240609

 繁華な街の中空に人の頭くらいの真っ黒な球体が現れ、手を伸ばせば触れそうなそれが、捻じれ歪み、排水溝に流れる絵の具を溶いた水のように街が飲まれていく。
 おれはいつか滞在した異郷の山村を思い出していた。戦時下の学生のような古びた格好をした宿の娘が、おれに見せた、獣のような菩薩像

と言う夢







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