最強占い師の占いは全て必然【The Cosmic Wheel Sisterhood】
評判を目にしてコンセプトに惹かれて遊んだが非常に面白かった。多くの人に遊んでほしいとの思いから、2周目を遊びながら記事を書いた。大まかに「未プレイ者向けレビュー(ネタバレなし)」+「既プレイ者向け感想(ネタバレ全開)」の2部構成となる。
The Cosmic Wheel Sisterhoodを遊んでほしい
強烈な占いの力を持つ主人公:魔女のフォルトゥーナは、自分の属するコミュニティの崩壊を予言したために、1000年の流刑を課されていた。
タロットカードを没収され、宇宙の片隅で200年経った頃、孤独の中で彼女は、禁忌とされるベヒモスの召喚を行い、その力を借りて新たなカードを生み出した。
ベヒモスの力を借り何を得たいか、そのために何を代償とするのか、カードによる占いの結果をどう受け止めるか…あらゆる選択権はプレイヤーが握っている。
「絶対に当たる」占いを主軸に物語は動いていく。どのように運命を転がしてもいいが、その責任はしっかりと負うことになる。
1周5時間程度のアドベンチャーゲーム。選択肢による展開の幅が広いため周回に耐える作りになっている。主人公の思想も選択の幅が広い(最近では一番共感できる主人公だった)ので、ぜひ緊張感をもって一つ一つの選択肢に挑み、「自分だけのゲーム体験」を楽しんで欲しい。
筆者は1周目は真剣にプレイしたが、破滅的な選択肢を選んでもそれはそれで楽しめるだろう。
どこがいいか、何が出来るか
・最強オリカで数奇な運命をぶっ飛ばせ
本作の魅力の一つはカード作りにある。まずは4元素からなるエネルギーの残量と相談しながら、「背景」「主要素(主にキャラクター)」「副要素(主に道具)」を選ぶ。一枚絵のどこをカードの背景とするか、主要素・副要素から指定された必須のパーツ+追加パーツをどう配置するかによって、オリジナルカードを作ることが出来る。
基本的なパーツは綺麗なドットで描かれているため、適当に配置してもそれっぽいものが作れる。
しっくりくる組み合わせを模索し、いい占いカードを作ってもいいし、どうすれば面白くなるかを追求し、大喜利に努めてもいい。
面倒くさければパーツの配置はデフォルトのままで問題ない(多分…)。
筆者はSM女王のパーツを見た瞬間「最高のゲームだ…」と感嘆を漏らした。
・最強の占いで相手をコントロールしろ
主人公は最強の占い師であるため、100%の精度で占いを的中させることが出来る。
自作の最強デッキをシャッフルしカードを引く、それをもとに占いを行う。一般的なタロット占いに似ているが、正位置・逆位置の概念はない。
カード1枚の解釈は広く、占いの結果の選択肢はカードの持つ元素エネルギーに依存しており、一連の作業には「ゲームからコントロールされている」感触は一切ない。
つまり、占い師シミュレーターとしてもそれなりの強度がある。
・インタラクティブな読書で差をつけろ
個人的な推しポイント。時間消費をせずに本を読むことができるが、10冊程度ある本はいずれも内容が面白く、哲学的・道徳的・恋愛物・仮想世界・悪魔召喚…など話のバリエーションが多い。
いかにも人間が魔女になる世界の小説という味わいで、世界観の掘り下げに一役買っている。
極めつけはこの本も内容が操作可能であるということ。占いの結果が遠い未来に返ってくる本編の選択肢とは違い、即時に内容が反映される。
選択により物語が変化する面白味をインスタントに味わうことができるのが読書だ。ちなみに本の他に勉強的な読み物もある!
・エビみたいなベヒモスと交流しよう
推しポイントその2。
200年の孤独を味わってきた主人公と、それ以上の長期間封印されていたベヒモスのエイブラマーは一蓮托生のパートナーとなる。エイブラマーは召喚すら禁忌である上位存在なのだが、軽口が飛び交い、よく笑い、ユーモラスで親しみやすい。一方で小娘扱いしている主人公の占いの力を恐れているような一面もある。つまり会話していてかなり楽しい相手だ。おちゃめな上位存在はかなりツボを心得た存在だろう。
筆者は本作で一番エイブラマーが好きなので、ぜひエイブラマーとの会話を楽しんで欲しい。
(以下、ネタバレを含む)
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初周雑感
1周目は丁寧に遊ぼうと思い、「畏れられたい」→「力」→「自分自身」→「魔女の不死性」を選択。
中盤以降、リーダー選挙に巻き込まれていくのはデトロイトのマーカスくらい「期待していない方向性に進んでるな…」と感じたが最後の討論は好き。
フォルトゥーナの目的を知っているわけではない(ので汎用性の高い「力」を求めた)が、別にリーダーになって世界を変えたいという意思や責任は感じなかった。
何を代償にしてもまあいいか…と思っていたが、「新リーダーは前リーダーの遺体を取り込みスーパーリーダーとなる」というマニュフェストを掲げた瞬間、己が不死性を犠牲にすることが重荷となった、ここで面白味を感じた。
選挙ポスターで髑髏を連打をしたところ、魔女のモチーフではあるけどあまり良くないよと窘められて面白かった。
初周の選挙客イベントは探検者とポエムが好感触で、対抗馬の邪魔をするか?を断って評価を落とし、高齢の魔女を追い返しまた評価を落とした。
全部パクった上で敵対候補の自分と同じマニュフェスト批難とかもやってみたい(※やった→やんわり注意された)。
クライマックスの占いで解決していくシーン、好みの選択肢であったため「この世界はゲーム世界である」と定義させたが逆にこれを選ばないと彼女らはゲーム世界の人物ではないということになるのかもしれない。
カードの解釈で別の次元を生成していくのはすごい手腕だ。
エイブラマーの懐柔を狙っていたが失敗した。検索した範囲では未実装らしいが、最後に運命の輪を引くとエイブラマーと会えるパターンがあるらしい。
ベヒモスと魔女が共存する世界を描いたのは己だが、よく考えたらもう自分は魔女じゃないじゃん!と思うとベヒモスに暗い未来を押し付けるのも面白そうだ。
議場に向かうシーン、「炎の契約が発動したらお前は私を恨むようになるだろう」という話をしている時にエラー落ちし、一瞬これが炎の契約かと勘違いした。(ゲームを遊ぶ権利を奪われた的な?2周目も同じタイミングで落ちた)
筆者のエンディングでは、フォルトゥーナがエイブラマーを恨んでしまったのが心残り。プレイヤー目線では不死性へのこだわりはなかったので、終盤フォルトゥーナが愚図る選択肢しかなかったのは唯一の不満だ。
周回のあれこれ
2周目は滅茶苦茶に壊そうと考え、水の契約で「恋愛」を望み炎の契約で「最愛の人」を捧げると答えたら「契約で作った恋人を捧げる気か!?」とエイブラマーに引かれてて面白かった。
これが姉だったら躊躇うかもしれないが、数時間で絆の深まった恋人を悲しむのはだいぶ無理があると思う
※唯一捧げたら悲しいのは姉かな…と思っていたが、そもそも姉は死に方を選べるので安心(?)だ。
恋人はテアになるかと読んでいたが1周目でベヒモスと同化して処刑されたグレーテが生存し、急に恋人になって同棲しはじめた…こいつが死んでも絶対「どうでもいい死」になるだろ!?
占いではグレーテが同化するルートの選択肢も表示されていたので、その他が恋人になる可能性もあるのかもしれない。あと恋愛を望まず、人を遠ざけた場合に「大切な人」が誰になるかだな…。
(本当はエイブラマーを最愛の人にしてエイブラマーを捧げる無法コンボを成立させたい)
巡礼者の能力でデッキ圧縮できるのを2周目になって知った。
1周目とは違った展開にコントロールできるし、思ったより選挙活動パートは怠くない。最初に運命を決定付ければ適当でいいので気が楽だ。今後余裕があればダリア等が勝つルート取りも見たい。
なぜ女性だけが魔女になれるのか
ダリア・ジャスミンとの会話で登場し、おそらく明確な答えの決定づけられていない問いについて、それでも面白い命題だと思ったので少し考える。
・魔女狩りの文化が魔女の起源だから説
→地球外出身の魔女がいること、中世よりも古い時代からの魔女がいることから違う。これと同様に原因を文化に求めるのは無理があると考える。
・女性の身体的特徴が魔女の要件説
→トウガラシの魔女がいるため違う、また外宇宙の生物が地球と同じ基準で雌雄を決定しているのか(そもそも自然発生する知能生物はすべて2様の性別を獲得するのか)?という疑問が残る。
筆者個人の考えだと、身体的傾向に魔力が宿るのは理解できても精神的傾向に魔力が宿るのは納得しがたい。
・魔女になりたいと願った者が魔女になるから説
→そもそも魔女=女性という先入観があるため魔女は女性のみなのかもしれない
・魔力が強いと性自認が女性になる説
→いろいろ考えていくと、一番合点のいく辻褄合わせはこうなのではないか?と思うがあまり好きな考え方ではない。
・性別は繁殖のために後天的に与えられた区分であり、元来全ての生命は女性だよ説
→地球外規模で「女性のみが魔女になれる」のには、こういう強い思想が裏にある気もする。鹿の民が牡鹿に見える点も含め。
・宇宙の意志がそう定めているため説
→選択肢では「宇宙が不公平だから」を上記のように捉え、これを選んだ。
つまり「このゲームを作った人がそう定めただけで、今体験している魔女の世界は一つの可能性次元に過ぎないから」という答えだ。
もしかしたらしゃらくさい理由があるのかもしれないが、フォルトゥーナが選べる選択肢として、宇宙の意志があったのが個人的に好きだった。
その他雑感
・突如襲い掛かる濃厚なマイアミ空間
有名作はそのままネタにされている傾向にあり、ゲーマー心をくすぐる。マインクラフトを真剣に遊べば君も魔女になれるかもしれない。
そんな中、パブリッシャーが同じ故にホットラインマイアミが話題にされているのが嬉しかった。「ホットラインマイアミ3が発売されている世界」はシリーズファンなら笑える設定だろう。
というか50の祝福パーカーを着た真のアメリカ人、真のマイアミファンが出てきて熱狂した。
絶対ニワトリヘッドのテクノ魔女にしたかったし、こいつが全然マイアミ関係なさそうなトウガラシガーデン魔女になるの何なんだよ。
・すべてはフォルトゥーナの夢なのか
選挙期間中に届く差出人不明の手紙から派生する、姉とエヴァが、海から引き揚げたフォルトゥーナを起こすシーン。シーンから引き戻したエイブラマー曰く「対抗馬による妨害」らしいが、誰が起こしたのかは不明だ。
このシーンに突入した瞬間、そういう方向に展開するのか…!?と焦ったが、以降そういったシーンはなく、本当に「情報を引き出すために神秘性を失う夢を見させられた」だけだったようだ。
本当にそうか?
フラグを拾っていけば、そういう展開もするんじゃないか?という期待がこのゲームにはある。プレイヤーが観測した事のみが真実なのだ。
・選択肢を選ぶと未来が決定するということ
「100%的中する占い」と「観測していない未来や過去を占いの範囲で確定させる能力」の間には、ゲームの処理的には何の違いもないはずだが、受け手としては劇的な違いがある。それを超常的な能力と設定するのはゲーム体験を楽しくさせる発明だと思った。
・そしてまたゲームをリセットする
最後の最後の占いにより、フォルトゥーナはこの結末を受け入れるか、運命をはじめからやり直すかを迫られる。おそらく納得のいく結末などないのだが、ここで周回を選んだ時のエイブラマーの反応が非常に好みだった。
・運命の書き手を凌駕する最強のバグ
1周目で「私の不死性」を捧げ、2周目に「恋人」からの「一番大切な人」を捧げる外道コンボを思いついたフォルトゥーナを襲ったのは、2周目も突然「私の不死性」を奪われるという意外な運命だった。
特に好きでもない恋人が死んでも何も思わないだろ…と思い、恋人であるグレーテが意外にも死に対して前のめりだったのでまあ、頑張って…と肩の力を抜いていたところに襲い掛かる死刑宣告である。望み通り滅茶苦茶な2周目になって爆笑した。
…1周目の選択肢を記憶してしまうバグについては認知していたが、そこで指摘されていた「ピザにペパロニとチーズを乗せたか?」を突破していたため完全に油断していた。
ニューゲームにより回避できる(と思いたい)が、前述の通りフォルトゥーナの運命をやり直す際のエイブラマーが素晴らしいので悩ましい。
あと2周目は高齢の魔女を占いで誘導し脱落させたのだが、議論中にちょいちょい票が入っていって面白かった。
参考にさせていただいた記事
↑ゲームの構造の話についてはこちら 読み応えがあります
↑バグについてはこちら
元々はエイブラマーのルートについて調べていたらこのnoteに辿り着いた
両noteとも、プレイの理由が「発売元の前作が良かったので」だったので前作も気になった。
マイカード名作選
作ったカードを披露!
記念すべき一作目、最初の2枚は使える元素が限られているので誰が作っても同じようになる
2作目にしてギアの加速を感じる。過度な配置という「いつもの」の色が出てくる
頑張ってる方面でお気に入りかもしれない
SM女王を見た瞬間から絶対に使いたいと思っていたが、手にした時の興奮を抑えられなかった
引いたら笑ってしまうカード筆頭
パーツ大喜利的には気に入っている
パラノマサイトで知った酒。追加パーツが4腕の男を作れと言わんばかりだったので宇宙の意志に従う
まともな方のお気に入り。戦場に宇宙飛行士という組み合わせ的にも好き
割と良さそうな意味を持ったカードなのが絵からは伝わってこない。ピアノ弾いてる人をやりたかった
お気に入り 剣持ってる人はほぼデフォルトパーツを手本通りに配置してるはずなのだが お手本は普通なのにこれは奇妙に見える
足を乗せてるところがツボ
花を燃やす花屋
名称もアルカナなどの組み合わせで決まるのだろうが 結構名前の意味がわからないものも出来てしまう、これは割とお気に入り
クリアパーツの使い方にようやく気付いた
このロボみたいなの元々が割と謎
SM女王はいつでも面白い…おそらく背景とパーツから付いた名前だと思うのだが、明らかに人物に引っ張られている名称もあり、命名の法則は気になるところ
そんな感じ
かなり好きなゲームだった