詩「前夜」

いつもの4人
見慣れた顔立ち
見慣れぬ建物で
最後の一夜を

一生続くと思っていた
私が先だと思ってた
彼は何を思ったのか
もやがかかり思い出せない

ひんやり冷たい石造り
生ぬるい8月の夜
聞き飽きた母の声は
からからにかわいていた

汚い顔も
明日には灰になる
歳頃の話し声も潰れてる

あどけない思考
裁きは容赦なく
慈悲の心すらも砕かれた

全部嘘、走り逃げてく
あの頃に戻りたいだけ
明かりの中で迎えた人
ちっとも私に似てないの

雑音を向けてた人
私に毒を吐いてたね
条件付き期限は無し
いつでもあたしは4番手

「消えたいよ」そればっかり
「辛いんだ」また泣いてる
「話聞いて」言えずにいたの
すり減る胸のハート型

騒がしい部屋
一人倒れこむ
何を言われようと届かない

「どうしたらいい」
「どうすればいいの」
涙もない虚ろな目

明日は執行日
彼は火の中

取り乱すのは私だけ
ただただ終わりを待っている

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