ちょうどいいクロスワードはないのか
最近クロスワードが自分の中のブームだ。特に英語のもの。
自宅にはカレンダーらしいカレンダーを置いたことがなかった。スマホや腕時計で日付の確認を済ませてしまうのもそうなのだが、そもそも月めくりのやつも週めくりのやつも、日めくりのやつも、律儀に毎回めくって日付に追いつけたためしがない。ところが今年は違う。
1月の半分も終わっていないうちから言うのもなんだが、ようやく自分も毎日めくれそうなカレンダーが見つかったのだ。Wordleなどのオンラインパズルの権利を持っていることでも有名なニューヨークタイムズ社が出している、1日ごとにMini crosswordが解ける日めくりカレンダー。
最近では朝になるとその日の日付のページを切り取って持ち歩き、暇な時に解いたり日付の確認に見返したりしている。その日の日付のページを毎日持ち歩くということは、家に鎮座している方の日めくりの本体はつねに1日先の日付を指していることになるが、いいのだ、別に家でわざわざ日めくりを確認したりしないことにすれば。
で、このMini crossword、案外難易度がちょうどいい。まずクロスワード全体のサイズがだいたい5×5、大きくても7×7マス。ということは、多くて5〜7文字の単語までしか正解にならない。
“First mammal to appear in a dictionary”(一番初めに現れる哺乳類の名――ただし辞書順で)なんてヒントから、aardvark(ツチブタ)なんて逆立ちしても思いつかなくていいのだ。知らないよ、そんなアート引越センターみたいな名前の動物は。
英語ならではの、クロスワードのカギ特有の文体にもヒントがある。たとえばこんな暗黙のルール。
クロスワードのカギと答えの間には、原則として品詞(活用形)・性数が一致するという対応関係がある。たとえばさっきのヒントが “First mammals to appear in a dictionary” だったら、答えもaardvarksになるのがお約束。
カギの中で、答えを指し示す部分が名詞句・名詞節の形をしているなら答えは名詞、形容詞句・形容詞節の形なら答えも形容詞。これ、あんがい英文解釈の練習にもなる。
品詞や数がわかれば、答えそのものがわからなくても埋められるマスができたりもする。さっきみたいに複数形が答えならたぶん最後のマスはSだし、過去形やing形が答えになるなら後ろの2〜3マスは埋まったようなもの。
形容詞ということしかわからなくても、語尾が-icとか-yとか-ishとか、当たりをつけることはできる。答えがおおよそ3〜5文字の単語限定のミニクロスワードだと、この経験則の威力は特に強い。ただちょっと面食らったのは、 “Like every third number in Fibonacci sequence”みたいなやつ。フィボナッチ数列なんてマニアックなものが説明に出てきて、答えがそんな短い単語なことある??とパニック。みんなはわかるかな?(正解は4文字)
困るのは知らない名詞の単数形とか、固有名詞が答えになるとき。アメリカの地理とか州知事、アーティストの名字とかが聞かれることもある。ヒントにただ “Place” とだけ書かれていたときは面食らった。答えは3文字だったので、USAとかUAEとか、はたまたどっかの州名の略称か……と思っていたらどうにも他の答えの文字と噛み合う地名がない。辞書と格闘しながら、他のカギを全部埋めてみると、どうやらこれの答えはPUTらしいが、そんな地名……ん?
ここでようやく理解が追いついてなーんだ、と脱力。なんのことはない、カギに書いてある “Place” は冠詞が省略された名詞の単数形じゃなくって、他動詞のplace「置く」の原形だったわけ。3文字の「置くこと」を表す単語、それすなわちputである。そりゃ地名にしてはヒントが少なすぎたけども。
こういうので感覚を鍛えていると、辞書片手にだが普通のサイズのクロスワードも少しずつ勝手がきくようになっていく。とはいえ、まだ英語圏の文化とか歴史の常識が入っていなくて解ききれないことがほとんどなので、もう少し調べながら解きやすいやつがないものか。Easy crosswordsとか Crossword for English learnersとかで調べても、引っかかってくるのはパズルというより、英語教材用に作られたものばかり。端的に言うとクロスワードとしての完成度が低いのだ。スケルトンみたいにあちこち一本道を繋げたようなマス目、タテとヨコのカギがせいぜい1単語に1〜2マスずつぐらいしか交差しない構造のせいで、他のカギを解きながら別の単語を推理する面白みが半減してしまっている。
なんかその辺、ちょうどいいクロスワードはないものか。
ひとつだけ、どうしてもしばらく手を出す気になれないクロスワードの種類もある。それはcryptic crosswordというやつだ。これについては別の記事にする機会があればまた書こうと思う。