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20220215 そのどちらにもなれなかった人


 何日か前の夢の中で、右の耳の縁をほんの少し掻いたら、綺麗なカーブを描いた耳の骨が出てきた。うっすらと赤みを帯びて、ほんのりとあたたかい骨は、私の耳から出てきたものだろうけれど、痛みもないし血も出ていなかった。曲がった背骨のようで、そこから肋骨のようなものが何本もついている。とても精巧で、美しかった。

 夜中に何度も金縛りに遭う。その度に過去のことをいろいろと思い出して、それはつまり死が絡みつくということだ。いとも簡単に死ぬことを考える。それはいつもつきまとっている。私だけじゃない、本当は誰だって今日死んでも明日死んでもおかしくないのに、なぜかみんな忘れている。私はきちんと毎日死を近く感じている。何も間違っていないのに。

 林真理子『本を読む女』を読む。朝ドラのような話、だけど朝ドラならここでこっちを選ぶんだろうな、とか、ここでこうなるんだろうな、ということが叶わない。サクセスストーリーにならないところに真実を感じるし、息苦しい気持ちを感じる。才能のある人や真面目な人が、みんな成功したり報われるわけではないんだよな。それは本人の性格などのこともあるし、周りの環境、とりまく人間にもよるし、運もある。物語は、その中でも一握りの成功者を描きがちだけどこれはそうではない。だからといってその他大勢でもない。そのどちらにもなれなかった人の話なのかなあ、と思った。

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