2022/8/5「数学デー」レポート in N・S高御茶ノ水キャンパス【1/n】
数学デーの歴史は思ったより長い。2017年に始まって以来、かれこれ5年半の期間を数えるなか、ほぼ定期的に開催され続けている(らしい)。しかも週1とか2で。
めちゃくちゃ長いわけではないが、オンラインのゆるいつながりを生かしつつリアル開催もされているネット始発系イベントの中では珍しく「濃い」続き方をしている類のイベントだと思う。インターネットのノリ、なんだかんだ流行り廃り激しいし。
そんな偉そうなことを書いているこの私、こばると(@428sk1_guardian)の数学デー参加歴もそこそこ長い。めちゃくちゃ古参なわけでもないが、思えば高校2年生のときからなんとなく(それこそ部室のごとく)通い詰めていたのが、今では高校を卒業して2年目。早いものである。あれ、ということは何年経ったんだ。いち、に、さん、し。いや、さん?? もう「たくさん」ってことでいいですか。
まあいいや、とにかく数学デーの歴史のだいたい半分はわたしとともにあったことになる。らしい。そんな大層なことしてないけど。
いや、そうは言ってもいろいろ滅茶苦茶なことしたな。受験も近い時期になんか唐突に「この世界とは違う数字を使って十進法が発達した異世界での計算法」とか考え出して発表してたし。
しかもそれがあれよあれよとウケて広まった結果、KADOKAWAの本に寄稿させてもらったりもしたし。参加者の中でもそこそこぶっ飛んでる、のかも。
とはいえ、他の常連さんたちもかなりその場のノリでぶっ飛んだ数学ネタを思いつくので困る。ホワイトボードと備品の本、ボードゲームぐらいしか小道具のない空間で次々に繰り広げられる、数学とも数学でないともつかないなにか。美大じゃなくて理科大を卒業した世界線のラーメンズみたいななにかが日々行われている、そんな空間が数学デーだ。
だって最初期にわたしが行った数学デーで、会場に入ってすぐ巻き込まれたのがあれだもん。「素因数分解ビンゴ」。
こわかった。いや、すぐルール理解して馴染めちゃったんだけど、それも含めて。これが大人数で滞りなくプレイできちゃう空間、ヤバいと思う。
かと思えば、ずーっと数学関係ない、カードがめくれたら「しんぶんし」って叫ぶだけのゲームで遊んでるときもあったし。
普段の会場を飛び出して、横浜までわざわざ出向いたと思ったら一晩中、「かけうどん」に「かけうどん」をかけたら「かけうどんかけうどん」なのか「かけうどんかけかけうどん」なのか、なんて話をしてたこともあった。
まあこんな過去の思い出話はほどほどにして、現在数学デーは(ほぼ)毎週水曜日にDiscord上でオンライン開催、同じく金曜日にはN・S高御茶ノ水キャンパスという素敵な会場を借りてリアル開催しています。楽しいからぜひ来てね。
で、今回はそんな素敵な会場で開催されているリアル数学デーに先日(2022/8/5)ひさびさに参加してきたのでレポ。やっと本題に入ります。
いつもの部屋に入ると移動式のホワイトボードがいっせいに並べられていて、なんかいっぱい数学っぽい問題が書かれていました。お、今日は珍しく(?)正統派の数学っぽいことする数学デーだ。
問題は全部で3問あって、メインの問題1問とそのヒントになっているサブ問題が2問ある。問1は簡単な問題で、先に来ていた人たちですでに解決したらしいので、残るは問2と問3。メインになっているのは問2の問題だけど、どっちから先に解いてもいいとのこと。なるほど。
まずは問2を見てみる。
はあ。これは石取りゲーム、ニムってやつだな。石の山から一定の規則で石を減らしていって、最後の1個を取ったプレイヤーが勝つ、ってルールのゲームは数学パズルの問題によく出てくる。
で、今回は2種類の石の山があって、どちらか一方の山から好きなだけ減らすか、両方の山から同じ数だけ減らすかの操作を交互に繰り返す。それで、石がどんどん減っていって、最終的に自分の番で減らせる石がなくなったプレイヤーの負け。
このとき、後手必勝とわかる局面はどんな局面か?という問題。なるほど、問題の意味はわかったぞ。というところで、次にヒントになる問3の問題を見てみる。
??????
オーケー。状況を整理してみよう。
ある2つの正の数がある。具体的な値はまだわからない。次に、この数について別々に次の2つのことがわかっているとする。
1つめ。
実は2つの数はどちらも無理数で、しかも両方の逆数(かけると1になる数)をとって足し合わせると、その答えは1になる。
2つめ。
一方の数を1倍、2倍、3倍…として、小数点以下を切り捨てた数をつぎつぎに並べていく。そうすると、無限に長い、ずっと増えていく数の列ができあがる。
もう一方の数にも同じように、元の数を1倍、2倍、3倍…として、小数点以下を切り捨てた数を並べて、無限に長い数の列をつくる。
そうしてできた、無限に長い2つの数の列を見ていくと、実はこの中には、「1」「2」「3」…と全ての正の整数が、必ず1回ずつ登場することになる(たとえば、「1、3、5、7、9、…」と「2、4、6、8、10、…」みたいに)。
さて、ここで種明かし。実は、1つめの情報と2つめの情報は、まったく同じことを言っていたのだ。つまり、1つめの情報が正しいとわかっていれば、2つめが正しいことは調べなくてもわかるし、2つめの情報が正しいとわかれば、1つめも絶対に正しいことがいえる。
では、それはなぜか説明してください、というのがこの問題。
で、しかもこの問題は、あの石取りゲームの必勝法のヒントになっている、というのである。石取りゲームの石の数は整数、かたやこの問題に出てくるのは2つの無理数、という全く別の問題に見えるというのに、である。いったいどういうことだろう。
とりあえず何もかもさっぱりだけど、まずはこの問3から考え始めてみることにした。