上京物語ですの〜瀧本編〜。

わたしの家族は超複雑であって、よってアダルトチルドレンであり、診断名で言えば複雑性PTSDである。

精神病、
自殺未遂、
子供が産めない体、
養子、
その他もろもろ。

泣いて腹がふくれるか、わたしよりツライ思いをしてる人はもっともっと、数え切れないほどたくさんいる。

だから笑っていなくてはいけないと思いつつ、やっぱり自分が可愛く絶望的な気持ちになる時もある。

そんな自分を変えたくて、現金5万円だけを握りしめてやって来た大都会東京。

初めて上京した日はとても寒い日だった。
ベットやその他必要な家財道具は通販で頼んでいたけど、時は引っ越し繁盛期にブチあたって、予定日に頼んでいた全ての荷物が届かなかった。届いていたのは唯一実家から宅急便で送った、洋服とCDラジカセと書籍だけ。

身よりも何もない東京で一人きり。照明さえない真っ暗な部屋のフローリングで、ガタガタと染みる寒さに震えながら、ありったけの洋服にくるまって床に転がった。たまたまかけていたCDラジカセから、フィッシュマンズが流れてくる。


孤独、迷い、不安、淋しさ。

せき止めていたダムが流れ出したように、声も押し殺さず大声を上げて泣いた。しゃくり上げて思いのまま泣いた。そんな泣き方をしたのは、後にも先にもこの時のことだけだった。


26歳だった頃の無謀な上京。それでも今はなんとか自分の足で生きていってる。けれど初めて上京してきた日の、あの時の気持ちだけは忘れられない。

人生は何度でもやり直し可能だ。だけどあの日の涙とあの日の気持ちを、一生忘れてはいけないような気がする。

生きていくのはツライことのほうが多い。身よりもない1人きりの東京ならなおさら。だけど生きていればどんなちっぽけなことでも、幸せだと思える瞬間がある。

ツライことにブチ当たるとあの時を思い出す。
そして大丈夫大丈夫、呪文のように自分を勇気づける。


上京物語。
私はあの日のあの時を一生忘れない。そしてフィッシュマンズを聴くたびに思いだす。自分の力で強く生きていく。何があってもきっと大丈夫。人生で流すうちの半分以上の涙は、あの日のあの時に流してしまった。

幸せの敷居を低くすれば、楽しいことはきっとたくさん見つかる。だから笑って生きていかなければ。毎日笑っていたいと思う。

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