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Autisticにとっての、納得と変化の可能性について(R51119, HOTASさんとのスペースより)

11月19日に、HOTASさん@HOTAS10001 とスペース開催しました。その際に気づいたことなど、備忘録的に。

前半は、ニューロダイバーシティが日本において微妙に根付かない/違和感を感じさせるものであり続けるのは、現在の日本社会がそこまで追いついていないからではないか、という話で、HOTASさんの考察のほうがずっと進んでいたので、わたしが教えてもらう形でした。このへんの、HOTASさんの記事をご参照いただければと思います。

Autistic は考えを変えられるのか、というのが後半のテーマでした。まず、拡張はそんなに難しくなさそうです。それまでの「自分的世界」に矛盾しないものであれば、新しい知識を接続したりそれによって世界を拡張したりすることは容易です。これはたぶん、Autistic であろうとなかろうとそうですよね。問題は、いまの自分の世界と多少なりとも齟齬があるもの、でしょう。まあいいか、とぼんやり接続することができないもの。

一つヒントになったのは、HOTASさんの、「赤い車をかれこれ30年乗り続けている」でした。こだわりという単語をあてることもできるでしょう。でもこれ、こだわりというより、見通しとか安心感とかも関わっていると思うのです。たとえば青い車にしたとして、たぶん、どっかでなじんで、違和感がなくなって、これこそ自分の車、と思えるようになるはずのところ、いつそうなるのかが皆目予想できない。それって、見通しの持てなさともいえないでしょうか。

車だけでなく、新しい考え方なども、そこに置いておくことができればおそらく、どっかの時点で、自分になじんでくることもあるかもしれない、折り合いをつけることができるかもしれないのだけれど、いつどうやって折り合いがつくのか、想像がつかない。わたし自身を含め、Autisticな人たちは、「まあ、いずれなじむでしょう」という見通しが保てず、それゆえに新しい考え方に対して、早急にある程度の応急処置を行い、暫定的な結論を出さざるを得なくなるように思います。

そしてこの、暫定的な結論を出さざるを得ないことが、たとえばHOTASさんのいう「浅い理解」(わたしからみると浅くは見えないですけれど、このへんは自己評価、自分の能力に対して相対的にどうか、というところが関わってくると思います)につながったりすることもあるのでしょう。暫定的な結論すらなかなか到達できずに、なんとか納得できるところまで(それがひとりよがりであっても)突き詰めるやり方もあるように思います。情報収集の手を広げる方法もあるでしょうし、手を広げずに話を深めていく方法もあるでしょうね。

たぶんそれらは、「間違っているかもしれないけど当座の納得を得た」という意味では、わたしとHOTASさんで共通するにしても、外から見たとき、あるいは、自己評価としてのコメントは、すこし違ってくるように思うのです。

さらにいうと、「納得」「腹落ち」の必要性、重要性も確認できたように思います。誰が言っているのかを問題とし、責任者あるいは自分に命令する立場の人がが言っているならよしとする、というのも、筋の通ったルールです。一つの組織の中では、命令が互いに食い違うことは、基本的には少ないと考えられます。命令は命令で、組織のルールとともに、ひとつの世界を形成するのでしょう。別の命令、別のルールは、命令でありルールであると認識されさえすれば、納得できるでしょうし、その世界に組み込むことは容易であろうと考えられます。もちろん、わたしのように、「筋道として自分が納得できればよしとする」というルールを掲げるのもアリで、これは自然科学などと相性がよいですね。人間相手だとしばしば破綻しますけれど。

ルールや命令に沿っていれば納得することが、よしとされる社会もあります。納得するまで缶が続けることが、評価される社会もあります。このへんは適材適所でしょうし、Autisticな人々がその能力を発揮して生活する上で、大事なポイントなのかもしれません。とはいえ、これが「Autisticとは」にかかわるとして、教科書には書きづらい感じです。チェックリストにもできませんしね。話を聴いて、個別ケースについて分析していくしかない。

こういう、当事者の語りを重視して、語りをそのまま受け取るというよりは、複数の語りを集めて分析していくことが、「Autisticとは結局なんなのか」をクリアにしていく上で、おそらく有用なのだろうという、これは精神科医としての直感もあります。

HOTASさんとの対談はいつもいろいろインスピレーションを与えてくれるので、また、1年とかあかないうちに、数ヶ月くらいのペースで開催できたらと思います。末筆になりますが、HOTASさん、今回もありがとうございました! またよろしくお願いします。

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