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クラフトビールを飲みに行こう② #羽田バル

年度の終わりは羽田バルに行きました。既に知名度あるビアバルですが、最近新たな展開もあり面白い、という話。

年度が変わった。ここ最近は毎度「あっという間の一年だった」という感想を抱くのが常だったが、昨年度は長かった。理由は言うまでもなく忌々しい件のウィルスのせいで、したがって、長かったのみならず色々なことが抑制されて薄味だった。野球観戦にも映画にも美術館にも行きづらい、何より飲み屋にも長居できない。人類全員が2020年一年分の寿命を延ばしてもらう、くらいがフェアだと思う。来年の3月にも同じ事を言っていないことを願うばかりだ。

さて、年度の終わりであるからには、打上げをしなくてはならない。とはいえ、会社の飲み会が苦痛だという人も多いだろうし、寧ろそのほうが多数派だという調査もあった。唯一その点において、昨年以来の状況を好ましく思う人もいるだろう。自分も根本が外向的な人間でないので、共感する部分もあり、一方で酒を介してこそ打開できる閉塞状況も存在するように思う。でも、それは自身がアルコールを楽しめる人間だからだろう。

折角四月なので、オジサンらしく今週から社会人になった方に伝えるとすれば、「飲みニュケーション」概念に限らず「あなたのため」という美名の下で行われる強制を信じる必要はないし、あなたが客観的には下っ端のぺーぺーであろうと、内心と業務時間外は尊重されるべきだということだ。自分に対しても他者に対しても、そこを間違えると変なことになる。尤も、いまの20代そこそこの人達は、そんなこと言われるまでもなくスマートに泳ぎ抜いていくのかもしれない。

話が逸れてしまったが、いずれにせよ、年度の終わりであるからには、打上げをしなくてはならない。これは自分にとって必定だ。会社の人間とも友人とも一緒でなくていい。体調によっては多分アルコール抜きでもいい。ただ、ヌルかろうとロー・パフォーマーだろうと、職業人として一年間生存した自分を祝い労う必要がある。こういう時代、こういう社会では尚更だ。ゲームセットとプレイボールがあるからこそ、長いシーズンを戦い抜くことができる(と、小4以来野球経験のない自分が言っても説得力皆無だろうが)。

変な言い方だが、恐らく歴史的に、蒲田は労働する人を労ってきた町だ。江戸時代から麦の加工、WWⅡ以前から工業が発展をみた地域で、現在大田区に存在する町工場の数は約3,400。都内でも有数の「ものづくり」の街といえる。特に金属加工は名高く、よく飲食店で見かける足踏み式のアルコール散布スタンドも、大田区産らしい。

工業発展に伴って繁華街も盛り上がるのは(今後はともかく)世の常で、この街には歴代の職人、エンジニア、営業、事務スタッフ諸々を癒してきた、老舗の味のある居酒屋さんが多い。自分も大学生時代は全く縁がなかったエリアだが、会社員渡世に就いて以来、昭和叩き上げの上司に旨いハムカツの店を教えられたり、同好の士にクジラと煮込み料理の店を教えてもらったりして現在に至る。多分、海と公営賭場が近いこの地域の空気は、労働する人を自由にする。つかの間にせよ。

だからこそ今このとき...というわけでは決してないが、昨年度の締めはJR蒲田駅から数分の距離に位置する「羽田バル」で迎えることができた。'16年オープンの同クラフトビール・バルは、50年来のお店も少なくない同エリアで確とした存在感を放ち、東京のクラフトビールファンには既に親しんでいる方も多いと思う。自分は様々なタイミングから今まで行けてなかったが、ようやく訪れることができた。それだけでも、年度末のバタバタが多少報われた気がする。

低層ビルの2階にある同店を訪れて目に入るのは、白を基調としつつ調度にはウッディな暖かみのある、ゆったりした店内だ。BGMもカントリーやガレージロック・リバイバル風を中心として、店内を穏やかな雰囲気が包んでいる。個人経営のカフェのようにも見え、都心やベイエリアのビアバーでは中々出せない趣に、それだけで少し嬉しくなる。来店時、平日ということもあり他のお客さんは2組、比較的静かな環境だったが、多少ガヤガヤしても嫌な感じはしなかっただろう。バス停みたいなロゴもナイスだ。

Zビール / 羽田麦酒

羽田バルは、元々区内の羽田麦酒(羽田ブルワリー)と提携し、同社のビールを提供することを主旨としてスタートしたクラフトビール・バルだ。従って現時点でも、タップの過半数は羽田麦酒のビール。常設は5-6タップの模様で、他の銘柄も東京のクラフトビールが占める。都内では日本各地のクラフトビールが楽しめる昨今、逆に "東京縛り" というのは珍しい気がして、面白い。

今回いただいた一杯目は、 Zビール という名前のペールエール。地元大田区のバスケットボールチーム、アースフレンズ東京Z(B.LEAGUE B2リーグ)とコラボしたビールだ。バスケットリーグも年々盛り上がっている印象があるが、クラフトビールに限らずローカルの産品を巻き込んで発展していくのは素晴らしい。

肝心の味はというと、ホップの個性はアーシー(土っぽさ)、ハーバル(ハーブっぽさ)。モルトの印象はカラメル感が先行し、パッと甘いがスッキリ切れる印象。炭酸は弱めで、ゴクゴクいっても飲み疲れをしない。私見だが、これはパイントで飲むべきビールだ。コラボビールではあるが、オールドスクールな英国パブ流ペールエールの美点がきっちり出ていて、飲んでいて充足感がある。多様性の時代、コラボ先のバスケット選手に英国紳士でも居たのだろうか?

冗談はさておき、特徴的だが間違いなく楽しめるビールの一つに間違いない。羽田麦酒は他にも多様なスタイル、更には最近はクラフトジンにも着手しているようで、是非動向を追いたい。

天空 ~Tenku~ / HANEDA SKY BREWING

こちらは蒲田・羽田バルを運営する会社が、2店舗目としてオープンしたブルーパブ、羽田スカイブルーイングで醸造されるビールだ。同ブルーパブは天空橋の複合施設、羽田イノベーションシティに立地する。蒲田に続く2店舗目として飲食業態でオープンしたのち、醸造開始は昨年末、まさに新進気鋭のブルワリーだ。

敏腕大屋社長が醸造を開始するまでの経緯等については下記インタビュー記事を参照されたいが、飲み手の立場から話を総合するとこうだ。羽田バルは羽田麦酒だけでなく、自社ブランドの羽田スカイブルーイングも加えた、2つのブルワリーを主力タップとして持っているクラフトビール・バルといえる。

こちらのビールはAlc. 6% のIPA。ホップ・キャラクターは柑橘系に寄っていて、飲み口も重くなくグイグイ進めることができる。色も明るい。空港第三ターミナル直結のスポットで供されているだけあって、都会的で開明的なデザイン、ムードを湛えたIPAだ。食事ではピザやプロシュートに合いそう。飛行機が飛び立つ羽田の青空を眺めながら一杯やるのも乙かもしれない。というか、ある程度そういうシチュエーションを想定してデザインされたビールにも思える。想像だけれど。

新しいブルワリーだけあって、今後の展開には非常に期待が持てる。各種メディア露出だけでなく、近隣の武蔵小山の名前を冠したビールや地元サッカーチームとのコラボの話が出てきている。平日は天空橋まで行きづらい方も、アクセスの良い蒲田で飲めれば好都合だ。

おつまみでいただいたのはイケだれホルモン。大田区地元の調味料「秘伝のイケだれ」を使ったホルモン炒めだ。トマト味も効いていて美味しいし、野菜もとれて嬉しい逸品。

クラフトビールと様々な料理が組み合わされるようになっているが、所謂白ホルモンと一緒に飲んだのは初めてだった。ナイスな組み合わせで、時間の制約がなければビールもホルモンもまだまだ倍以上イケる気がした。同店の食事メニューは他にも、大田区と協定を結んでいる山形県長井市の産物など、バリエーション豊かで楽しい。

年度末、一見気忙しい町・蒲田で、ゆったりとしたビアバルでの一時を過ごすことができた。ゆったりとしつつも、新しい歩みを見せている同店。未体験の方も、既に行ったことがある方も、是非今の羽田バルを訪れてみてほしい

あんまり関係ない話。

横浜ベイブルーイングさんが、横浜高島屋限定でウィスキー樽のバレルエイジド・インペリアル・スタウトを発売した。正直想定以上のどっしり感で、この種のビールとしてかなりの満足感。限定品だがまだ若干在庫がある(21/04/03夕方時点)ようなので、是非お試しを。

以上

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