家賃5,000円の古家で「汲み取り式トイレ」を「水洗トイレ」に変えてみた。移住リフォーム【前編】
前回は移住してみて目からウロコだったことを2回に分けて書いた。興味がある方は軽くさらってほしい。
移住が決まったものの、肝心の家が決まらない。
「とりあえずどこかに住んで、そこから満足のいく家探しを」と乗せられ、家賃5,000円の家に移住した。
これが私のリフォーム人生が始まるきっかけになろうとは。。
そこで今回は、私の移住生活における貴重なリフォーム体験の一端にスポットを当ててみた。
その中でも今後2度とできないと思うほど大変だったリフォームは次の2つだ。
1. 汲み取り式トイレから水洗式トイレへのリフォーム
2. 腐った床の全面張り替え(根太と大引きの交換も含む)
この記事では【前編】として1について記していく。
2については【後編】として次回に譲りたい。
注意:古いトイレの画像を含んでいます。お食事中の方や、気分が良くない方は、ぜひ元気で暇な時にお読みください。
業者から高額な見積書が
地域のトイレ事情を地元の人に聞いてみると、10年ほど前に行政の補助で一斉に汲み取り式から水洗式に変えたとのこと。しかし、補助は浄化槽部分の工事と設置費用のみで、トイレ側のリフォームは住人の負担となったため、浄化槽化に踏み切れない人も一定数いたという。私の見たところ浄化槽の設置率は70%ほどだ。
そこで浄化槽の設置とトイレのリフォームの見積もりを業者に頼んでみた。見積書を見て目をむいた。工事一式で何と180万円もかかるという。私たちは田舎に一生住む覚悟で移住したものの、この家に長く住むかは別問題だった。
水洗式トイレをDIYで⁉︎
そこで気を取り直してあれこれ調べているうちに、浄化槽の工事はせず、トイレ部分のみを水洗式に変える方法があることがわかった。
「なんちゃって水洗式トイレ」だ。見た目は水洗式と何ら変わらない。デメリットは毎回水を流すと汲み取り業者を呼ぶ回数が増えて毎月の生活費がかさむというもの。
しかし背に腹は変えられない。
「よし、これをDIYでやろう!」
一旦決めると行動が早い私は、早速必要な資材一式を調達し、電動工具関係は引退した大工さんや電気屋さんなどに借りて回った。みんな快く貸してくれた上に、私の無謀な作業を見にきては、「黙って見てられん」とばかりにアドバイスをくれた。
こういうところが田舎のいいところなのである。
素人の慣れないリフォーム体験
ここからは実際のリフォームの過程を順を追って見ていきたい。
これがもともとの汲み取り式トイレの状態
20年近く掃除されていないのかはわからないが、とにかくできる限りきれいにする。
かなりの時間をかけてようやくそれなりになってきた。
でもどこか悲しげ。
床に段差があるのは、手前の低い方に男性用の小便器があったのを取り外したとのこと。上段の便器はもともと和式だったものを取り外し、簡易な洋式の便器を上に置いただけの状態になっていた。
1. 便槽への排水口を作る
ここからリフォーム開始。
洋式の便器を取り外す。上に乗せているだけなので簡単に外せた。
するともともとの和式便器の形状をした大きな穴が現れた。この穴をコンクリートで塞いで、そのセンターに水洗が流れるための排水パイプを設置する。
コンクリートが下に落ちないようにネットを設置する。
・太い鉄の格子に2本の鉄パイプを針金で結びつけ、小判状の穴に橋を渡すように固定。
・鉄の格子の上に鉄製のネットを敷き詰める。
・格子の中央部分に落下防止のための木枠を取り付けた排水パイプを通す。
さらに網目が細かいネットを敷き詰める。この上にコンクリートを流し込むことで小判型の穴を完全に埋めることができる。
完全に固まり切るまで丸1日以上待つ。
その間に次の作業に取りかかる。
2. 床の高さをそろえる
以前に小便器が設置されていた床を底上げする。
角材を木枠状に組み、木工用ボンドとコンクリートで固定する。
床板を載せるための角材を井桁状に渡す。
この時、きっちりと平行が取れていないと床板が真っ直ぐに乗らないので注意が必要だ。
この単純な作業に結構な時間を取られてしまった。
しかしお陰で穴を埋めたコンクリが完全に乾燥したようだ。
3. 床板を敷き、便器設置用の器具を取り付ける
床板を敷いていく。
足で踏むとカタカタと鳴る部分はあったが、素人ゆえの許容範囲と黙殺。
床板の上にホームセンターで購入した洋式便器の説明書に従って固定器具を取り付ける。
どうだろう、なかなかではないか。
ちなみに、床板を最後まで張っていないのは、何か起こったら引き返せるよう用心のためである(初めての試みに弱気になったか?)。
4. 便器を設置
そしていよいよ便器の設置だ。
1枚目の写真と見比べると見違えったように思う。。。思いたい。
上からパシャリ!
心なしか便器が笑っているように見えるのは私だけだろうか?
5. タンクとウォシュレットの取り付け
ここまでくればあとは楽勝(と、この時は思っていた)。
どこから見ても立派な水洗式トイレではないか!
6. 上水道の分岐
ここでつまずくことになろうとは。
当たり前のことだが、水洗なので水が必要だ。
そのために水道が必要なことももちろんわかっていた。
しかしここで予想していなかった2つの壁にぶち当たった。
1つは水道管の分岐、もう1つは壁に水道管を通す穴をあけること。
いやはや、水道管がどこに埋まっているのか全くわからない。
何度も失敗しながらようやく掘り当てた時にはもう日が傾いていた。
しかしここで疑問が。
「水道管って勝手に触っていいものかしら?」
元大工さんに聞いてみると、ちょっと間があってから「かまわん!」と。
何か怪しかったがむりやり納得した。
トイレにいちばん近い場所で水道管をカットして、T字のパイプを差し込み分岐させる。という予定だったが、水道管があまりに古かったため、掘り起こした部分を全て新しいパイプに交換した。余計なことをしたおかげでさらに時間を食ってしまった(勝手に交換していいのかな?)。
7. 水道管を壁に通す
この作業が最も大変だった。
コンクリの壁は厚み10cm。
この壁に直径3cmほどの穴を開けるのだが、どうすればいいのか全くわからない。あの手この手を試したが埒があかない。
気力も限界に近づき呆然としているところへ「もうへばったか?」と地域の人がやって来た。事情を話すと、何も言わずに立ち去ってしまった。
「ん? やっぱり水道管は触るべきじゃなかった?」と急に怖くなって色々と考えを巡らしていると、しばらくしてその人が手に馴染みのない電動工具を持って戻って来た。
何でもクーラーを取り付ける時に壁に穴を開ける工具だという。
電気屋さんに事情を話して借りてきてくれたと聞いた時には涙が出るほどありがたかった。
それでもコンクリートの壁は硬く、かなりの時間がかかってしまったが、何とか壁を貫通することができた。
こうして水洗式トイレに待ちに待った水が満たされた。
どうだ「これぞ水洗式トイレ」という表情ではないか。
8. 汲み取り口の補修
これで終わりではない。
便槽の汲み取り口が大変なことになっている。
これだ。
ふた?
一見何だかわからない。
間に合わせもいいところだ。
取ってみると、
鉄製の蓋はすでになくなっており、蓋の枠は錆びてボロボロの状態。
錆びた部分をていねいにこそげ取り、樹脂製の蓋枠をコンクリートで固定する。
左官は初めてだったが、冷やかしに来た左官屋さんに褒められ、少し元気が戻った。
蓋を閉じ、十分に乾燥させる。
きれいに仕上がった。
9. トレペとカーテンでフィニッシュ
全工程を無事に終えられたので、開けていた床板を仕上げて終了。
トイレットペーパーを取り付け、カーテンでデコレートして完成!
念願の水洗式トイレが実現できた。
この場を借りて、
協力してくださった地域の方々、本当にありがとうございました。
都会では当たり前のことが、地方では当たり前ではなくなる。
これはトイレに限った問題ではない。
ウェルビーイングな生活の基準を考える上でとても貴重な体験となった。
By コハク
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