『いや、何で切るねん』と思った方、大正解。私にかけて来てて、その私が帰って来るのに何故切る。友人も思ったがその声の主はそのまま話も聞かずに切ってしまったらしい。
帰って来た私がそれを聞いたのは彼女達が帰る時で。「後でかけ直しなね」とだけ残して帰って行く彼女達を見送りながら私は、『変な人もいるもんだなぁ』と一人手を振りながら晴天の空に浮かぶ入道雲を見上げて思った。
え?何で変な人だって?
だって、そもそも私には
年上の従姉はいないのだから。
あの後で見た不在通知には非通知の連絡先からの通知が一件だけ、入っていた。
この事は友人には言っていない。
ノンフィクション
間違い電話なら教えてあげた方が良いし、こんなに不在通知が入っていたら私も怖いだろうと、私には申し訳なかったが出ることにしたらしい。
電話を取ったのは一番近くにいたA子。
「……あの、もしもし……?」
他の二人にも聞こえるようにスピーカーにセットして話始めた。
『あ、やっと出た!』聞こえてきたのは女の人の声。(大学生くらいだと思うと言ってた)「いえ、すみません、持ち主の子は今出掛けてまして、折り返すように言っておきますので、ご用件をお聞きしても……?」だいたいこんな事を言ったらしい。
電話の相手は私の従姉
『あー、そっかそっか!いーの、たいした用事じゃないからさ!』普通に明るい感じで話続けるその人は、天気の話や最近あったことなんかを数分ペラペラと喋っていたらしい。「あの、もう少しで帰って来るとおもうんですけど、このままお待ちになりますか?」『ん?あぁ、それじゃそろそろ切らないとね!』
例えば、こうしよう
もし、貴方が私を本当に好きだったとして、そしたら貴方は他の女の子に告白なんてしない。
もし、貴方がきちんとした方法で私の電話番号を知っていたとして、それなら貴方は私に怖いとおもわれなかった。
もし、貴方が自分をもっと律していられたとして、そしたら貴方はそんな奴だと周りに知られなくて済んだ。
もし、貴方がマトモな頭を持っていたとして、それなら貴方はあんな事はしない。
もし、貴方が誠実でいたとして、そしたらこんなおおごとにはならなかった。
もし、貴方が今此処にいたとして、それなら、貴方は怒鳴るでしょう。
もし、貴方が言葉を選んだとして、そしたら、貴方はきっとこう言うでしょう。
「めちゃくちゃにしやがって」
……だって、しょうがないじゃない
私がもっと強かったとしたら?ううん
仮にそうだったとして も、私は貴方を好きにはならない。
例えば、もし履歴書が要らない世界だったら?
事の発端はこんなバカな思い付きからだった。薄暗い部屋で一人、ただ無駄に大きい窓から外を眺めてぼーっとしていた私は不意にこんなことを考えた。
どうなるんだろうか…履歴書が要らないなら今までの人生も書かなくていい訳だ。自分がどこの誰で、どこの学校に通っていて、なんの資格を持っていて、何が得意だ……なんて情報は全て、自分が話そうと思わない限りは誰にも知られることはない。
親しいものか自分しか知らないのだから、個人情報は今まで以上に強固に守られる。でも、それならば、私は『私の証明』が出来ない訳で……
だってそうだろう?学歴も資格も持っていなくたっていい。言わなければ知られないのだから。そうしていけばいずれは、自分を認めてもらう要素はなくなる。
それこそ私は、これが『私の証が尽きる時』だと思うのだ。
……にしても…今日は月が綺麗だ。