからこそ 筆者はこの物語に辿り着いたのだ。
例示した描写は世界観の一端にしかすぎない。筆者が素通りしてしまった情緒でも、他のプレイヤーであれば掬い上げることができるかもしれない。この奥行きの余地こそがウムランギジェネレーションなのだ。
気に入った写真を貼って終わる
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この友人が可愛いため、よく被写体に選ばれていた。
ゲーム自体は一回詰んだが、BGMが好きでサントラを聴いていたため、後半のステージでは知ってる曲ラッシュにテンションが上がった(そういう楽しみ方もある)。
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作中のバーコードはスキャンすると読み取れる情報が何種類かあるらしい。
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随所にいるオレンジの服の作業員?が好き。結構NPCが共通しており、防護マスクをつけた親子とかを何ステージにも渡り個人的に撮影していた。
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明度とコントラスト上げてちょっとだけブラーかけてぐわっと色収差…みたいな加工ばかりしている。魚眼レンズがあるのだが、ピントが難しくなかなかいい写真が撮れない。
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クリア後に解放されるクリエイティブモードでは時間帯などを変え、さらに自由な撮影を行うことができる。上の画像は夜景(デフォルト)なのだが、時間帯を変えたら全く違う景色になった。
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エンディング最後のテロップで今までフォトバウンティでもらっていたお小遣いが過ぎり 結構ガツンときた。
HavenとBoogiebitchが好き