我が怪物

くつづれができた
いたかった
その姿勢はこっけいだった

周りはみんな指を指して笑った
立ちどまってはいけない
でないと周りがせめてくる
足がいたくてしょうがないから
姿勢はどんどん悪くなる

やがて痛みもまひをした
私はどうして歩いているのかさえ忘れてしまった

石のつぶてが投げられた
私の体は傷だらけ
くつづれを直すひまは与えられなかった
かかとはぐちゃぐちゃ
私の姿勢はもはや人間のそれとは思えなかった

怪物が一体そこにいた

それでも私はくつを手放すことはできなかった
周りに認められたかったから
怪物になればなるほど
周りと一緒にいたかった

やがて痛みもまひをした
私はどうして歩いているのかさえ忘れてしまった
歩くために歩いていた

あの姿勢のままで

一体の怪物が

怪物の足はもうくつとくっついてしまっていた
彼の血とかさぶたとその他分泌物によって

もう彼の足とくつは一体だった
だからもうくつづれはなかった

けれどももう関係ない
道ゆく人は彼をさけてとおった
アスファルトの道路に横たわる動物の死がいのように

くつづれをいたがっている姿がこっけいなのではない
もう彼自身がそういうものだった
それに彼自身痛みを感じなかった

歩き続けたせいか町が見えた
もう周りにはだれもいなかった
みんな気持ちわるがってにげだした

彼はめざした
明るい光を
周りにみんながいた
くつづれができる前にもどれると信じて

明るく輝くその町は
みんなやさしくそうでしあわせそうだった
けれども彼は気がついた
その明るく輝く光は自分のおぞましい姿も明るくうつしだすと

たまらなくなった彼はあわてて建物のかげに身をひそめた

もうそれから彼を見たものはいない

彼の傷はなおったらしい
もう傷だらけではないようだ
姿は怪物のままだけれども

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