【Arctic Eggs】富士山麓オウム焼く【ゲーム雑感】
11月になり急激に肌寒くなってきたこの頃。何をしていたかと聞かれれば、北極で一心不乱に目玉焼きを焼いていた。
Arctic … 北極、Eggs … タマゴ。つまりそういう作品だ。ゆえに北極でタマゴを焼いている。なぜか?この社会から脱走しようとした罰により、歩行と調理しかできない身体になったからだ。
「外に出る」望みを正当に叶えるためには「六胃聖」と呼ばれる権力者の許可が必要だ。六胃聖と謁見するには、自らの仕事を全うし、空腹なひとびとの腹を満たす必要がある。そういうわけで、願いを叶えるため、フライパンを振り回す。
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いわゆる「調理しかできないゲーム」で、ひたすら飢えた人を探してはタマゴを焼くことが非常にドラマチックな作品だ。たぶん筆者と趣味が似ている人は、チュートリアル(すっとはじまるので良い)を終え、はじめて住民にタマゴを振る舞うあたりで、この作品のことを好きになるだろう。
寒さが画面越しに伝わってくるような空気感と 落ち着きのある音楽につつまれ、タマゴを焼く。実は焼くのはタマゴだけでなく、人々のリクエストに応じていろいろなものを焼くことになるが、その大きさ・重さ・素材によってフライパン上の挙動が異なる。
生きたままの食材や食材じゃないものが元気よく飛び出していくのを阻みながらタマゴを焼く日もある。これらの挙動のシビアかつリアルさが、ゲームのおもしろさに繋がっている。
筆者は北極の居住区の情景がとにかく好きが、それ以上に 人に話しかけた時のカメラワークが好きだった。あちこち視点が移り変わり、相手の発言を表示してくれる。カフェで踊っている人に話しかけた時なんてカメラが常に動き回るものだから笑ってしまった。
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クリア後のストレートな感想は「ラストバトルがこれまでの集大成かつ難易度は控えめで燃えた」だったのでこの世で一番Arctic Eggsを理解してないかもしれない。燃えるラストバトルを求めるやつは北極に来い。
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そんな感じだ。北極のやつらは気のいい奴らだし、景色もいいし、君には夢と目的がある。北極でタマゴを焼いたか?まだ焼いてないやつは、この物理エンジンを乗りこなしてみてくれ。
攻略の話(1)
とはいえこの世界の物理法則は難しく、カジュアルに勧められて遊んでみたものの うまくタマゴが焼けなくて途方に暮れるかもしれない。攻略面で詰まるひとの支えに少しでもなりたいのでアドバイスを書く。
筆者は軟弱者なので、タマゴの挙動に絶望し……【Arctic Eggs 攻略】と調べたが、ダイレクトな情報が出てこなかった。それがこのnoteが書かれた理由でもある。
筆者はなんとか自分で道を見つけたが、見つけられず迷っている人は助けにしてほしい。もちろん自分で道を見つけるのも楽しいので、そういうのが好きなやつはこの先を読まなくていい。
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中華鍋を使え
オプションメニューからいつでも「難易度」の項目にアクセスできる。よくあるゲームのようにEasyとかHardとかではなく、中華鍋・通常・鉄板の3種類を選ばされ はじめは驚くかもしれない。
中華鍋で目玉焼きを焼くという話はあまり聞かないが、ここは北極、日本のキッチンでの常識は通じないと思った方がいい。
中華鍋は火が通りやすく、加熱性も高いので料理をするのに適している。中華鍋を選ぶのを恥じることはない。
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スティック感度を調整しろ
調理を続けていると、わずかに手首をスナップさせただけなのに、タマゴがポーンと飛び出す…そういう事が起こる。幸い北極に暮らす人々は、閉塞的な環境にいながらも寛容だ。文句の一つも言わず、次のタマゴが焼けるのをじっと待ってくれる。ただ自分が 恥ずかしく、いたたまれない思いをするだけだ。
そんな状況をすこしでも解決したいのであれば、スティック感度を調整しろ。これは自分の体験だが、感度を下げた方が思うように調理ができた。そして調整はいつでもできる。
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実績を見ろ
筆者はゲームをやっていて難易度に絶望を感じた時、よく実績を見る。すると何%のひとが達成しているという情報が分かり…不可能ではないと勇気を奮い立たせられる。
時にはパーセンテージを見てさらに絶望が深まることもあるが、Arctic Eggsは勇気が湧く方の割合なので心の支えにしてほしい。
Arctic Eggsの実績割合のいいところはエリアごとの割合が横並びなこと。つまりひとつのエリアをクリアできたのなら他のエリアも同じくらいの労力でやれるはずだ。
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根気があれば大体なんとかなるけどならないやつは頑張れ
制限時間がないお題については、黙々と挑めばいつか達成できる。ビンは設置時に立てて置くといいが、倒してもクリアできた。レーションは意外と待ってればなんとかなる。
制限時間のある個別の難しいやつについては別途コツを書くが、ネタバレも含まれるのでちょっと隔離する。ネタバレを恐れるやつはここまでの記述を支えに頑張ってほしい。
※※※以下の記事はネタバレを含む
攻略の話(2)
サイコロステーキ
最初にこれを見た時、制限時間に追われながら肉の6面を焼くなんて無理だよ…!そう思った。監獄の実績達成率がやや低いのはこいつのせいだろう。
この肉に限っては、手首のスナップを使うのではなく、フライパンの傾斜に押し付け転がすようにすると1面ずつ焼きやすい。鉄板でどう焼くかは知らん。
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タバコ+ショットグラス
ここが最難関だった。氷をショットグラスに入れなければ土俵に上がれないが、慎重に氷を投入しているとタバコの制限時間に間に合わない。ゆえに必勝法を考えたので記したい。
タバコを端に落とす
5連打する(重ねたショットグラスに氷が3つ入る)
氷が入ったグラスが落下したら残りの氷3つを慎重に入れる
落ち着いてタマゴを焼く
タマゴをひっくり返す際に氷を零してしまっても、急いで裏面を焼けば間に合うこともある。自分のクリアテイクは氷を零した回だった。大胆に行け。
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クジラ
スティック感度を調整する場合、最後に目玉焼きを飛ばすフェーズが格段に難しくなる。まったく飛んでいかない。ここだけ感度を高めに設定しなおすと良い。
「エベレスト頂上でタマゴは焼ける?」
作中で繰り返し登場するこのフレーズは、状況から推察するに自分が発言しているものを相手が反復しているらしい。
問うたびにいろいろな理屈で「ムリだと思う理由」や「目的を達成するための抜け道」が語られる。筆者はこのバリエーションが好きだった。片面を焼いているうちにもう一面が凍り付くだの、あらかじめ焼いたものを持っていけばいいだのいろいろなことを言われるが、彼は納得していない。
そして最終的にプレイヤーはエベレスト山頂へ辿り着く。奇妙な味付けのようでいて、純粋でまっすぐな願いと、その成就の物語なのだ。
すこし気になって、エベレスト山頂でタマゴが焼けるか調べ、茹でるのは無理とあるが焼く方はどうなんだろうな…?と考えていたりしたが、この作品において、実際に焼けるかどうかは問題ではない。
いろいろな障害を振り切ってでも追究したい問いがあり、それをモチベーションに挫折を乗り越え、いまエベレストに立っていることが重要なのだ。
この頃どれくらい「疑問を抱くこと」を忘れていただろう。疑問に思ったことを 手間をかけて実証せず、調べた借り物の知識で解決してきただろう。
製作者がそれを意図して作った作品かは知らないが、わからないことに目を向けて、それを追い求める人生は羨ましい。憧れながら、たぶん筆者にはもうそんな生き方はできない。アメンボがどこから水たまりを見つけて来るかを考えることすら少なくなった。
そういう意味で非常に胸に残るエンディングだった。
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