一家団欒、囲むフェジョアーダ
2023年4月3日、第18回高校生RAP選手権、通称「高ラ」が行われた。高校生によるMCバトルの大会である。第17回に引き続き、私は現地で観戦することができた。決勝は、$amis vs STACK THE PINK、無名 vs 優勝候補という戦いとなった。$amis(シャミス)はブラジルにルーツを持つラッパーである。高ラによるインタビュー映像では、$amisは自身がミックスであることを理由に、学校の友達から「雑種」や「外来種」と言われたことを語っていた。しかし、ヒップホップにおいてはいかなるルーツも揶揄されることはない。むしろ自らのバックボーンを語ることは、リリックになりストーリーになり、その人の武器になったりする。当日それまでのバトルでも、$amisは自身のルーツを受けいれ「B-boyのB、今日からブラジリアン」などのパンチラインを残していた。そして、STACK THE PINKとの決勝戦ラストバース、$amisは「俺に負けちゃえばお前は中の下のラッパー。一家団欒、囲むフェジョアーダ」と締め、優勝を飾った。
全くもって前置きが長くなってしまったが、思えば、この$amisの「一家団欒、囲むフェジョアーダ」というラインを聞いてからずっとフェジョアーダを再びたべたいと感じていたのだと思う。鶴見に来たのもこのフェジョアーダを食べようと思ったからだ。「フェジョアーダ」とは、「一家団欒」という枕言葉からもわかるように、ブラジルの国民食であり、代表的な料理の1つである。私は前に訪れたブラジルレストランである「Yuri Shop」へと向かった。
お店に着くと外装も内装も以前と何も変わっていないように思えた。懐かしい。お店の入り口側半分は小さいスーパーのようになっていて、残り半分がレストランスペースとなっている。席に座りメニューを開くとフェジョアーダを見つけた。1800円。高い!(泣) 日々の生活でいろんな悲しい我慢をしている私にとっては、やっぱり高い。でも、ここまで来たのだ。そんなのプライスレスとしよう。
写真を撮り慣れてなさ過ぎて、スプーンとフォークとナイフがぐちゃぐちゃになってしまっている。↑これがフェジョアーダという料理だ。Yuri shopのメニューに書いてあるところによると、フェジョアーダ(Feijoada)とは、「黒豆、豚肉、牛肉、スモークソーセージの煮込み」のことだそうだ。そして付け合わせとして、「ライス、コウビ、ファロファ、ヴィナグレッチ、サラダ」がついてくる。なんのことだか全くわからない。軽く調べたところによると「コウビ」はケールの1種、「ファロファ」はキャッサバの粉、「ヴィナグレッチ」は野菜を使ったヴィネガーソースのことらしい。
食べ方も正直に言えば自信がない。5,6年前に食べたときにフェジョアーダとライス、付け合わせを混ぜて食べると教わったような気がしたので、それにならった。もしかしたら、私の記憶が改ざんされているだけで、私のぐちゃぐちゃに混ぜる症が発症しているだけかもしれない。
味は、フェジョアーダに関して言えば人を選ぶかもしれない。というのも、たまたまかもしれないが、めちゃくちゃ獣くさい。そして、目で見ても口に入れても何の肉の何の部位を食べているかわからないことがある。フェジョアーダの、出自は主人の食べない肉の部分を集めて豆と煮た奴隷の食べ物だと大泉町に行ったときにきいた(気がする)。何が入っているかわからないのは出自的には何もおかしいことではない。
個人的にいえば、ライスと付け合わせと一緒に食べるとフェジョアーダは不思議と本当においしい。いろんな味がして楽しくておいしい。私のごはんボキャブラリーではなんとも表現できない。でも、すごくおいしい。
お腹がふくれて気持ちが落ち着いた私は、お会計をすませ、家に帰ることを決めた。関東地方は雨も上がり傘の必要は無かった。
私は能登にどうやっていくか、またゆっくりと考え始めた。
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