20201121
江國香織『とるにたらないものもの』を読む。とるにたらないものものが、江國さんの目を通し脳を通し言葉になると、どうしてこんなにうっとりしてしまうのだろう。輪ゴムをこんなに魅力的に描く人が他にいるだろうか?我が家は輪ゴムを買うことはなく、たとえばスーパーで惣菜を買った時にプラスチックのケースを留めたものとかを取っておく。それだけで事足りる。だけどこれを読むと、輪ゴムが恋しくなる。箱に手を入れてひんやりしたそれに触りたくなるし、便利なものが潤沢にある、という贅沢を感じたくなる。
何が好きですか、と訊かれて、まよわず、ケーキ、とこたえるような単純さで、私は生きたい。
これは昔読んだ時も気に入った一文だ。なんて軽やかなんだろう。晴れ晴れする。この本は明るい。でも油断しているといきなり、江國さんののどかで鋭い言葉に刺されてしまう。危険な本だ。
インターネットとか、SNSにまったく向いていない人間だなと思う。本当は森の奥深くで手紙を書いて生きていたいけれど、生き抜く力もなさすぎるので、結局普通の地でヒイヒイ言いながら生きるしかないし、インターネットもSNSも使ってしまう。