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勝ちました。自分に。
10月に山口県で開催された全日本マスターズが110mハードル。
初めてのマスターズでのハードル挑戦。2位。僕は負けました。
人にも自分にも。
負けた悔しさと、自分が思っている以上に走れなかったという現実に、これから迎える本番で勝てるイメージがなくなりました。
“今年11月にフィリピン・ニュークラークシティで開催されるアジアマスターズ陸上に出場します。”
自分で決めたこと。自分で宣言したこと。あまりに無謀だった。そう思いたくなくても思ってしまうような内容でした。明らかな準備不足。全日本マスターズから1ヶ月。限られた時間で何をすべきか。
これまでハードルというものを何台跳んできたか分かりません。
今回出場するマスターズのハードルの高さは僕が跳んできたハードルの高さよりも7cmほど高くなります。たった7cm。それだけなのに、感覚がズレ、認めなくない恐怖感まで出てきているのが分かりました。
僕がスプリントコーチとして選手に選手自身の走っている姿を映像に撮っては見せ、自分の動きを自分の目で見て理解させることを大切にしています。
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僕も自分自身にコーチングするために、今の無様なハードルを撮影し自分の目で見ることから始めてみました。
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自分の目で理解して修正。この作業を繰り返します。
「できない」ことが「できる」ようになるから「楽しい」
自分自身が初めて何かを始めた時と同じ感覚を思い出しました。
アジアマスターズまで2週間。
佐賀で行われたストリート陸上に出演させていただきました。
そこでの子供達との競争。ハードル着地した瞬間、内転筋が一気に固まる感じがありました。途中でやめるわけには行かず走り切りました。
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痛みは次第に強まり、帰りの飛行機に乗る頃には歩くだけでも激痛。まあでも肉離れした感じでもないし大丈夫だろうと思っていましたが
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これがなかなかの重症で。歩くだけでも厳しい状況が続きました。毎日のようにお世話になっている治療院に通い治療をしていただきました。あれもこれもやりたいことができない。だったらできることやるしかない。気持ちの切り替えは比較的早かったです。
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無心で自転車を漕ぐ。今日は歩けた。でもジョギングは無理。今日はジョギングができた。でも走れない。今日は走れた。でもダッシュはできない。
そんな毎日でした。
でも、絶対に間に合う。絶対に諦めない。
なんの根拠もないんですが、自分を信じる感情だけは高まり続けていました。
試合から3日前。フィリピンへの出発前日。
スパイクを履いて走ることができました。ダッシュはできない、でもスパイクは履けた。ものすごく嬉しくホッとしました。
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試合から2日前。フィリピンに到着。
競技場に行く予定が、バスが定刻通り出発しない。
1時間の予定が2時間以上かかる。結局ホテルに着いたのは夜遅く。
結局ホテルの前を軽くジョギングして終わり。この日も着地ごとに内転筋が痛み、感覚としてはうーんという感じでした。
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試合前日。競技場へ。
ここでも問題が。競技場行きのバスが時刻通りに来ない。
結局40分遅れで到着。当初の予定では30分ほどで到着と聞いていましたが、かかった時間は1時間以上。こういう細かなイライラをどうスルーしていくかが大切です。
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テーピングの位置も微妙に変えながら確認していきました。
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試合前日。
この日はハードルを跳びたかったのですが、ハードルがなく諦めました。スパイクを履いて7割ほどでスピードを出して走れました。それ以上はまだ怖くここでupを終えました。
試合当日。
バスの遅れを計算をして行動。
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バスの中ではひたすらいわきFCのYouTubeを見て気持ちを作ってきました。
無事競技場に到着したものの、なんと競技が1時間30分遅れているとのこと。前回のマレーシアでの大会でも同じようなことはありましたが、1時間30分の遅れは初めてでした。
時間を計算しながらそろそろupを始めるかと心と身体を準備していくと、いきなり名前を呼ばれ始めました。
え?なんで?
するとハードルが競技場に並べ始め、定刻通りにスタートするとのこと。どういうこと…?何度も審判に確認するとオンタイムとのこと。
ストレッチぐらいしてかやっていなかったので、慌ててスパイクを履いて走りました。ただ、明らかにオンタイムでスタートする気配はなし。結局、これは1時間30分遅れるなと読み、もう一度upを焦らずやることにしました。日本の大会はいかに正確に試合が進行していくか。こういう大会に出るたびに感心します。
試合直前は流石に1回はハードルを跳ぶ。そう思っていました。
怪我の影響もあり、久々に自分が跳ぶハードルを見ました。
僕がその瞬間に思ったことは
「高い」
でした。
あれこんなに高かったけ。
また着地の時に怪我をするかも。急に不安になります。
跳びたいけど、跳べない。そんな気持ちになってしまいました。
一度upを中断して仰向けになりました。
失敗するかも、怪我するかも、勝てないかも、途中で止まるかも。
どんどんネガティブな気持ちになっていく自分がいました。
ただ、よくよく考えてみると、これって全て「結果」です。
「行動」をした先の「結果」なんです。
では、ここでの「行動」とは何か?
それは僕が試合で走ることです。
その試合で僕がすべきことは?
ハードルをどんな風に跳ぶか、腕の使い方、足の使い方、ハードル間をどういう風に走るか、無心の中でも細かな技術的なことを確実に実行する必要があります。
ここで思ったことは、なぜ「行動」があっての「結果」なのに、「行動」する前の「結果」を気にしているのだろうと思いました。
しかも極めてネガティブな結果をです。
サッカーでシュートを打つ前に外すかもしれないと考える。
野球でバットを振る前に三振するかもと考える。
全て「行動」の前の「結果」です。
そんなことでここまで準備してきたこと、自分のチャレンジに負けることなんてあり得ないと最後は吹っ切れました。
あとはひたすらに目を閉じて、とにかくいいイメージだけを想像していました。結局僕がスタートラインに立った時間は予定よりも2時間競技開始時刻から遅れていました。ただ、もはやそんなことなどどうでもいいくらい集中していたと思います。
スタートの直前、肉離れ以降初めてハードルを跳びました。大きくバランスを崩しました。ただこの時、いけると思いました。なぜバランスを崩したかが分かりました。ここを修正すればいけると。そして何より、足の痛みを感じませんでした。
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僕は勝ちました。自分に。その結果、金メダルを獲れました。
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僕の足は持ってくれました。最後まで。
仕事から帰る。家族は寝ている。そこからトレーニング。
朝は4時起きで仕事に出かける。娘に会えない。今日自分のトレーニングをしなければ、夜娘に会える。でも、この大会で勝つためにトレーニングをしなければいけない。多くの時間を犠牲にしてきました。なぜここまでしてやるんだろう?1人の時間で何度も思う時がありました。でも、自分で決めたことです。スプリントコーチとして成長するために、こういった経験の1つ1つを選手に、子供達に、伝えるために。そして、そのチャレンジを家族は応援してくれました。
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このメダルを首からかけた時、全てが報われたと思いました。
昨年、マスターズ引退をかけて臨んだ世界マスターズ。僕は準決勝で肉離れをして終わりました。でも、そこで感じた悔しいという気持ち。僕は30歳で現役を引退したはずなのに、引退なんてしていない。僕は現役のアスリートのままなんだということが分かったことが大きな大きな収穫でした。そして、今回のアジアマスターズ。大きな試練を僕は乗り越えました。
メンタルが強いとか弱いとかそんなことじゃない。
結果を気にするな。行動を気にしろ。
僕がこの2週間で学んだことです。
レースが終わり、次の目標を決めました。
もっともっと走りを知りたい。走りを理解したい。
そのためにも僕自身が走り続ける必要があります。
このチャレンジを表明する前に僕はこんなnoteを書いていました。
11月どんな景色を僕はフィリピンで見ているのでしょうか。
どんな景色であったとしても走ることが好きな気持ちは絶対に変わらない自信があります。
そして、自分で決めたこのチャレンジに
必ず勝ちます。
僕の予想は当たりました。
僕は走ることが大好きです。
最後にレース後にたくさんの方々から感動する言葉をいただきました。自分のためにやっているのに、自分のために走っているのに、誰かの力になれている。その事実に心から感謝の想いです。本当にありがとうございました。これからもスプリントコーチとして走り続けます。