金曜日の夜、上司が「この週末も家族サービスだよ」などと誰かに言いながら帰っていったのを横目に見てから、俺もパソコンを閉じる。 家族サービスなんて、独り身の俺には関係のない話だ。 寂しくはない。一人は気楽だ。そもそも、離れて住む両親以外に親戚もいない俺は、週末どうこうだけじゃなく、正月や盆に親戚で集まる習慣もない。なんというか生粋の一人っ子だ。 今日も一応習慣で ただいまとは言うが 返事のかえってこないワンルームに帰宅する。 面倒くさがって数日見てなかったマンション一階のポ
見栄と美と犠牲の話 多くの犠牲の元に成り立つ 見栄や美貌 それをみていつも思い出すのは いつかのお話で読んだ 美しい女性をさらってはその生き血を飲み 美貌を保つ妖怪 まぁ大抵のお話通り 彼女の理論は一蹴され主人公とかに討伐されるんですけどね。 でも、それがまかりとおってるのが 現代だなって思ってます。 私が見て思うのは、動物実験する会社の化粧品とか、リアルファー製品とかです。 動物にも命や痛みがあるって知ってるはずなのに 一緒に過ごした人なら家族って思ったり、感情を
壁から女性が出てきた-- そう思った。道を歩いていたら少し先の壁から、にゅっと女性がこちらの道へ出てきたのだ。 薄茶色のコートを着たその女性を見て、僕は普段の引っ込み思案な性格を忘れて思わず駆けだし、話しかけようとしてしまった。 彼女は綺麗な肩までの黒髪を揺らし、驚いた表情でこちらを見る。 目があった時、しまった。とかなり後悔した。 ここにきて気付いたのだが、壁から出てきたように見えたのは細い路地から彼女が出てきたからに過ぎなかったのだ。 だが、駆け足でやってきて目もあ